あんな話こんな話

会津生まれの会津育ち…三匹の猫と柴ワンコや家族に囲まれ、家庭菜園に勤しみ都会には住めそうにないローカルな私の日常。

ライオンのおやつを読んで

2023-02-27 00:19:46 | 読書感想文

本当は別の本を目的に立ち寄った,最近新しくできた本屋さん
そこでドリンクを飲んだりとか、いろんなお菓子だとかも売られてて
新しいタイプの本屋さんだって、ずっと前に開店はしていたのだけど
先日初めて寄ってみた。

目的の本はなかったので、そのあたりをうろうろして
見つけたのが小川糸さんの本が思った以上並んでいて
すでに読んだものもあったし、エッセーみたいなのも
何冊も並んでいた中で、手に取った一冊は『ライオンのおやつ』だった。

 

だいたいからして、糸さんの言葉というか言い回しが好きで
言葉からこぼれ落ちる糸さん独特の繊細さとでもいうのだろうか。
言葉で情景が見える…そういうとこが好きな作家さんだった。

重病に侵された孤独な主人公がホスピス、ライオンの家での生活で
生きることとは死んでいくこととはを題材にした本だけど
美しい風景と出会う人々と決して暗い話とはちょっと違う
そこが糸さんらしいとこなんだと思った。

ホスピスでの生活で一番欠かせないのがマドンナの存在と
他にも小さいころから飼いたかった前に亡くなられた方の飼い犬との出会い
ブドウを栽培してそれでワインを作っている青年だとか
瀬戸内の海に囲まれた島で風景も空気も美味しいところ。

そんなホスピスでの食事、そして週に一回おやつの日があって
そこでは自分にとって人生特別のおやつ、一人一人が申し込むのだが
ある人は仲の良くなかった母親との初めて作ってもらったものだったり
またある人は小さい頃の思い出のおやつだったりとか
外国で食べたお菓子だとか初めて父親の誕生日に作ったお菓子だとか
いつ自分の申し込んだオヤツが選ばれるのかは誰も知らない。

そんな中で
ひょっとしたら奇跡が起こるのではないかと思う瞬間があったりするのだけど
やっぱり主人公は何人かのホスピスの先住人を送って行く中で
不安やまだ生きていたいと思う気持ちなどが入り混じり
気持ちも乱れるのだけど…成るようにしかならない
生き物すべて自然に生かされてるのだと気付く。

やがて主人公はしだいに弱って痛みに苛まれ
モルヒネを使うようになると、眠っている時間と起きてる時間とが曖昧となり
読んでいる私でさえ、これは夢なのか現実なのかって分からない部分があった。
立ち上がることも出来なくなり夢と現実の狭間でうつうつとベッドに横たわっていた。

若くして事故で亡くなった両親の代わりに育ててくれた叔父を
お父さんと呼んで二人三脚の様な二人だけの生活をしていたが
お父さんの結婚とともに一人暮らしを始め
病気になった事ホスピスに入った事を言わなかった。

そんな主人公のもとにお父さんが主人公の妹を連れて面会に来てくれた。
初めて会った妹と懐かしいお父さんの顔と
もう立ち上がる力も残っていなかっただろうに
車いすに乗って思い出のブドウ畑でお父さんと妹に
あの美しい瀬戸内の風景を見せてあげる事が出来た。

その数日後に眠るように旅立った。
旅立つこと、すべての人がいつか訪れることを
暖かく優しく表現している。

最後の一章はお父さんの奥さんと妹と主人公がいる。
そんな雰囲気の夕食に好きだったプリンと
主人公の話をしている…思わず一気読みしてしまった。

私が最後に食べたい特別なおやつはなんだろう。
今のところ心に残っているおやつは思い浮かばない。
これから出てくるのだろうか、それとも忘れているだけなのか
分からないけど、何度でも読みかえしてみようと思った一冊だった。

 

 

 


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14 コメント

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Unknown (山小屋)
2023-02-27 08:40:20
最近、本屋さんにも行かなくなりました。
よい本に巡り合ったようですね。
詳しく内容が書かれていて読んだような
気になりました。
>最後に食べたい特別なおやつ・・・
特にありません。
返信する
Unknown (1948of)
2023-02-27 09:46:22
人生を深める一冊ですね。
本から学ぶことが多くあります。
ありがとうございます。
返信する
私も読みました。 (♪CD♪)
2023-02-27 14:19:06
温かい気持ちになりながらも
やはり悲しかったです。
いま、病魔と闘っている友人にもっと早くに紹介したかったと思いました。

おやつではないけど、母に最後に好物のお寿司をたべさせてあげられなかったのを悔やみました。
最期に食べたいおやつ。
私だったら何かなあ?
すぐには思いつきません。
一日一日を大切にすごしたいと改めて思いました。
返信する
読みたいです! (きっしぃ)
2023-02-27 15:51:40
以前、ドラマで放送されてるときがあって
その時に原作本の事を知りました。
すぐにでも読みたかったんですが
古本しか買わないわたくし・・・。
古本でも高くて・・・(〃∇〃)
図書館でも人気本でして
いまだ、読めずにいます。
次の予約の時、次の購入の時、思い切って選んでみようと思います(*^^*)

私も小川糸さんが大好き。
pochikoさんと同じで光栄です(^^)
返信する
 (シン)
2023-02-28 17:12:47
大変ご無沙汰しております。
実は私、去年の11月に消化器系の癌に罹っていることが判明しまして、未だもってブログに復帰できないでおります。
ただ、かなり初期の状態で発見されたので、12月の手術で寛解したのですが、その影響からすっかり元気がなくなり、現在に至っております。
あと数か月は安静を要するようですので、それまで頑張って生きて行こうと思っております。
その節はよろしくお願いします。
返信する
Unknown (m)
2023-03-01 06:13:45
この作家の本を読んだことがありません。
すぐにでも読みたい!と思わせるpochikoさんの感想文。素晴らしいとおもいました。
きっと学生時代感想文で賞なんぞもらっていたんだろうなと。思いながらよみましたよ。

最後にたべたいおやつはないけれど、食事ならうな重です(笑)
返信する
山小屋さんへ (pochiko)
2023-03-01 23:56:15
私もそうでしたが、テレビで紹介されていた本
どうしても読んでみたくなったので寄ってみましたが
その本の取り扱いはなく、思いがけないこの本との出会いでした。

特別なオヤツと言われると思いつかないものですよね。
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1948ofさんへ (pochiko)
2023-03-01 23:57:32
久しぶりに読んだ一冊でしたが
いろんなことを考えさせられました。
今度は以前からの買い置きの本を
読んでみようと思います。
返信する
♪CD♪さんへ (pochiko)
2023-03-01 23:58:20
CDさんはすでに読まれていたのですね。
美しい景色や食べ物のことを通して
見事に表現されていましたね。

お母さまにお寿司をでしたか。
私は夫ともっといろんなところに出掛けられたら良かったです。
私も特別にって言われると思いつかないです。
返信する
きっしぃさんへ (pochiko)
2023-03-01 23:59:19
ドラマで放送されたことがあったのですか!
そういえば食堂カタツムリもドラマ化されてましたよね。
それをみて読みたくなった一冊でした。
私は単行本で買いました。
ハードブックは高いですよね。
ぜひぜひ、読んでみてください。
私自身娘の事で心に残ることがありました。

きっしぃさんも小川糸さん大好きだったのですね。
私も同じ作家さんが好きで嬉しいです。
返信する

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