ちょっと前の6・24号のNatureのフロントページ。アメリカの公的研究資金は医学、生命科学はNIH、その他の基礎科学、物理、化学などはNSFが主な供給機関となっておりますが、今回、アメリカ議会上院でNSFなどへの科学研究にかなりの額の予算増大が可決されたとのニュース。NSFの年間予算はおそらく$10 bilぐらいかと思いますけど、今後5年でNSFを中心に$120 bil の予算がつくとのこと。
研究者にとっては喜ばしいことです。
が、その動機はどうも対中国。この予算案はいくつかの条件の上に可決、その一つが中国がアメリカの知的財産を盗用、不正利用することを防ぐための条項でした。
近年の中国共産党政府率いる中国に対するアメリカの警戒感は相当なもので、アメリカ永住権を申請中の知り合いの中国人によると、トランプ以降、審査がストップしていてどうなるかわからないとの話。バイデンも中国への警戒は強く今後の米中の政治的対立は続くような感じがします。
ひとつには、コロナウイルスの研究所流出疑惑があると思います。武漢には武漢ウイルス学研究所(WIV)という研究所があり、そこでのウイルス研究にアメリカのNIHの資金も使われて共同研究が行れていたということを複数のアメリカ一般紙がしばらく前に記事にしたことから、COVID19のコロナウイルスは中国が作った生物兵器だという陰謀説が広まったことがあると思います。私、個人的にこの説の一部は本当ではないかと思っています。生物兵器の開発であるとか意図的にばら撒いたということはないと思いますけど、ウイルスが研究所由来である可能性は高いのではないかと思います。
武漢での中国の初期行動は非常に迅速でした。WHOが新型コロナウイルスによる新しい疾病を確認するやいなや、武漢に患者を隔離する病院を突貫工事であっという間に新設し、都市封鎖をして封じ込めを図った中国は、このウイルスの危険をあらかじめ知っていたかのようです。また、WIVのホームページの情報によると、COVID19より前に抗コロナウイルス薬の開発基礎研究をアメリカと共同で行った論文も出版されています。ということは、WIVではおそらくSARSやMERSのようなコロナウイルスによるepidemicを予測してコロナの研究が行われていたと考えられ、ひょっとすると今回の新型コロナは、WIVでのコロナ研究のために、偶然または意図的に今回のウイルスをコウモリから単離していたのかも知れません。つまり、WIVでの研究材料としてたまたま単離したウイルスが事故によって研究所外に流出したという可能性です。中国がアメリカの資金を使ってこっそり生物兵器を開発していたということでは多分ないし、意図的にばら撒いたということでもないだろうと私は思います。あるいはWIVはまったく無関係かも知れません。
いずれにせよ、近年の中国共産党の強権的な振る舞い、香港での中国政府の行動、中国統一の野望と台湾侵攻の可能性などを考えると、アメリカが中国を強く警戒するのは理解できます。加えて、人間は感情の動物で、トランプがチャイナ ウイルスと連呼し、中国起源のウイルスだというだけで、アメリカでアジア人全体への差別が広がったぐらいですから、議員や専門家であっても中国への警戒心は感情の領域でも大きくなってきたのだろうと想像できます。
そう思うと、中国共産党がこれからも強権的な独裁的政治を追求していくなら、米中の対立の緩和は遠いと思います。その迷惑を被るのは普通の中国の研究者や学者、それから彼らと共同研究しているアメリカの研究者でしょう。
ちなみに先日の中国共産党結党100年記念に、日本共産党は祝辞を送りませんでした。日本共産党の志位委員長は、民族虐待、言論弾圧の独裁政権の中国共産党を「共産党」の名に価しないと強く批判。一方、自公幹部は祝辞、立民も儀礼だからと言い訳しながら祝電を贈ったとのこと。