この一ヶ月間、グラント書きで忙殺されて、目を通していない雑誌がたまっていましたが、ようやく、グラントも提出し、気分よく、たまった雑誌をパラパラしていますと、6月2日号のNatureのNewsセクションの記事が目に留まりました。折角の気分を暗くさせるような記事です。
私は知りませんでしたが、川崎市にCentral Institute for Experimental Animals (CIEA)、財団法人実験動物中央研究所という施設があり、マウスのstrainの開発などを行っているそうです。そのCIEAが実験用マウスの世界最大の研究施設であるthe Jackson Laboratory(Jax)をパテント侵害で、事前通告なしで訴えたというニュースがNatureに掲載され、その無作法に対する非難を呼んでいます。マズいことだと思います。「日本人は何を考えているかわからない」という悪印象は少なくともJaxの研究者の間に広まるでしょう。(Jaxには日系のPIもいますし、日本人ポスドクも受入れていますから、彼らが気の毒です)
記事のよると、ことの発端は10年前にCIEAが免疫不全マウス開発したNOGというマウスで、これは二つの免疫不全マウス、SCIDとNOD、に加えてIL2受容体γのトリプル変異を持つマウスらしく、重度の免疫不全のために、移植実験に利用できるということらしいです。CIEAは2006年にNOGのアメリカでのパテントを取得し、販売しているそうです。2006年にJaxが作ったNSGという同様のマウスがあって、これをJaxはパテントを取らずに研究施設に供与してきているのですが、CIEA側はNSGがNOGのパテント侵害にあたると告訴したというのが今回の話の筋です。
CIEA側は、これは利益の問題ではなく、CIEAの仕事の認知の問題であると言っているそうですが、このNOGマウスの使用にあたっては、異常に厳しい制限があるそうです。つまり、このNOGマウスから派生する発明や知見にまで影響が及ぶようになっていて、すぐ「言いがかり」をつけることが可能なようにできているらしいです。
SCIDとNODの掛け合わせはJaxとCIEAで90年代にされていて、その後IL2Rgとの掛け合わせも独立に行われたとあります。Jackson Labの弁護士、Einhornは、事前に何の連絡もなく、いきなり訴訟で訴えられたということに対して、激怒しており、私もこの問答無用の無作法なやりかたは大変まずいと思います。アメリカ人ならパールハーバーを思い浮かべるでしょう。CIEAのマエノ氏は、なぜ訴訟の前に事前にコンタクトを取らなかったのか、というNature側の問いには答えず、「Jackson Labとの過去の関係には満足しており、今後もそういう関係を維持したい」と答えたとありますから、ますます何を考えているのかわからない、気持ちの悪い相手だと普通の感覚を持っていたら思うでしょう。いきなり人の横っ面を引っ叩いておいて、今後も友好的な関係を維持したい、と言うのですから、キチガイ沙汰です。Jaxのマウスリソースに出資しているNIHもかなり頭に来たらしく、SCIDマウスを無断で交配したことに関して、CIEAに対しカウンター訴訟を起こすようJaxに要請したとあります。この動機不明のCIEA訴訟に対しての質問にCIEAはノーコメントを通しているようで、よけい顰蹙をかっています。
最後に、この記事を書いた人も怒っているようで、CIEAのことを、労働者クラスの街の川崎市の見すぼらしい小さな建物にある旧世界の施設である、とこき下ろしています。前述のマエノ氏は、「科学研究は世界的な事業であり、国益のことは考えになく、科学の発展を阻害するつもりは毛頭ない」と言い訳していますが、やっていることと言っていることが、これでは合致していません。
いきなり訴えるというやり方がまずいのに加えて、それに対する説明責任を回避しようとする態度は卑怯であり、状況をますます悪化させています。こういうことは一時が万事で、日本人は何を考えているのかわからない不気味な連中だ、という悪印象は無関係の人にも広まって、先入観や偏見を作り上げることになりす。
CIEAの人は、表にでて、正直に質問に答え、誠意を尽くして、無作法を詫びる必要があります。Natureの記事の書き方からは、CIEAは田舎者の礼儀しらずの野蛮人で、現代人の常識が通用しないのだと解釈するしかない、という印象を受けます。 このままノーコメントで殻に閉じこもっていたら、そのうち人は忘れて、昔のような友だち関係に戻れると考えているのなら、大間違いです。果たすべき責任を果たさないものは、交際に値しません。
