「ふたり女房」澤田瞳子
江戸時代の京都が舞台。
女薬師・真葛がヒロイン。
P55
「確かに医術を学びはしましたが、わたくしは医師ではありませぬ」
藤林家当主である匡(ただす)への気兼ねもあり、当初、彼女は診察を拒んだ。それでも断りきれずに数人を診ると、真葛の評判は瞬く間に洛中に広まった。
P257
「(前略)一向に女医が増えぬのは、我ら男の側にも問題があるのでござろう。何しろ医術を志す女史がいたとしても、それを門下に入れる医師は希でございますからのう。仮に弟子に加えていただけても、そこは厳しい男の世界。よほどの覚悟を据えてかからねば、すぐにはじき出されてしまいますわい」
面白かった。
著者は澤田ふじ子さんの娘。
素質は遺伝しない、環境はあるかもしれないが、本人の実力。
今後要チェックである。
【ネット上の紹介】
吉田山で紅葉を楽しんでいた元岡真葛は、侍同士の喧嘩の仲裁に入ろうとして足を止めた。喧嘩をしているのは武士ではなく、なんとその妻女。相手の武士がおろおろする中、金切り声でまくしたて、あげく夫を置いて去っていったのだ。妻を咎めるどころか、肩を落として見送る夫。真葛は、御典医を務める義兄の匡とともに、残された夫・広之進から話を聞くことに…(表題作)。持ち前の聡明さと豊富な薬草の知識で、女薬師・真葛が、人のしがらみをときほぐす。