鎧をまとう人びと―合戦・甲冑・絵画の手びき
著者:藤本正行
発行所:吉川弘文館
定価:3,300円+税
沢村大学吉重の画像が熊本市の成道寺にあるが、私はまだ実物を見たことが無い。鎧を身にまとい、竹把に腰を掛けている。冑はつけておらず、右前の兜立てにおかれているが、完全武装の正装である。その後に指物があり、「さわむら大かく」と書かれている。左脇に薙刀と二本の槍が立てられている。顔の表情からするとかなりの老齢と思われるから、嶋原一揆の頃を描いたのであろうか。座っているのが竹把である事も、それを窺わせている。
実は図書館で藤本正行著の上記の本を見つけ、中々面白そうで借りてきたのだがこの中に大学殿がおられた。(p255~256)
鎧姿について詳細な説明が成されており、この絵が「近世甲冑像」としては優れたものである事が記されている。沢山書き残された甲冑図の中には、随分間違いの多いものがあるらしい。
戦場で主力となった足軽たちの姿を描いたものに「雑兵物語」がある。通常足軽の武装は桶側胴にすげ笠のみである。下半身を防御する物はない。若狭武田家重臣逸見氏の家臣であった沢村大学も、逸見氏没落後は細川家の西川与助の足軽から再スタートしたとされるから、このような姿の時も有ったのだろうか。その後の活躍はご存知のとおりである。
ちなみに表紙の武将は、逍遥軒筆による「武田信玄画像」である。