百醜千拙草

何とかやっています

公然の秘密

2015-09-25 | Weblog
撞着語法というレトリックも「公然の秘密」ぐらいに陳腐で使い古された表現になってしまうと、その矛盾にさえ気がつかないようになってしまいます。国民にはおかしいと思うことでさえ、永田町にはそんな矛盾が多すぎて誰も疑問にさえ思わないことが多々あるようです。

「永田町では誰もが知っているが、誰も口にしないこと」を質問すると言って、8月の参院で、山本太郎氏は、2012年のアーミテージ レポートでの日本への要望項目とアベ政権の政策がほぼ完全に一致することを示して、アベ氏を追及しました。日本の政策はアメリカが決定しているということです。
時すでに遅しの感がありますが、ようやく、東京新聞が書きました。大手全国紙は書かないでしょうが、地方紙とは言いながら、東京新聞と中日新聞合わせて発行部数300万以上をほこる大手メディアです。聖教新聞を刷っているはずの毎日も最近は政権批判記事が多いように感じます。今回の戦争法案で、ひょっとすると創価学会と公明党が分離しようとしているのかもしれません。
 これで、永田町だけでなく国民がアーミテージらと日本の政府との関連を広く知ることになって、みんなが口にし出せば、日本もちょっとは変わるのではないでしょうか。
 しかも、この記事では「ジャパン ハンドラーズ」というかつては陰謀論者の言葉であるとされてきたキーワードさえ使ってあり踏み込んだ表現となっています。
 戦後、アメリカは日本人エージェントを操って日本を間接統治してきました。日本が高度成長期の間は、たとえ国民が真実を知らずとも、対米隷属は差し引きプラスであったかも知れません。しかし、現在では明らかにアメリカによる日本の間接統治システムが国民生活に悪い影響を及ぼしており、国民は本当のことを知った上で将来への判断をするべき時期であると私は思います。真実は知らない方が幸せなこともあるかも知れませんが、知った上で幸せになる努力をするのが人間というものです。この辺の内情を知らなかったころ、私はアメリカの日本に対する要望があまりに傲慢であることに憤っておりました。戦争は終わり、日本は主権を回復したはずなのに、何故だろう、と思っておりました。なんのことはない、日本は本当は主権など回復していなかったということだったのです。

以下、東京新聞から。

これからどうなる安保法 (1)米要望通り法制化 (東京新聞 - 9/22)

 
 他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を中心とした安全保障関連法が、多くの国民が反対する中で成立した。「戦えない国」を貫いてきた日本を「戦える国」に変質させる安保法の下、自衛隊の活動はどう変わるのか。国民にはどう影響し、日本はどこへ向かうのか。さまざまな角度から考える。
 「この夏までに成就させる」。安倍晋三首相は五カ月前の訪米中、米議会での演説で安保法成立を約束した。まだ法案を閣議決定する前で、国民も国会も内容を知らない段階だった。
 だが、集団的自衛権の行使容認を含む安保法の内容は五カ月前どころか三年前に予想できた。米国の超党派の日本専門家が二〇一二年にまとめた「アーミテージ・ナイ報告書」だ。
 アーミテージ元国務副長官、ナイ元国防次官補らが共同執筆し、日本に安保法の制定を求めていた。両氏は、一般に「知日派」と訳される「ジャパン・ハンドラー」の代表格。報告書の影響力からすれば、文字通り「日本を操っている」ようにも映る。
 報告書は日本に米国との同盟強化を迫り、日本が集団的自衛権を行使できないことを「日米同盟の障害となっている」と断じた。
 自衛隊の活動範囲の拡大や中東・ホルムズ海峡での機雷掃海も求め、南シナ海での警戒監視活動の実施も要求。国連平和維持活動(PKO)でも、離れた場所で襲撃された他国部隊などを武器を使って助ける「駆け付け警護」の任務追加の必要性を強調した。かなり具体的な内容だ。
 これらの方向性は、ほぼ安保法に網羅され、首相は集団的自衛権行使の事例として、ホルムズ海峡での機雷掃海にこだわり続けた。防衛省は安保法の成立前から、南スーダンでPKOを続ける自衛隊に駆け付け警護の任務を追加することや、南シナ海での警戒監視活動の検討を始めた。
 報告書では、情報保全の向上や武器輸出三原則の見直し、原発の再稼働にも言及。特定秘密保護法の制定、武器輸出の原則解禁、原発再稼働方針に重なる。安倍政権は一二年の発足以降、これらすべての政策を手がけてきた。
 「(安倍政権の政策は)そっくりそのままだ。こういうのを完全コピー、『完コピ』と言う。すべて米国の要求通りに行っている。独立国家と呼べるのか
 生活の党の山本太郎共同代表は安保法の参院審議で政権の姿勢を批判した。
 首相は安保法の運用に関し「政策は日本が主体的に判断し、米国の言いなりになるものではない」と説明。同時に「日米同盟が完全に機能することで抑止力が高まる」とも強調する。
 違憲の指摘にも、国民の反対にも耳を貸さず、集団的自衛権の行使容認に踏み切った安倍政権。米国から具体的な要求を受けた時、主体的に判断できるのか。報告書と、安保法をはじめとする政権の政策の関係を見る限り、疑問と言わざるを得ない。 (中根政人)


