百醜千拙草

何とかやっています

生き残り戦略

2021-07-23 | Weblog
昔からの研究仲間の知り合いと久しぶりにあったので雑談。彼は医学部時代にロックバンドをやっていた人で、最近、二十数年ぶりに再結成してコンサートをやったという話を前に聞いていたのです。そのコンサートがLP(ビニールの円盤)、CD、それからカセットになって出たということでした。ファンは昔の人なのでLPとかカセットがいいのだそうで。本人は下腹が出てきて頭の毛も薄くなっているのに、さすがかつてはグラム系、ジャケットの写真は別人。

調子はどうだ、というので、パッとしないよ、と答えると、私が去年、体を悪くしたのを知っていたので、体調を心配してくれたのですが、いやパッとしないのは研究の方、というと、笑って、まだ研究のことを気にしているのは立派だ、と言われました。別に皮肉でも何でもなく、彼にとって、研究とは、まず第一にメシの種なのだということです。いくら好きでやっている研究といっても、生活も家族もあれば、まず生活の糧を得るという部分を疎かには出来ません。食っていくことは優先条件です。優先順位がしっかりしていると計画が立ち、余裕ができます。余裕がなければ何事もうまくいきません。彼がずっと努力してきたこと、何度か理不尽な危機に見舞われ、その都度、困難を乗り越えてきたことは知っているので、彼の研究に対する情熱は疑いないものですけど、情熱があるから成功するというものではないですし、成功するためには、まず継続できなければならないという前提があります。彼はそのためのストラテジーを冷静に考えてきたから生き残っているのでしょう。

残念ながら、それなりのポジションがあって、希望すれば誰でも研究でメシを食っていくことができるというような時代ははるか昔に過ぎ去ってしまいました。私が研究に興味を持った若い時は、野心も将来の希望も時間も体力もありましたけど、先のことまでじっくり考える能力はありませんでした。そのまま研究の世界に入って、ある日ふと気がついたら、先に見えるのは暗闇で、振り返ると、昇ってきた梯子はすでに無くなっていました。若い時に長期的なプランや戦略を考えておくべきだった気づいた時には遅すぎたのでした。ま、今となっては、どうでもいいことですけど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする