札幌市の医療体制、並びに救急医療体制は他と比してかなり充実していることが理解できたが、課題がないわけではない。札幌市の担当者から、救急医療体制の今と課題についてお話を伺った。
私が所属する「めだかの学校」の講座「賢いシニア生活を送るために」の第6回講座が9月3日(火)午後に開講された。講師は札幌市医療政策局ウェルネス推進課の課長が「急な病気になったら?~知っておこう!札幌市の救急医療体制~」と題してお話された。
最初に札幌市の医療体制についてお話されたが、札幌市では今年4月現在、病院(ベッド数20床以上)が199ヵ所、診療所(ベッド数19床以下)が1,487ヵ所あるそうだ。この数は人口当たりでみると、病院は全国平均より多いが、診療所はやや少ないという。医師も札幌市は全国平均より多く、道内の地方では全国平均より少ない現状だそうだ。
課題は、医師の労働時間の長さだという。現在、医師の診療時間は週平均53時間だというが、その他に待機時間や研修時間などに週17時間要しており、「医師の働き方改革」が課題となっているとのことだった。
さて、救急医療体制であるが、札幌市の場合は救急隊が36隊、救急車が47台、救急隊員数が361名で、うち300名が救急救命士の資格を持っているとのことだった。なお、消防ヘリも2台所有しているそうだ。
さて、その救急隊の出動状況であるが、昨年度の実績をみると出動数が実に119,872件あり、99,697人を救急車で搬送したそうで、救急車の出動数は右肩上がりの実状だという。
問題は皆さまも想像されると思うが、搬送した被救急者の約半数が軽症の患者だったということだ。(つまり救急車を必要としないような症状での搬送)、さらに約半数が中症、重症患者はたった3%だったそうである。
私は比較的札幌市の都心近くに住み救急病院も近いせいか、救急車のサイレンの音を聞くのが珍しくなくなっている。それくらい救急車の出動が日常茶飯事となっているということだ。
救急車の出動数の増大は、救急車の所要時間の伸びにも繋がっている。最近は救急医療機関が減少傾向にあり、搬送する病院を探すことに多くの時間が費やされているという。現在救急車の所要時間は平均42.9分だという。そのうちのおおよそ2/3は救急搬送先を探すことに費やされているそうだ。
つまり札幌市の救急医療体制は相当な危機的状況にあると云えそうだ。こうした状況を改善するためには、救急車の出動要請の改善だという。前述したように軽症患者が出動要請を回避すればたちまち救急医療体制の改善に繋がるというわけである。運営側としてそう考えるのはある意味当然とも言える。その改善策のとして強調されたのが「救急安心センター #7119」の利用を図ってほしいとの要請だった。「24時間365日看護師が相談に対応します」との謳い文句で、急な病気やケガで迷ったら「まず、救急安心センターさっぽろ」に相談してほしいと強調された。
さらに講師は、ひとりひとりの心掛けとして、「診療時間内に受診する」、「普段から相談できるかかりつけ医を持ってほしい」、そして「救急車の適正利用を」と呼びかけ講義を終えた。
講座を終え、私たちだけで交流を持ったが、最後に司会から代表としてまとめをしてほしいとの要請があった。私は「マスコミ報道などで救急車の不適切要請が増えていることが話題になっている。そのことはとても気になるが、いざ自分が急な病やケガに見舞われたとき救急車を要請すべきか否か迷うことがあるかもしれないが、その時は迷わず救急車を要請しましょう!」と呼びかけた。
「大したことない」などと自己判断(素人判断)はせずに、自らの命は自らが守るためにも、迷った時には迷わず救急車を要請したい。迷ったこと自体が適正利用のことを心の片隅に置いている何よりの証拠なのだから…。