百醜千拙草

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日航再建の是非

2010-01-05 | Weblog
先週末のBBCニュースのアジアと経済のセクションでのトップニュースは、日航再建に政府が当初の1000憶円を二倍に増額しての支援を決めたという話でした。航空業界はどこでも苦しいのでしょうけど、日本人人口の減少と経済不振を鑑みると、いずれはダウンサイズされるべき業種であるのは間違いないと思います。政府支援が業務縮小の運命にある業種につぎ込まれるのは、この場はやむを得ないとは言え、釈然としないものを感じます。航空業というのは、リーマンショックの時の金融業というように、社会の潤滑油的役割を果たすのに不可欠という業種というわけではないでしょうし、だから潰れたら国民みんなが困るという類いのものではないと思うからです。少なくとも、私は日航が潰れても困らないと思います。
 子供のころ、「兼高かおる世界の旅」という番組が好きでよく見ていました。外国への憧れというのは、私の世代に最も強いかも知れません。私よりももっと上の世代は、海外に旅行するということは大変特別なことであったでしょうけど、私の子供のころには、ちょっと小金があれば、行けるようにはなっていました。それでも、一般庶民には海外旅行はとても贅沢なことで、テレビのクイズ番組でも、一等賞がハワイ旅行だったりしました。そんな時代、私は学校の図書館で、外国での人々や生活を紹介する本を読みふけり、その様子を想像しては楽しみました。北杜夫のドクトルマンボウ旅行記シリーズを読んで、船医になれば外国のいろいろなところにいけるのだと思ったのも、医学に興味をもった一因かも知れません。
 兼高かおるさん、実は私の母親よりもずっと年上のようですけど、子供心にも美人だなあ、と思った記憶があります。しゃべり方が「、、、でございますの」とかいう様に、古きよき時代の山の手の奥様風であったのも、子供の私にとってはエキゾティックに響いたのかも知れません。その「世界の旅」の初期の協賛をしていたのが、今は無き「パンナム」でした。私が初めて海外旅行をした時、パンナムはまだありましたが、滅亡の一歩手前で、すっかり落ちぶれていました。ですので、私自身はパンナムが世界航路を持って、世界の航空業界の王座に君臨していた様子はよく覚えていません。ただ、大相撲でのスポンサーでもあったのか、千秋楽では、パンナム極東支店の外人さんが、優勝力士に「ヒョーショージョー」を授与していたこととか、テレビ番組のスポンサー紹介で見たPAN AMのロゴとかは覚えています。小学生のころ、ハワイ旅行に行った友達が持っていた青い字の地球のマークとロゴの入ったパンナムバッグを見て、とてもうらやましく思ったことも覚えています。
 そのパンナムはアメリカ覇権主義を体現する企業として、度々テロの標的にもされるほどでしたが、その高コスト経営体質を変えることができず、プライドの高さゆえに自滅していきました。パンナムの興亡の歴史を振り返ってみると、本当に「驕れる平家は久しからず」という言葉を思い出します。(日本の大正期の総合商社、鈴木商店を思い出します)パンナムは経営不振に陥った後も、残った資産を切り売りし、王者のプライドをかなぐり捨てて、なんとか生き残ろうと痛々しい努力をしましたが、没落貴族の悲劇そのままに、滅びてしまいました。
 日本航空はどうなるでしょう。パンナムに喩えたのでは、日本航空関係者の人の気分を害するかも知れません。パンナムが王者として驕り高ぶったがゆえに自滅したのとはおそらく事情は違うでしょうし。(後で、山崎豊子の「沈まぬ太陽」という本に日航のパンナム体質が描かれていることを知りました。昨年に映画にもなっていたようですが知りませんでした)現在、アメリカの大手航空会社のほとんどが破産したか経営難となっています。航空産業は既に拡張しつくして縮小期に入ろうとしているわけで、そういう状況では、企業努力だけでは何ともし難いのだろうと思います。
 乗客一人を一定距離運ぶのに必要な飛行機の燃料というのは、車並みなのだそうです。仮に車でアメリカ=日本間の約一万キロを移動するとしたときのガソリンの量を考えたら、大変な量の燃料が日々消費され、環境に負荷をかけていると考えられます。昨今の環境問題への人々の意識の向上を見ても、航空機が世界の空を飛び回ることを単純に「景気が良い」と喜ぶ人も少なくなっていると思います。それに、インターネットがここまで発達してきた今、飛行機で人々が移動する必要性は、ますます減ってきているでしょう。私も今では、子供のときは、あれほど強かったエキゾティックな外国への憧れは、この情報化時代のせいか、ほどんど感じなくなってしまいました。
 日航は、合併廃業も視野に入れた縮小時代の長期目標をうまく設定し、政府からの支援金を有効に使ってもらいたいものだと思います。
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