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「殺人症候群」貫井徳郎

2011年09月29日 22時41分46秒 | 読書(小説/日本)


「殺人症候群」貫井徳郎

皆さんは、貫井徳郎作品を読んだことがあるだろうか?
暗くて重い、が共通する特徴と言われる。
第4回鮎川哲也賞最終候補に残ったのが「慟哭」。
ちなみに、第3回鮎川哲也賞受賞は「ななつのこ」で加納朋子さん・・・後の貫井哲朗氏の奥さんである。

いきなり話は脱線するけど、作家同士の結婚、ってのは、よくあるのだろうか?
(親子だったら・・・森鴎外→森茉莉、幸田露伴→幸田文、太宰治→太田治子、斎藤茂吉→北杜夫)
作家で夫婦ってのは、有名どころでは、吉村昭さんと津村節子さん。
あと小野不由美さん&綾辻行人さん、藤田宜永さん&小池真理子さん。
新田次郎さんの奥さんは藤原ていさんだけどノンフィクション、エッセイ、自伝だけで、小説は書いていないし。
角田光代さんは伊藤たかみさんと結婚していたけど、離婚したし。

漫画家どうしの方が多いかも・・・本宮ひろ志さん&もりたじゅんさん、松本零士さん&牧美也子さん、新谷かおるさん&佐伯かよのさん、弘兼憲史さん&柴門ふみさん、富樫義博さん&武内直子さん吉田戦車さん&伊藤理佐さん。

本文に入る前に、脱線ばかりでスマン。
「殺人症候群」だけど、ホントよかった、レベルが高い。
これも、「少年犯罪」、「犯罪と遺族」のテーマがらみで読んだ。
(すなわち「心にナイフをしのばせて」「ユニット」の関連で読んだ)
テーマはずばり『遺族の犯人への復讐』。
少しだけ文章を紹介しておく。

P583
「(前略)少年法は刑罰を与えることが目的じゃなく、少年を更生させることが主眼だというでしょ。でも、未成年だったら無条件に、更正する権利があるわけ?更正する権利なんか与えるべきじゃない、生まれついての凶悪犯もいるんじゃないの?あたしはそこがずっと疑問だった」

P593
屑は生まれつき、心が膿んでいるいるのだ。その膿は、どんな誠意も努力も摘出不能だ。被害の拡大を防ぎたければ、心を膿んでいる者をこの世から消去する他に手だてはない。

・・・もっとも過激な箇所を紹介したので、誤解のないように。
作品全体を読んで、作者の提示する問題を判断し考えて欲しい。
非常に重く、読後感も暗い・・・それでも、読む価値有り、と思う。
いったい『正義』とは何だろう?・・・考え込んでしまう。
文庫本で702ページ、ずっしりと重く、内容も重い作品。(普通の文庫本3冊分くらいある)
気合いを入れて読んで欲しい。(過激で、残酷な描写もあるので、万人には薦めない)

PS
2002年度の作品だけど、年末の「文春ミステリ」にも、「このミス」からもモレている。
人気投票アテにならない、ということを証明した。
私は「殺人症候群」2002年度1位でもいい、と思う。

【参考リンク】
He Wailed 〈Tokuro Nukui Official site〉-
(著者公式サイト)
『週刊文春 傑作ミステリーベスト10』
『このミステリーがすごい!』

【ネット上の紹介】
警視庁内には、捜査課が表立って動けない事件を処理する特殊チームが存在した。そのリーダーである環敬吾は、部下の原田柾一郎、武藤隆、倉持真栄に、一見無関係と見える複数の殺人事件の繋がりを探るように命じる。「大切な人を殺した相手に復讐するのは悪か?」「この世の正義とは何か?」という大きなテーマと抜群のエンターテインメント性を融合させた怒濤のノンストップ1100枚。