私は知りませんでしたが、川崎市にCentral Institute for Experimental Animals (CIEA)、財団法人実験動物中央研究所という施設があり、マウスのstrainの開発などを行っているそうです。そのCIEAが実験用マウスの世界最大の研究施設であるthe Jackson Laboratory(Jax)をパテント侵害で、事前通告なしで訴えたというニュースがNatureに掲載され、その無作法に対する非難を呼んでいます。マズいことだと思います。「日本人は何を考えているかわからない」という悪印象は少なくともJaxの研究者の間に広まるでしょう。(Jaxには日系のPIもいますし、日本人ポスドクも受入れていますから、彼らが気の毒です)
記事のよると、ことの発端は10年前にCIEAが免疫不全マウス開発したNOGというマウスで、これは二つの免疫不全マウス、SCIDとNOD、に加えてIL2受容体γのトリプル変異を持つマウスらしく、重度の免疫不全のために、移植実験に利用できるということらしいです。CIEAは2006年にNOGのアメリカでのパテントを取得し、販売しているそうです。2006年にJaxが作ったNSGという同様のマウスがあって、これをJaxはパテントを取らずに研究施設に供与してきているのですが、CIEA側はNSGがNOGのパテント侵害にあたると告訴したというのが今回の話の筋です。
CIEA側は、これは利益の問題ではなく、CIEAの仕事の認知の問題であると言っているそうですが、このNOGマウスの使用にあたっては、異常に厳しい制限があるそうです。つまり、このNOGマウスから派生する発明や知見にまで影響が及ぶようになっていて、すぐ「言いがかり」をつけることが可能なようにできているらしいです。
SCIDとNODの掛け合わせはJaxとCIEAで90年代にされていて、その後IL2Rgとの掛け合わせも独立に行われたとあります。Jackson Labの弁護士、Einhornは、事前に何の連絡もなく、いきなり訴訟で訴えられたということに対して、激怒しており、私もこの問答無用の無作法なやりかたは大変まずいと思います。アメリカ人ならパールハーバーを思い浮かべるでしょう。CIEAのマエノ氏は、なぜ訴訟の前に事前にコンタクトを取らなかったのか、というNature側の問いには答えず、「Jackson Labとの過去の関係には満足しており、今後もそういう関係を維持したい」と答えたとありますから、ますます何を考えているのかわからない、気持ちの悪い相手だと普通の感覚を持っていたら思うでしょう。いきなり人の横っ面を引っ叩いておいて、今後も友好的な関係を維持したい、と言うのですから、キチガイ沙汰です。Jaxのマウスリソースに出資しているNIHもかなり頭に来たらしく、SCIDマウスを無断で交配したことに関して、CIEAに対しカウンター訴訟を起こすようJaxに要請したとあります。この動機不明のCIEA訴訟に対しての質問にCIEAはノーコメントを通しているようで、よけい顰蹙をかっています。
最後に、この記事を書いた人も怒っているようで、CIEAのことを、労働者クラスの街の川崎市の見すぼらしい小さな建物にある旧世界の施設である、とこき下ろしています。前述のマエノ氏は、「科学研究は世界的な事業であり、国益のことは考えになく、科学の発展を阻害するつもりは毛頭ない」と言い訳していますが、やっていることと言っていることが、これでは合致していません。
いきなり訴えるというやり方がまずいのに加えて、それに対する説明責任を回避しようとする態度は卑怯であり、状況をますます悪化させています。こういうことは一時が万事で、日本人は何を考えているのかわからない不気味な連中だ、という悪印象は無関係の人にも広まって、先入観や偏見を作り上げることになりす。
CIEAの人は、表にでて、正直に質問に答え、誠意を尽くして、無作法を詫びる必要があります。Natureの記事の書き方からは、CIEAは田舎者の礼儀しらずの野蛮人で、現代人の常識が通用しないのだと解釈するしかない、という印象を受けます。 このままノーコメントで殻に閉じこもっていたら、そのうち人は忘れて、昔のような友だち関係に戻れると考えているのなら、大間違いです。果たすべき責任を果たさないものは、交際に値しません。