「羊と鋼の森」宮下奈都
宮下奈都さんは、私の好きな作家の一人。
本作品も面白かった。
ピアノの調律師の青年が主人公。
「音」を文章でいかに表現するか。
そこが、作家の腕の見せ所。
まるで、聞こえるかのような表現。
お薦めです。
P57
原民喜のことば
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
P97
ピアノの基準音となるラの音は、学校のピアノなら440ヘルツと決められている。赤ん坊の産声は世界共通で440ヘルツなのだそうだ。ヘルツというのは1秒間に空気が振動する回数のことだ。数値が高いほど音も高くなる。日本では戦後になるまで435ヘルツだった。モーツァルトの時代のヨーロッパは422ヘルツだったらしい。少しずつ高くなってきている。
【他の宮下奈都作品】
「ふたつのしるし」宮下奈都
「スコーレNo.4」宮下奈都
「よろこびの歌」宮下奈都
「終わらない歌」宮下奈都
「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都
【ネット上の紹介】
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」 ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。