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桜と絵本と豆乳と

自分を引っ張る文庫たち

2022年12月25日 | 読書
 今月はずいぶんと再読モードだ。何か、引っ張られるように読んでいる。

『月の満ち欠け』 (佐藤正午 岩波書店)

 ちょうど3年前に文庫本で読了した小説だ。再読であっても引き込まれるような感じがあり、改めて名作だと思った。
 映画化された話題を知ったことがきっかけになったわけだが、さて、見たい欲求とイメージが壊されるかもしれない不安がせめぎあっている気分だ。不可思議な「命」「魂」の存在へ憧れを持ち続けている自分を認識する。そうあってほしい願いとともに、あるはずはないのだという諦念が拮抗する
 それにしてもこの一冊、無人島行きの小説ベスト5(笑)には必ず入るなあ。



『現実入門』 (穂村弘  光文社文庫)

 13年前に読んでいる。その時の感想メモと似たことを思いつつ、今回も読了した。
 それ以後、数々エッセイ集を中心に穂村を読んできたが、ああこの一冊はまさに妄想力全開だったなあ。独身の著者が、その現実と向き合ってクライマックス?を迎える過程を書いてあるから…と後付けの理由も十分つけられる。
 最近、少し妄想する力が弱体?劣化?している自分に気づく。いや、妄想への意欲が沈滞しているのか。言うなれば「妄想破門」。もう一度、もう一度、その門前に立たてねば…時間切れか。


『大人のいない国』 (鷲田清一・内田樹  文春文庫)

 2013年の発刊当時、それから2019年にも読んでいる。三度目だけれど、古さを全く感じないのは「本質」が語られているからだ。
 そして何度も繰り返し読む自分は、つまり相変わらず本質が身に付いていないから…つまり、まだ「大人」になれないのか
 プロローグで引用されている17世紀フランスの思想家パスカルの言葉は、今もって「異様なほどリアル」なことに驚いた。「絶壁」に近づいている感覚なのか。
われわれは絶壁を見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶壁のほうへ走っている