すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

参参参(十九)

2023年05月02日 | 読書
 ちよいと物足りない連休スタート。雑食読書は4月読了分。




『あなたの本』(誉田哲也 中公文庫)

 誉田哲也といえば「ストロベリーナイト」。といえば、姫川玲子。といえば、竹内結子。ああ、あのドラマは魅せてくれたなあと今でも思う。この作家については他の小説は読んでいないので、この短編集は自分にとって入門書のような感じだ。「ストロベリー…」に通ずる毒々しさが随所にあったが、読み終わり解説を読むと、独立短編集は本書が初で「特別な位置付けの一冊」と言えるようだ。冒頭の「帰省」はラストが面白く、こう来るかとテクニックを感じた。表題作もなかなかにオチが効いているし、「天使のレシート」という青春小説風の一編も切れ味がいい。多彩な描写を使いながら仕立てるイメージが残った。



『文豪どうかしている逸話集』(進士素丸 KADOKAWA)

 明治期から昭和までの、いわゆる「文豪」と称される作家27名のちょっと変な、笑えるエピソード集。太宰や芥川、そして漱石、鴎外…と名前は知っているが、個人的に馴染んでいると言えるのは賢治と中也ぐらいだ。それにしても、作家(いや大作家かな)という人種はヘンシツシャだと感じる。これは偏執そして変質、両方の要素がある。そこまで拘らないときっと表現で多くの読者の心を動かすことは難しい。深堀できるからこそ普段凡人が気づかないところまで連れていってくれるのだろう。つくづく今の時代なら、騒動・炎上しそうな話題ばかり。逆にこのような社会環境は、もはや「文豪」など生むことはできないかもしれない。



『マリコ、うまくいくよ』(益田ミリ 新潮社)
『僕の姉ちゃん』(益田ミリ マガジンハウス)


 先日の旅行エッセイからの流れで、漫画単行本2冊読んでみた。週刊誌などでも見かけているので大よそのパターンは知っていたつもりだが…。一つ目は同じ職場に勤め、年齢の違う3人のマリコの話。一つの場面を3人それぞれの視点で描くパターンが面白い。『僕の…』は書名そのままで、同居する弟から見た姉の姿をほぼ二人の会話で展開させていく。これがまた秀逸。30歳とおぼしき姉の言動を通して、見事に現代を生きる女性の生態と本音がわかる。哲学的と思える回もあり、ストーリー4コマ(?)として十分楽しく思えた。その一節。「花を飾ることよりも 花を買っている時の自分が好きなのでは…