田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北海道低山紀行 62 稀府岳(702.1m)

2016-07-03 22:04:40 | 北海道低山紀行 & Other
 辛い思いだけが残る登山となってしまった…。何度も何度も途中から引き返そうと思った。意地だけで登った稀府岳(まれっぷだけ)だった。稀府岳は私の登山観を根底から覆す山として記憶に残ることになるかもしれない。 

 伊達紋別岳を登り終えた私は汗をたっぷり吸った下着と登山用のシャツを着替えて、直ぐに稀府岳の登山口に向かった。
 稀府岳の登山口は、整備された登山口とは言い難く、ちょっと侘しい感じさえした。登山ポストの記録を見ると、この日は誰も登山をしている人はいないようだった。

          
          ※ 登山口にあった登山ポストです。後ろにあったトイレは私設のため使用不可とのこと。

 伊達紋別岳を登り終え、疲れは感じていたが、移動と休憩に1時間のインターバルを取ったことで、やや体力の回復も感じたので「よし!登ろう!」と気持ちを奮い立たせて午後1時に登山を開始した。

          
          ※ 車道を利用した登り初めの登山道ですが、車はほとんど走っていないようです。

 最初は作業道のような林道を上がっていく。林道とはいっても車はほとんど通らないのだろう、鬱蒼とした林の中を進んだ。
 体力が少しは回復したのではと思っていたが、30分も進むともうダメだった。少し斜度がきつくなっただけで肩で息をしている。「こんなことでは頂上はとても無理ではないか?」と思い始めていた。
 しかし、自分で課した「一日で二つの山を登る」というノルマを達成しなくては、という思いだけで足を前へ進めた。

          
          ※ 登山道は時にはこうしたワイルドなところもありました。
          
 遂にまだコースの半分までも行かないところで足が止まってしまった。腰を下ろせるところを見つけて座り込んでしまった。座り込んだとき、ふと登山パンツを見てみると小さな虫がうごめいている。ダニだ! 実は伊達紋別岳で出会った人に「これから稀府岳に行く」というと、「稀府岳はダニに気を付けてください」とアドバイスをいただいていた。
 体力を使い果たし疲労困憊の域にあったが、ダニに恐れをなして、慌てて立ち上がったのだった。

          
          ※ 徐々に登山道の傾斜が急になってきました。

 何時止めよう、何時引き返そう、とばかり考えながら、この時点ではガイドマップにある中間地点の「お尻愛の木」までせめて行こう、と自分を叱咤して登り続けた。
 なんとか「お尻愛の木」のところまで到達した。面白いネーミングだが、2本の木がちょうどお尻を付けたような形をしているところから付けられた名称のようである。

          
          ※ 木の形が「お尻愛の木」というようなネーミングを想起させたのですね?

          
          ※ 標高が高くなるにつれ、登山道にはササが目立ち始めました。

 「ここまでにしよう」と思ったのだが、どうも自分に課したノルマが気になった。このことは、私がブログをしていることが良かれ悪しかれ影響していた。というのも、途中引き返した、とレポするのがとても恥ずかしく思ってしまったのだ。私は意地だけでさらに高みを目ざした。しかし、意地だけではどうにかなるほど登山は甘くない。私の登っている姿を他人が見たら、それはまるでカメの歩みのようだったろう。

          
          ※ やがて樹林帯を抜け、笹原が広がる尾根コースへと出ました。

          
          ※ 空は晴れ、真っ青な空の中を往くのは気持ちは良かったはずですが…。
          
 「お尻愛の木」を過ぎて、しばらくすると伊達紋別岳と同じように樹林帯が切れて、笹原のコースとなった。
 笹原になっての目標は「ガマ岩展望台」である。登山口から1時間45分もかかりガマ岩展望台に着いた。それまで何度も休憩を取っていたが、ここでも15分もの休憩を取った。

          
          ※ この岩の形が「ガマ」を連想させたのでしょうか?

           
          ※ ガマ岩展望台から室蘭市の方向が望めました。白鳥大橋も見えます。         
          
 辛さについてこれ以上書くのはよそう。ともかく辛さは続いたが、前稀府岳などいくつかのピークを越え、15時30分ようやく「稀府岳」山頂に立った。
 山頂の標識を撮影しながら「これを撮るためだけに意地で頑張ったんだよなぁ…」と一人呟いていた。

          
          ※ こうした笹原のコースが山頂まで続きました。写真のピークは前稀府岳です。

          
          ※ 前稀府岳山頂から目ざす稀府岳の山頂です。

          
          ※ この一枚の写真を撮るために苦しい思いをしてしまいました。

          
          ※ 山頂から午前中に登った前紋別岳、伊達紋別岳の二つのピークが望めました。         

 登山時間を見ても私がいかに苦戦したかがよく分かる。伊達紋別岳はほぼ標準時間で登っているのに対して、こちらは標準時間の3.5割増しの時間となっている。いかに休み休み登ったかが如実に表れている。
 もう体力限界はとうに過ぎていた。しかし、下山を同じようなペースで下りていたら午後6時近くになってしまう。辛い体に鞭打ちながら下山し続けた。なんとか午後5時を少し回ったところで下山を終了することができた。しかし、リード文のところで触れたように、私はこの稀府岳登山を教訓としなければならないと思っている。(それは後半に記す)

          
          ※ 午後5時が近くなり、光の届かない森の中はかなり暗くなっていました。

【稀府岳 登山データ】
標 高  702.2m (標高差  513m)
駐車場  登山口のところに駐車場有り(4~5台駐車可能?)
行 程  ※ グランドシニアの足とお考えください。
     登山口→(1時間45分)→ガマ岩展望台→(30分)→稀府岳山頂→(20分)ガマ岩展望台→(60分)→登山口
時 間  上り(2時間15分) 下り(1時間20分)
天 候  晴、無風
登山日  ‘16/07/01


※ 最近になって、妻は私が登山しているときに必ずといって良いほど電話をしてくるようになった。その訳は、目的の山が遠くなり車の運転が心配なことと、山での安全を確認したいという思いからのようだ。この日も、伊達紋別岳を上っている時と稀府岳を下山しているときに電話が入った。
 稀府岳を下山しているときにだった。その際の私の応答は疲れ果てた声だった。すると妻は「そんなことで楽しいの?」と問うた。そのとおりだ。楽しいどころか、辛いだけの登山になってしまっていた。これでは登山を楽しむという私の思いとは違う登山になってしまっている。
 「できるだけ多くの山を登りたい」、その一心から自分の体力を度外視した計画を立ててしまっていた。
 もっと無理なく、あくまで楽しむ登山に徹しなければ…。「田舎おじさん!それは趣味の登山とは言えないぞ!」と自らを戒めた私だった。