百醜千拙草

何とかやっています

コロナのあと(3)

2020-04-27 | Weblog
コロナによる行動の制限のせいで、単調な生活が続いていますが、それなりに楽しんでいます。どうも私は、単調な生活の方が向いているようで、今回はまとまった時間が取れるのを幸い、いろいろオンラインの教育コースを試しています。 主に利用しているのは、200コースほどあるHarvard Xのオンラインコースで、内容も充実しており、ほとんど無料ということもあって、興味のある分野のレクチャービデオを毎日、数本ずつみるようにしています。システマティックにトピックがカバーされており、構成がよく、それぞれ10分ほどの短いビデオなので、集中力も途切れません。簡単な演習問題が折々に挟まれており、要点を簡単に復習できるのが素晴らしいです。この自宅待機の中の短い時間で、かなり多くのことを学びました。自分で教科書を読むよりも少ない努力で要点が理解できます。他にはUdemyも以前に3つほど安くなった時に取りましたが、これもよかったです。こうした教育の機会が無料またはわずかな料金で提供されているのは素晴らしいとしかいいようがないです。しかも、それぞれのビデオは結構な手間をかけて効果的な教育成果をえられるように考えられて作成されているようです。

私が学生のころは、オンライン講義などありませんでした。大学での私の向学心は最初の授業で延々と各臓器の名称をラテン語と日本語でひたすら読み上げ続けるという講義を受けた時に打ち砕かれました。大学教官の使命は研究と教育でありますが、どうしても研究優先になるわけで、教育に熱意をもつ教官は少ないだろうと思います。アメリカなどでは、研究教官と教育教官を分けて役割を分担させるというシステムをとっている大学も多いと思います。というのは、研究教官が研究に専念し成果を出して研究資金獲得していかないと、大学としての機能が維持できないからです。一方教育教官は授業料を払う学生に満足してもらえる教育の提供に集中します。

今回のコロナを機に大学の教育はオンライン中心に見直されてもよいのではないかと思いました。とくに一定の質の内容を多くの学生にユニフォームに学習させる必要がある医学教育のような実学教育では、教育の専門家がコンソーシウムをつくって同じ内容のビデオ講義によって一律に医学生の教育をすれば、教育のコストと無駄を省き、教育の質を上げることが可能だと思います。また、ビデオ講義は医師の生涯教育にも役立つでしょう。独自の専門的知識は大学院などで学ぶなすればよいのではないでしょうか。

大学では教官は基本的に研究と大学院生の指導に集中すればよいと思います。教育は実習以外はオンラインの方がよいのではないでしょうか。理想的には大学はオリジナルな研究をすることによって人類の知の蓄積に貢献することを第一の使命とすべきだと思うからです。

学生時代にあまり勉強熱心でなかった私が言うセリフではないかも知れませんが、学生の半分が欠席して、出席した半分は居眠りしているような講義がすくなくない大学教育に問題があるのは誰もが思うところでしょう。これは日本だけの話ではなく、知り合いの大学の語学教官に聞くと、高い授業料を払っているのに彼らが欲しいのは知識ではなく、卒業証書だけだとこぼしていましたから、若者が大学に求めているのは教育そのものではなさそうです。実際、大学教育は、学生にとってはモラトリアムの数年を楽しむ方便であったり、親にとっては、子供をそれなりの職につかせるための投資であったり、大学にとってはビジネスの一つであったり、企業にとってはまじめに試験勉強をがんばれる忍耐力を持つ人間を選別するための手段であったりする、というのが現実でしょう。たしかに、大学に行くことは、研究と教育とは別の側面があるのは間違いないですけど、研究と教育の場であるという大学の本来の機能に立ち返れば、何も毎日物理的に体を講義室まで運んで居眠りして高い授業料を払う必要はないです。質の高いオンライン教育ビデオが無料で見れる時代なのですから。 

図らずも今回のコロナによって、教育のありかた、働き方のありかた、そして何より社会のシステムのありかたが、根本的に変わる可能性があるのではないかと、不謹慎ながら、私は不安よりワクワク感も感じております。
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