昨日午後、満を持してついに「トリック × イリュージョン展」が開催されている道立近代美術館に足を運んだ。関連講座を聴くこと4回、私はどこかに既視感のようなものを感じながら展示作品を見て回った…。
会期末(6月11日)を間近に控えた昨日午後は、平日の午後ということもあり考えていたようにそれほど観覧者は多くなく、割合ゆったりと作品を見て回れる好条件だった。
美術には全く疎いと自覚している私は観覧前に関連講座を4度も受講したのだが、まだどこかに不安を感じていたこともあり入口で「音声ガイド」も購入し展覧会に臨んだ。
展覧会は講座で案内されたとおり、次の4章からなっていた。
◆第1章 「リアル」をめぐって 〈23〉
◆第2章 幻惑のオプ・アート 〈12〉
◆第3章 交錯するイメージ 〈28〉
◆第4章 デジタル・トリック 〈3〉 ※ 〈〉内は展示作品数
第1章の「『リアル』をめぐって」は、音声ガイドでも「まるで写真のような…」というのが決まり文句のように何度も語っていたが、いずれ劣らぬ超写実的な技法は私たち素人も十分楽しめた。圧巻はやはり今特別展のポスターにも掲載された上田薫作の「なま玉子 B」だと思えた。227×182.0(cm)の大キャンパスに描かれた画は迫力十分だった。そして写真と見紛うようでありながら、近くで子細に見ると写真とはまた違った良さも味わえた。
写実主義といえば、私の中では野田弘志である。彼の個人展を今冬に札幌芸術の森美術館で多数拝見してその素晴らしさに触れていたが、本展では「TOKIJIKU(非時)Ⅶ Pyramid」1点だけの出展だったが、その写真を掲載する。
第2章の「幻惑のオプ・アート」とは、「オプティカル・アート」の略称で、錯視や視覚の原理を利用した絵画、彫刻の一様式で、平面上の幾何学模様と色彩の操作で遠近、明滅、振動などの錯視効果を狙ったものだという。
この分野ではこれまでも紹介してきたがヴィクトル・ヴァザルリという方が第一人者のようで、本展でも4点の作品が展示されているが、私はこの日が初見だったがブリジット・ライリーの「アレストⅠ」の方が素直に驚き、発想の素晴らしさを感じた作品だった。
第3章の「交錯するイメージ」は、さまざまな技法を駆使して観る人たち「あっ!」と言わせるような作品が展示されていたが、この章では日本人作家の作品も数多く展示されていた。その日本人の一人である歌川国芳は江戸末期の有名な浮世絵師であるが、戯画でも名をはせた絵師である。いわゆる「寄せ絵」と呼ばれ、人間の目、鼻、口から眉毛、丁髷にいたるまで、さまざまな姿態の人間を組み合わせて一つに絵に表現する作品を数多く残している。掲載した作品は作品名も凝っている。「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」である。
そして鬼才バドール・ダリの「ダンス(ロックンロール)セブン・ライブラリー・アーツより」は、作品の中にDALIという自分の名を潜ませてあるそうだ。
その他、この章では森村泰彦、福田美蘭、福田繁雄などの日本人画家(作家?)の作品が展示されていたが、その中でも福田繁雄の「ランチはヘルメットをかぶって」は写真撮影が可能だったこともあるが、なんことないスプーンの残骸の塊が光の向け方によってオートバイの影絵が現われてきたところが、とても面白く感じた。
最後の第4章「デジタル・トリック」は、PCの技術を取り入れた最新のデジタルアートであるが、本展では札幌市立大学の藤木淳教授が妻である寛子夫人と「フジ森」というユニットを組んで3つの作品を出展していた。その一つ「花びんと鳥かご」は、スリットアニメーションという手法で、スリット(隙間)シートを複数作り、その上からスライドシートを重ねて動かすと、あたかも鳥かごの中で鳥が動いているように見えるという作品である。前章の福田繁雄を作品もそうだったが、緻密に計算されつくした作品は見ている者を驚かせるだけの力があることを教えられた。
全66作品をゆっくりと見て回ることができたが、さて私はその作品の良さ、素晴らしさを十分に感得できたかというといささか自信がない。芸術などは私にとって遠い世界のものなのかもしれない。しかし、これからも地の利を生かして(?)作品の見方、味わい方を学びながら、近代美術館の作品に触れていきたいものである。
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