百醜千拙草

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治療のアプローチ

2020-11-03 | Weblog
前回の心不全治療の問題、問題にtypoがあり、それが正解の一つであったので、訂正したいと思います。SLG2ではなくSGLT2阻害剤です。医療関係者の方は気づかれただろうと思いますが、誤った問題になってしまい申し訳ありません。問題が間違っていたので、全員に10ポイントをプレゼントします。ポイントで「スガの国会質疑での回答拒否を許すな」とツイートしてください。国会冒頭から疚しいことをしているからマトモに答えられない。しかし、アベのような「ご飯論法や論点ずらし」を弄する能力もないから、回答拒否するしかない。下には下がおります。すでにパンチドランカー状態。

さて、多分、SGLT2阻害剤が心不全に効くという話は最近の話ではないかと思います。糖尿病治療薬としても比較的新しいものですし。長期的効果については不明です。長期的に予後をよくするかどうかは実際に何十年とフォローしないとわからないでしょう。しかし、そろそろ私も、人生を長期的に考える必要もなくなってきたので、ま、いいかと思って飲んでます。
 ちなみに後の心不全に対する二剤は、アンギオテンシン受容体阻害剤と抗アルドステロン剤でした。昔は、カルシウムチャンネル阻害剤が、降圧、不整脈、心不全に広く使われていましたが、今は、どうも少なくとも心不全には使われないようです。というのも、この数十年の間にカルシウムチャンネル阻害剤は長期的予後を改善しないというデータがでたからで、かわりに、昔は、オマケのようにつかわれていたレニン-アンギオテンシン系の阻害剤が今は中心的薬剤になっているというのも面白いです。糖尿病治療がこの十年ほどの間に劇的に変わったように、高血圧、心不全の治療も激変しているようで、患者にしてみると混乱しますね。
 抗アルドステロン剤については多分、不整脈対策でカリウムチャンネル阻害剤を飲んでいるからだろうと思います。抗アルドステロン剤は利尿効果に加えカリウム保持効果があります。低カリウムで稀に起こるフランス語で「ねじれたピーク」という名の有名な致死性心室性不整脈があり、それを予防する目的ではないかと思います。

ところで、糖尿病薬と言えば、最近はちょっと細胞エネルギー代謝に関係した研究もしています。メトフォルミンは古い薬で、三十年前は糖尿病治療薬としては4-5番手ぐらいでしたが、近年、立場を挽回しているようです。これは、ミトコンドリアの電子伝達系をブロックしATP産生効率を落とし、AMPKの活性化などを通じて解糖系を上げて、血中のブドウ糖の細胞内取り込みを増やして血糖を下げると考えられています。つまり、インスリンの経路とは独立して糖の取り込みを増やすとかんがえられます。結果、ミトコンドリアに流れるはずの解糖産物であるピルビン酸は乳酸に代謝されるので、乳酸アシドーシスを起こすことがあります。理屈上はミトコンドリアの電子伝達系にエネルギー産生を大きく依存する脳や心臓には悪いと思われ、実際、心不全には禁忌とされていましたが、実はメトフォルミンは心臓にも良いという話も出てきています。
 その古い薬のメトフォルミンが再び糖尿病治療の前線に出てきたのは、糖尿病治療概念でのコペルニクス的転換があったからだろうと想像します。糖尿病治療のゴールは血糖値を正常に保つ、に尽きますが、そのゴールを目指すアプローチにはいろいろあって、昔はインスリンを叩いて出させる治療が主体でした。これは2型糖尿病では、そもそもインスリン抵抗性のある状態で、力ずくでインスリンをさらに出させるので、長期的に膵臓を疲弊させ、病態を悪化させることに繋がります。その長期的な問題への反省や新たな科学的発見からこの10ー20年で糖尿病治療が変化してきたのだと思います。

10年後は、またガラッと変わっているかもしれません。人間の体はテクノロジーや医学の変化よりもはるかに進化が遅いので、治療に体を合わせるのが大変です。そうこうしている間に寿命が来ますから、ま、いいですけど。
コメント
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