百醜千拙草

何とかやっています

量より質

2012-09-14 | Weblog
昨日まで全く元気で、要職にあった人が、遺書のような書き置きを残して女性問題で突然「自殺」する、というのは日本ではよくある話ですが、外国では聞いたがありません。だいたい73歳の現役大臣が「女性問題」なんかで自殺するというだけで異常です。若いウェルテルや藤村操ではあるまいし。
あまり、情報がないので、これ以上、勘ぐるのはやめますけど、ネットでは、野村の不祥事の処分に関して官僚と対立があった、とか証券取引法を改正しようとしていたとか、郵政民営化担当相だったからだとか、日韓通貨スワップ協定延長を見直ししようとしていた、とか「死ぬ理由」について憶測が渦巻いていますね。
警察は速攻で自殺と断定して、幕引き。とにかく、この国は不審な「自殺」が多過ぎます。ヨミウリ新聞は、「女性問題で自殺」という記事をそっとオンラインから削除。記事を残しておくと何かヤバいことでもあるのですかね。一応は大手マスコミであるヨミウリが週刊誌のデマ記事を引用してまで「女性問題で自殺」という結論で一旦は記事にしたということは、「女性問題で自殺」という線で早いとこ片付けたかったのでしょう。そして、この事件は数日経たない内に、まるで無かったかのような扱いになっています。実は、本当に自殺なのかも知れません。しばらく前にガンが見つかっていたという話もありますし。しかし、大臣や政治家が、しょっちゅう突然に不審死するこの国は異常です。私、この事件に関しては、マスコミの報道の仕方が私は腑に落ちません。

科学論文を読む時は、研究者は普通は書いてある事を素直には信じません。データやその解釈を「批判的」に読むのは、研究者としての基礎的な心構えです。何らかの目に見える現象に関してにいろいろな解釈の可能性を考え、仮説をたててそれを検討する、というのが研究という活動であると思います。言い換えれば、方法的懐疑によって、現象を説明するよりコヒーレントなモデルを作り上げていくということです。そうしてコペルニクスは転回し、ヒッグス粒子は発見されたのではないでしょうか。しかるに、そのような研究者であっても、マスコミの垂れ流す情報には比較的無批判な人が少なくないようです。
 チョムスキーは、どうして世界のことをそんなに知っているのか、と問われて、「情報源は、みなさんと同じマスコミや雑誌だ。ただ、書いてある事だけをそのまま受け取っていていはいけない。種々の情報を総合し多角的にみれば、書かれていない事が見えてくる」というように答えました。同じものを見ながら、その理解の深さや解釈はしばしば異なるということです。行間に隠されているもの、報道されてしかるべきなのに報道されないものを(例えば、今回の場合は遺書の内容ですね、そして二通が首相と官房長官に当てられている不自然さ)を考えてみることが大切なのではないでしょうか。
 今回の金融相の「自殺」、報道の仕方や、この人の官僚との対立、郵政、金融相という立場、アメリカの立ち位置、そのあたりを総合的に考えた上で事件を客観的に見れば、「女性問題で自殺」という線で結論するのは、余りに安易すぎるように私は思います。遺書の内容(それからそれが本当に自筆のものなのかどうか)そのあたりの情報が報道から隠されています。報道での人々の反応は「あの人が自殺するなんで考えられない」というものばかりです。なのにどうして、そんな人が自殺にいたったのかという理由に関しては、まともに解明しようと刷る努力もなしに(女性問題で)「自殺」として片付けてしまうのでしょうか。こういう不自然なことは(日本では)しょっちゅう起こっているのだから、今回もソレでいこう、ということなのでしょう。
 「政治家の急死は、アメリカと官僚の陰謀だ」という人も「陰謀論に意味は無い」と決めつける人もどちらも思考停止していることには違いありません。ただ前者の方が多少はましだろうと思います。かつての同士であった亀井さんが「たとえCIAに殺されても郵政民営化は阻止する」と発言したことを考えれば。

さて、話題転換。
Science(8/31号から)のフロントページから、二三、興味深い記事を。

ニコラ テスラ博物館をニューヨーク州に立てようとする動きがあるという話(このリンクはPDFです)。テスラと言えば、数々の発明に加え、人工地震をおこしうる技術を開発し、それを利用しようとしたオウム真理教がかつてユーゴスラビアのテスラ博物館まで資料探しに行ったということで有名な人物です。素晴らしい業績にもかかわらずエジソンとの確執や晩年のオカルト傾向のせいか、アメリカではこれまで人気がありませんでした。しかし科学技術における数々の業績はもちろん博物館に価するでしょう。完成したら、人工地震やHAARPとの関係も一緒に展示してもらいたいと思います。

カリフォルニアの会社が再現実験を請け負うという話(Service Offers to Reproduce Results for a Fee)。データはPLoS Oneが出版を保障するとも言っています。誰かの仕事を再現する実験というのはモチベーションのわかないものですが、それが重要な知見なのであれば、再現性が確認されることは大変重要だと思います。さて、これはビジネスになるのでしょうか。

それから、この話はNatureでも取り上げられていましたが、サルを使った25年がかりの実験で、カロリー制限は寿命を延ばさないという結論になったという話。下等生物ではカロリー制限で寿命がのびるというのは比較的確立された話ではないでしょうか。高等動物の以前の同様の実験ではサルでもカロリー制限で寿命が伸びるというデータがあったのですが、その実験ではコントロール群(カロリー制限をしない群)の食事が「不健康」でだった可能性が指摘されています。「健康的食品」を摂った場合、30%のカロリー制限をしたグループとしないグループでは寿命に差がなかったというのが今回の話。大切なのは量よりも質ということですかね。
コメント
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