国民が真実を知って納得するのであれば、アメリカ先生のいう通りでも私はよいと思います。問題は、政府自らが、その国民を欺き、バレバレの嘘をつき、詭弁を弄するその態度であろうと思います。そのウソから議論を始めるので先に進まないのです。独立国だという建前から始めるからアメリカと交渉して落としどころを探るということさえできないのです。山本氏が「利権」と言った言葉に、アベ氏は妙に強く反応しましたが、図星を突かれたわけです。一族の繁栄は、日本国民ではなくアメリカのために働いてきたからこそ保証されたものだったでしょう。首相という地位にふさわしい能力をもつとは思えないアベ氏が二度も政権を担当している事実そのものがその証拠とも言えます。

もう一つ簡単に。先日のロシアとの外相会議がかなり不調であったというニュース。ロシア側は北方領土問題は話し合う気がないと断言したとのこと。早々と戦争法案強行採決の悪影響が出てきました。法案通過後、仮想敵国の例として中国を名指したコメントを出したアベ氏。中国政府は、これ幸いと反日政策に利用する格好の言い訳ができたと思っているかも知れませんが、法案通過後にもこのような馬鹿げたコメントを出すアベ氏のトンチンカンぶりに苦笑いしたでしょう。思うに、間もなく行われる米中首脳会談で、日本の立ち位置を思い知らされることになるだろうと思います。日中間の衝突が起きてもアメリカが日本を守るために中国と敵対することは現時点ではあり得ません。

続 壺 齋 閑 話、「岸田・ラブロフ会談の意味するもの」より。

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この会談は日本側から申し入れて実現したものだが、日本がこのタイミングで外相会談を呼びかけたのは、懸案の安保法案が成立したことで一段落ついた安倍政権が、気になりながらも手つかずにいた対ロ交渉再開と、できればプーチン大統領の訪日を年内に実現したいという思惑があったようだ。だがその思惑は、ロシア側の手厳しい反応によって、跳ね返されたというのが目下の現状と言えよう。
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だが、国際政治を冷えた頭で見ていれば、このロシア側の反応は十分予想できたことだ。ロシアとしては、今般の安保法制の整備は、日米の軍事同盟を一層強めるものであり、その矛先がロシアに向かうのではないかと懸念する理由は十分にある。クリミア併合やウクライナ問題を巡って、ロシアはアメリカと大きな緊張関係にある。そこへもってきて、日本が安保法制を整備してアメリカとの軍事的一体化を更に進めるという事態は、ロシアにとって決して面白いことではない。
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ロシアとしては、日本が対米従属の状態から卒業して、一人前の自主国家になれば、まともな交渉に応じもしようが、いつ何時アメリカに振り回されて、一緒になってロシアを攻撃するかもしれない国に、いつもいい顔を見せているわけにはいかない、というわけで、これは別にロシアびいきでなくとも、国際情勢をまじめに見ていれば子供でも理解できることだ。

しかし安倍晋三政権はそうは思わなかった。こちらから下手に出ればロシアと雖も、会談に応じるばかりか、領土問題についての交渉にも乗ってくれるだろう、と考えたわけだ。これはいつもながらのことだが、安倍政権の唯我独尊と言うか、小児病的な体質が現れたものだと考えられる。現実を願望と取り違え、自分の言い分を一方的に主張するというのが小児病の主なシンドロームだが、安倍晋三政権のやっていることは、まさにそうした類のことだ
コメント
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