百醜千拙草

何とかやっています

ヨーロッパの心

2011-11-18 | Weblog

世の中見ていると、生きているのが嫌になるようなことばっかりで、投げやりになりそうになります。私は人間の性の善を信じて、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」のように生きたいと思いますが、あいにく、どうみても現実は醜く、グローバル化した資本主義で今や人々は皆、カネの奴隷にされて、一日四合の玄米と味噌と少しの野菜も食べられず、他人の世話を焼くような余裕もなく、生きていくだけで精一杯という人々を増やしつつあります。

さて、ガダフィ殺害が、アフリカの経済的独立を封じ、引き続いて欧米の植民地的状態に置くための欧米の謀略であったというようなことをちょっと前に書きました。ふと昨日、藤永茂さんのブログを覗いてみた所、50年前に、ベルギー兵によって暗殺されたパトリス ルムンバというコンゴの首相の話がありました。大変興味深く読んだので一部を抜き書きしておきたいと思います。

ベルギーは、ヨーロッパでは内部分裂した社会を抱える小国だが、コンゴでは、独立以前からコンゴを支配する大君主のような地位に立つことを成し遂げたつもりであった。そのベルギー人たちの目から見て、パトリス・ルムンバの犯した許し難い罪は、1960年6月の独立記念式典でベルギー国王の行なったスピーチに反論したことであった。(中略)

パトリス・ルムンバは独立から2ヶ月もたたない内に首相の座から追われ、自宅に監禁された。彼は脱走したが捕えられ、殴打され、拷問にさらされ、挙句の果てに惨殺された。この暴行、拷問、殺害のパターンは今日まで、パトリス・ルムンバの暗殺から50年後の今に至るまで続いている。[訳者注:この論考はカダフィ惨殺の10ヶ月前に発表された。]
  ルムンバの暗殺の時以来、真の独立の道を辿ろうとしたアフリカ人指導者のほとんど誰もが暗殺された:Eduardo Mondlane, Amilcar Cabral, Herbert Chitepo, Samora Machel, Thomas Sankara, Felix Moumie, Chris Hani, Steve Biko.  指導者たちに対する暴力は、アフリカ人の抑圧とアフリカの資源の略奪に反対の声を挙げたジャーナリスト、学生、野党指導者、社会勢力に対する脅迫と暗殺行為を同時に伴った。

欧米は己の利益のためには、外国を侵略、略奪、内政干渉、暗殺、脅迫、なんでもやってきます。同様に、日本でのロッキードの角栄や陸山会事件の小沢氏が受けている迫害は、ガダフィやフセインに対して欧米が行ったことと同一線上にあると私は思います。日本が救われないのは、アメリカの手先となって私利のために国を売り、同胞を裏切る連中が権力中枢に集められていることではないでしょうか。

その一週間前のエントリーでは、藤永さんは次のように述べています。

1986年のトリポリ空爆についての吉田ルイ子さんの証言を知った今、2011年に演出されたカダフィ暗殺劇についての我々の想いは怒りとシニシズムに満ちたものにならざるを得ません。いわゆるマスコミが完全にコントロールされている状況下で、どうすれば一般の人間が歪曲されていない事実を掴めるか、どうすればマスコミからの操作をはねのけて独立の思考判断を維持するかという困難な課題に我々は日々直面しているわけですが、これまで既に明確に目の前に曝されている事実から読み取れるのは、アメリカを含む「ヨーロッパの心」と私が常に呼ぶ精神の残忍さと傲慢です。信じ難いような傲慢と残忍性です。

われわれは、アメリカが、特にブッシュ-チェイニー時代、数々の無法なでたらめを公然と行ってきたのを目の当たりにしてきました。「9-11はアメリカの自作自演で、中東侵攻への口実作りのために自らの国民を虐殺したのだ」とイラン大統領は公然と非難しました。しかし、この悪魔のように残忍で傲慢な「ヨーロッパの心」をもつ人間はごく一部で、大多数のアメリカ人やヨーロッパ人は、無意識の協力者もしくは被害者でさえあるのだろうと思います。悲しいことに、世界はその残忍な一部の悪魔によってコントロールされてきて、その上、彼らは反省することを覚えず、フセインを殺し、ビンラディンを殺し、ガダフィを殺ししてきました。

人類はその内の一部に巣食う残忍で傲慢なこの悪魔とどう戦えばよいのでしょうか。多分、人間、一人一人がもっと賢くなるしか道はないのでしょう。アメリカは(日本でもそうですが)その国民をハリウッドのバカ映画やプロスポーツ漬けにし、マスコミを通じて愚民化を進めてきました。そうして国民には、イラク戦争はアメリカ国防のためだとか、ビンラディンはテロリストだとか、ガダフィは独裁者で民主主義の敵だとか、カストロはアメリカを攻撃しようとしているとか、デタラメを信じ込ませて、残虐な犯罪行為を正当化してきました。藤永さんが言うように、マスコミが完全にコントロールされているという状況下で、その洗脳の呪いを破るのは簡単なことではないだろうと思います。

以前、チョムスキーは、どうしてそのように世界情勢を深く知っているのか、と問われて、自分の情報の殆どはメディアに発表されている、と答えました。ただメディアは一面しか伝えません。書かれていないことを読み取ることができてはじめてチョムスキーと同じ質の情報が共有できるということでしょう。

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