百醜千拙草

何とかやっています

忘れ去られた人々

2020-11-13 | Weblog
ちょっとタイミングを逃してしまいましたけど、アメリカ大統領選の話。
トランプはいまだに負けを認めず、近年concession speechをしない初めての候補となりそうで、見苦しいことこの上ないですけど、どう足掻こうとも、トランプは来年の1月21日までにはホワイトハウスを強制退去になるのは間違いないと思われ、トランプ政権の終わりがまず確定したことは喜ばしいことだと思います。

今回の選挙で、それでも、これほどトランプを支持した人がいたことに私は驚きました。四年やらせて、トランプがどのような人間なのか、いい加減わかっただろうと思うのですが。そもそも、持たざる白人たちの不満に手を突っ込んで分断を煽り、虚像によって人気を得て大統領選に担ぎ上げられ、実際に大統領になってしまったわけで、加計学園獣医学部と同じで、本来、トランプ大統領はできてはならないものでした。その結果、四年でアメリカの評判は落ち、格差や差別は広がり、コロナは収束せず、と予想された結果になりました。にもかかわらず、トランプを支持した人はかなりの数に昇りました。かれらは「持たざる白人」、下の町山さんの言葉に従えば「忘れ去られた人々」だったのでしょう。忘れ去られて無視された人々に偽りの希望を与えたのが四年前のトランプであり、今回の選挙でもバイデンに希望を見出すことができなかったということでしょう。

さて、この数年、世の中がおかしい方向に平気でどんどんと動いていっていましたが、この一年でついに底の岩盤に打ち当たったように感じます。確信したのは、大阪市廃止の住民投票で僅差で否決された時です。維新人気はトランプの人気と基本は同じです。トランプや維新は、人々の不満をあおり、Status quoを挑発的に乱暴な言葉で否定することで、不満を持った人々を扇動しました。その行き詰まり感に満ちた「不満」という共通項でつながった人々は新興宗教の信者のように、扇動者に追随し、トランプ政権や維新という歴史の徒花を作り上げましたが、できるべきでなかったものが時間と共に力を失い消えていくのは必然です。ようやくそのプロセスが始まったと思います。

よくなる前には、溜まった膿や汚物が出ることで、いろいろ一見わるいことが起こるように見えます。それがこの一年でした。維新の大阪市廃止が否決され、トランプが落選しました。スガ政権も長くはないでしょう。

さて、話もどって大統領選、4年前にトランプは持たざるアメリカ白人の不満を煽って当選しました。確かに、アメリカ白人の不満は現実のものです。町山智浩さんがトランプ支持者をうまく表現されていました。 
忘れ去られた持たざる白人たちは、自分の力だけではどうにもならない閉塞感と社会に対する恨みを抱えて生きてます。メインストリームの裕福な共和党構成員からは下に見られ、民主党のインテリからは相手にされず、かと言って民主党の大きな支持基盤である都市部のヒスパニックや黒人には差別意識を抱いていて、差別の隙間で誰からも相手にされず、苦しくなる生活に不満が蓄積していきました。その不満を解消してやろうと出てきたのがトランプでしたが、トランプの真の目的は、オウム真理教の教祖同様、それを利用して扇動し、権力を手にいれて自分を英雄に祭り上げようとするただのエゴイスティックで醜いものでした。

しかし、不満と閉塞感を抱えた人々は、そこに希望の可能性を感じたのでしょう。まして、他にすがるものもなければ、騙されているとは薄々感づいていても、却って意固地になって一縷の望みにかけようとするものです。トランプの支持者の大勢は、そうした誤った信仰の中にいたのかも知れません。かつてのオウム真理教のように。

トランプがどういう人間なのかは、最初の大統領選に出る前から、多くの人々は知っていました。TVタレント時代にミスコンの審査員のトランプの振る舞いを揶揄ったワイドショーホステスのRosie O'Donnellを口汚く罵った事件では、その低劣な人間性に多くの人が辟易としました。そんな人物を共和党は選挙に勝つという目的だけのために担ぎ出したのです。共和党はマッケイン以降の人材の枯渇によって本来なら勝てる選挙に出せる有力候補がなく、四年前にトランプのポピュラリティーを利用しました。結果、喰らった毒は共和党にも悪影響を及ぼし、共和党内でもトランプを表立って批判する人々が続出しました。

バイデンに魅力があったわけではないし、民主党に期待したわけでもなく、今回の選挙はトランプという毒をアメリカの政治から追い出し、decencyを回復するための選挙でした。トランプという毒のおかげで露わになったアメリカの問題に対峙し、そのマイナスをゼロに戻して行くための選挙ではなかったかと思います。そういう目でみれば、溜まった膿の自壊を促すためにわざわざ注入された毒がトランプであったとも考えられます。いずれにしても、その役割は終わりました。同様に、維新もアベ・スガ政権も役割は終わったと思います。毒は必要以上に存在するべきではありません。今後、忘れ去られた持たざるアメリカ白人はどうなるのか、バイデンが再選もしくはバイデンの代わりの民主党候補が四年後の選挙で勝つかどうかは、彼らの不満をどう和らげていけるのか、彼らにどう寄り添うのかにかかっているのではないだろうか、と思います。さもなくば、共和党は第二のトランプを出してくるでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする