百醜千拙草

何とかやっています

ユーロ崩壊、日本の外交

2011-11-15 | Weblog

ベルルスコニ、本当に辞めたようです。メディア、産業を支配し、二期半、10年以上に渡って政権にいたベルルスコニも経済危機でついに降りました。これを喜ぶイタリア人も大勢いるでしょうが、マトモな後任がいないし、イタリア政府は腐敗が激しいので誰がやってもどうにもならない、と国民は半ば投げやりになっているのが実情なのだそうです。東方のどこかの国と同じですね。ギリシャもEU支援を受入れるための合意形成のために首相が首を差し出して、新連立政権となりました。国家危機を野党が利用して政治的前進を図ろうとするのはどこでも同じようです。横から見ているとそういうことは結局自分の首を絞めることになると思いますが、当事者には違う心理があるのでしょう。実質ユーロを支配しているドイツがギリシャを助けるのはギリシャがドイツの軍事兵器などを買うからだという話があります。しかし、当のギリシャでは国民の半分は役人だそうで、実質的に富を産む仕事をしていないわけですから当然、カネも尽きます。そうなれば、ドイツにしてもカネがないのならもう客ではない、とユーロ圏から蹴り出そうとするのではないででしょうか。イタリアとスペインも同じ事で、思うにユーロは早ければ数年で崩壊し、南ヨーロッパの国々は以前の通貨システムに戻らざるを得なくなるのではないでしょうか。

経済危機と言えば、東北震災の後、傲岸不遜の経済学者、ラリー サマーズが、「日本は大変貧しい国になる」と予言しました。私は、震災と原発災害のことを言っているのだろうと最近まで思っていましたが、週末、ドジョウがTPP交渉参加意志表明という官僚原稿を棒読みするのを聞いて、サマーズが日本が大変貧しくなると言ったのは、このことを言っていたのかも知れない、と思い直しました。一般日本人の生活レベルをグローバルスタンダードまでに落とし込むのと引き換えにアメリカ企業の利益を産むためのスキームTPPを、空きカンや財務官僚の傀儡のドジョウらBKD(売国奴のことを最近はこう言うそうです)を使って、他ならぬアメリカが、シュクシュクと進行させてきたのですから、サマーズが日本の貧しい将来を予言できるのも当然なのです。

アメリカとは独立にアジア外交をしようとした田中角栄を、ロッキード事件を使ってハメたことに対して、キッシンジャーが「あれはやりすぎた」と言ったという話を最近、どこかで読みました(ちょっと、どこか思い出せません)。また、キッシンジャーは、「日本人はあたり前のことを受け入れるのに、議論を延々とやって15年かかる」とかつて言ったという話も田中良さんのブログで前に知りました。つまり、明治維新と日米安保のことを言っているのです。明治維新と言えば聞こえはいいですが、早い話、外圧に負けて力ずくで開国させられた(城を開け渡した)だけのことで、日本人がいくら反対だ賛成だという議論をしたところで、日本は力で負けたのだから開国することは最初から決まっていたのです。日米安保も同じことで、戦争に勝ったアメリカからしてみれば、日本をアメリカの軍事属国にすることは日本人がいくら反対したところで最初から決まっていた話で、抵抗したところで覆るわけもないのに、日本人はウダウダと何を無意味な議論をしているのか、バカではないのか、と思っていたワケです。TPPもアメリカ様が日本に参加しろと言っているのだから参加しないという選択は日本にはないし、沖縄米軍基地の県外移転もアメリカ様がイヤだと言っているのだからできないのだ、少なくともアメリカと日本官僚はそう思っているワケです。アメリカにとってみれば、最初から決まっているのだからさっさとやれよ、という事でしょう。

しかるに、どうして日本は最初から決まっている結論に到達するのに、何年もウダウダと議論するのかということです。私自身はこの手の責任所在があいまいで決断が遅い日本社会の体質がガマンなりませんが、日本がこういう意思決定の方法をとるそれなりの理由があるような気がするのです。

昔、国会で、牛歩戦術というのがありました。成立が最初からわかっている与党法案に対して、野党が議員席から投票箱に票を投じるのに異常に長い時間をかけることによって抵抗したという社会党の得意技です。理屈上は、国会の会期終了まで牛歩で採決を送らせれば、その法案は一旦廃案になり成立を一時的に阻止できるわけです。しかし、与党の議員数が法案成立のための数を満たしていれば、いずれは法案は成立するわけで、牛歩をやったところで結果は変らないのです。実際、牛歩をやっている国会中継を見ると、まるでパロディー番組としか思えないバカバカしさです。であるのになぜやるのか。パフォーマンスに加え、もう一つは実際、多少の「時間稼ぎ」ができるという理由ではないかと思います。

日本の重要な政治議題の結論はアメリカと官僚が既に答えを書いているので、議論するまでもなく最初から決まっている訳です。それを一応、議会で議論したフリをし、民主主義のフリをして民意として決定する、それが属国、日本の統治形態です。そんな中で、唯一できるささやかな抵抗が「時間稼ぎ」であったのではないか、と私は思うわけです。一応、独立国の民主主義、法治国家という建前があるので、建前は通さねばなりません。それを口実に時間稼ぎをする、そのための議論なのではないかと思います。

ドジョウも最初から決まっていたTPP交渉参加意志を、あたかも熟慮の末に表明したという形にするために、予定していた表明わざわざ一日だけ遅らせるというsubtleなワザを出しました。しかもこれはTPP交渉参加表明ではなく、交渉参加へ向けて関係国と協議することの表明だそうで、これからも、議論したり熟慮したりするフリをしながら、政権が少しでも長く続くよう、時間稼ぎをしつつ、結局、最初から決まっているTPP交渉参加という結論に近づいていくのでしょう。農業や医療という日本の保護市場はいずれこのTPPによってアメリカのハゲタカ企業に明け渡すことは決まっていて(と少なくともアメリカは思っている)、そうなれば、サマーズが言うように、一般日本国民は大変貧しくなることも決まっているのです。そして、日本のできる唯一のささやかな抵抗が「時間稼ぎ」だ、多くの政治家や官僚はそう考えているのでしょう。当然、松下政経でしっかりカタにはまったドジョウもそう思っていると思います。その負け犬根性が、日本をますますアメリカの属国としての立場に釘付けにしてきました。その負け犬根性を払拭し、本気で対米従属から脱することを考えたのは角栄と現在はその弟子の小沢氏だろうと私は思っているのですが、、、。

ここまで書いた後、田中良さんのブログが更新されていて、TPP参加について「これでよいのだ」というタイトルで出ていました。大変興味深い説です。ドジョウが一日表明を遅らせたのは日本のTPP反対派に対して打った時間稼ぎの猿芝居だと私は単純に思っていたのですが、同じ猿芝居でもこれはひょっとしたらアメリカに対して打った芝居の可能性もあると思わされました。もしそうだったらドジョウは役者です。(たぶん、違うでしょう、先週の国会での様子を見ると、ドジョウはTPPのISD条項についても知らず、日本が交渉参加できるのは全ての条件が日本抜きで設定されてしまっただということもわかっていなかったようですし)

コメント
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