すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

参参参(二十)拡散と集中と

2023年05月06日 | 読書
 先月末からのGWで読了したメモ。


『瑠璃の雫』(伊岡 瞬  角川文庫)

 初めて読む作家。結構込み入っているミステリだった。時間軸を行ったり来たりする手法は結構あり、湊かなえ等よく使われている印象だ。その点、この小説は三部構成なので明確であった。ただ、細かい仕草などの描写の意味が掴みにくく思えた。深読みしていいかどうか迷ったりした箇所もある。全体的には面白いストーリーだったが、70点クラスかなと勝手に評価した。人物の台詞の単調さも少し気になる。唯一、おっと思ったのは主人公から停車中のエンジンストップを指摘された女が「無駄」について語った言葉「つまらない人生はアイドリングどころの無駄じゃないでしょ」…沁みる。





『これが私の優しさです』(谷川俊太郎  集英社文庫)

 谷川の初期・中期つまり昭和期の詩集からのアンソロジー。学生時代から馴染んだフレーズもあれば、全く知らないものもある。「ことばあそびうた」が今でも新鮮だ。「き」より引用
 なんのきそのき
 そのきはみずき
 たんきはそんき
 あしたはてんき

巻末に漫画家さくらももこが「鑑賞」と題して文を寄せていた。大ファンらしい。その理由を述べている文が深い。「谷川先生は、二元性を突きつめたら必ず一元性になる事を御存知で、私はそれをよく知っている方が好きだ」上の詩の一部分にあっても、言葉やストーリーは読み手それぞれの世界が広がるが、現象として7文字4行のインクの染みである。拡散と集中の繰り返しのなかで、人は求めているところへ向かう。



『やらかした時にどうするか』(畑山洋太郎 ちくまプリマ―新書)

 知っている人は知っている「失敗学」の権威。取り上げられた例として、津波被害に遭った福島原発の建築がある。これは初耳だったので衝撃的でもあり、日本人の思考パターンを象徴的に示すものでもあった。前例踏襲は一つの方法であるが、最低限の条件吟味を怠っている。恥ずかしくも悲惨な例だった。この頃マイナスからプラスへという思考を時々考える。読んだ本や大谷翔平の活躍などに刺激されているからだろう。この本はまさに、そういう思考を仕事や学習に現実化させるものだ。最終章「クリエイティブな生き方に挑む」には、かの大谷も取り上げられていた。失敗に「学」がつけば、それは「創造」への途上に過ぎないということだ。

桜日記2023.05.03

2023年05月04日 | 
 朝、二度目の春山へ出かけたが、思っていたより山間部は残雪もあって「若く」、収穫は少し。
 山桜が目に付いたので、家に戻ってもう一度昼前に出かけた。



 もう少し晴れていればと思わせられる北沢峠の一枚。



 毎年、撮っている付近。芽吹き紅葉も近い。



 高瀬川沿いにぽつぽつとあるしだれ桜。



 岩瀬から山村広場の方を向いたら、まさに山笑ふ。

令和五年八十八夜日録

2023年05月03日 | 雑記帳
 ♪夏も近づく八十八夜♪という詞を手遊び歌として口にしていた頃は、こんなに天気が不順だったろうか。記憶とは曖昧で、暑かったことも寒かったこともその時は盛んに嘆いたわりに、時が過ぎれば些事に思えてくる。それは仕事や人づきあいも同様で、苦しさ辛さも時が解消してくれなければ、人間はパンクする。


 さて、今日はこども園読み聞かせ初日。計画通り絵本3つと紙芝居1つを演じた。先日書いた、園の活動や日常の交友関係にも結びつくものを意図的に選んでみたが、正直反応は今一つだった気がする。そう思うのはやはり集中しきれない子どもの存在が目に付くからだ。困難はあるにしろ、惹きつける術を学ばねば…。





 お昼のニュースで、県内のコロナ感染者が約290人と出た。二カ月以上出ていない数値である。先月中旬から管内感染者が目立ち心配していたが、やはり全県的に増えているではないか。連休後の5類移行は決定事項ではあっても、それがあくまで経済主導の政治的判断だということを頭に入れないと、身は守れない。



 先日の新聞で県内「道の駅」の来場者数(3年間の統計)が示され、本町の「端縫いの郷」が県内第3位。なんと素晴らしいと思った。十文字や象潟よりも多いなんて…と思っていたら、昨日のさきがけWebではネット上の人気投票ではなんと第1位と発表された。条件の良くないなかの船出を知っているだけに嬉しい。


 昨年度の年間貸出を集計しランキングが出された。その掲示を見て、強いなあミステリ小説と改めて思う。1日は月曜休館だったので、今日は開館と同時に新着本を目当てに入館する常連の方々もいる。ほとんどが小説で間違いない。そのこと自体悪いことではないが、読書は娯楽と割り切ることもできないでいる。


参参参(十九)

2023年05月02日 | 読書
 ちよいと物足りない連休スタート。雑食読書は4月読了分。




『あなたの本』(誉田哲也 中公文庫)

 誉田哲也といえば「ストロベリーナイト」。といえば、姫川玲子。といえば、竹内結子。ああ、あのドラマは魅せてくれたなあと今でも思う。この作家については他の小説は読んでいないので、この短編集は自分にとって入門書のような感じだ。「ストロベリー…」に通ずる毒々しさが随所にあったが、読み終わり解説を読むと、独立短編集は本書が初で「特別な位置付けの一冊」と言えるようだ。冒頭の「帰省」はラストが面白く、こう来るかとテクニックを感じた。表題作もなかなかにオチが効いているし、「天使のレシート」という青春小説風の一編も切れ味がいい。多彩な描写を使いながら仕立てるイメージが残った。



『文豪どうかしている逸話集』(進士素丸 KADOKAWA)

 明治期から昭和までの、いわゆる「文豪」と称される作家27名のちょっと変な、笑えるエピソード集。太宰や芥川、そして漱石、鴎外…と名前は知っているが、個人的に馴染んでいると言えるのは賢治と中也ぐらいだ。それにしても、作家(いや大作家かな)という人種はヘンシツシャだと感じる。これは偏執そして変質、両方の要素がある。そこまで拘らないときっと表現で多くの読者の心を動かすことは難しい。深堀できるからこそ普段凡人が気づかないところまで連れていってくれるのだろう。つくづく今の時代なら、騒動・炎上しそうな話題ばかり。逆にこのような社会環境は、もはや「文豪」など生むことはできないかもしれない。



『マリコ、うまくいくよ』(益田ミリ 新潮社)
『僕の姉ちゃん』(益田ミリ マガジンハウス)


 先日の旅行エッセイからの流れで、漫画単行本2冊読んでみた。週刊誌などでも見かけているので大よそのパターンは知っていたつもりだが…。一つ目は同じ職場に勤め、年齢の違う3人のマリコの話。一つの場面を3人それぞれの視点で描くパターンが面白い。『僕の…』は書名そのままで、同居する弟から見た姉の姿をほぼ二人の会話で展開させていく。これがまた秀逸。30歳とおぼしき姉の言動を通して、見事に現代を生きる女性の生態と本音がわかる。哲学的と思える回もあり、ストーリー4コマ(?)として十分楽しく思えた。その一節。「花を飾ることよりも 花を買っている時の自分が好きなのでは…