すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

先生が「あのね」と語ること

2022年12月10日 | 読書
 コロナの予防接種5回目で会場の待ち時間に読もうかなと思い、館の新着書架で目についたこの一冊を、表紙だけ見て借りてみた。受付て早速椅子に腰かけ開いては見たものの、あまり内容が頭に入ってこず(書いていることは理解できるのだが)、ついこんな思考に…。いったいどんな人がこれを読もうとするのか?


『先生のあのね』 (ほたろう  ワニブックス)

 


 その①として「本の体裁に惹かれる者」というのはあるかもしれない。第一、自分がそうだもの。もちろん書名が語る「教師の本音」部分と相乗効果を出している。ノートを意識したデザイン、青罫線を引いた紙面にはイラストと直筆文字。活字は目次やタイトルやポイント部分で登場する。教育書とみれば斬新だ。


 その②として「同業者や保護者」が、仕事や子ども理解の参考にしたいという真っ当な理由で手にする場合もあるだろう。③として「Instagramで大反響」と帯にあるので、その関わりからページをめくる者、おそらくそれは②と重なる層だ。教員の本音を知りたい、何か子育て上の共感や具体的なヒントがないか…。


 正直、少し教職キャリアを積んだ者なら書けるのでは…というレベルに見える。しかし、在りがちにも思えるイラストと正直な心情吐露のミックス具合が編集者の目に留まり書籍という形を成したから、価値はあるのだ。著者なりの表現を継続して身に付いた感覚は、ありきたりに見えても強靭だ。


 イメージとしてはスローボールで日々を乗り切る。自分には正直ぴんとないが、こうしたテンポに合う読者がいるように、学校現場で波長のあう子どもも少なくないだろう。スピード優先が持て囃される今の環境で、ある意味その存在は貴重にも思えてくる。そうか、それが「あのね」という語に昇華しているのかもしれない。