西洋、インドの占星術によると、昨年末に240年続いた「地の時代」が終わりを迎えて「風の時代」に突入し、これからは、物質的なものが尊ばれた時代から、より精神的なものが尊ばれる時代になるのだそうです。占いというのは私は当たった試しがないのですけど、歴史を振り返れば、時代には波や周期があり、ミクロな視点ではカオス的なブラウン運動をしているようにしか見えなくても、マクロで見ると結構はっきりしたアトラクタを指して世界はコヒーレントに動いているように見えるもので、個人のレベルで占いは役に立たなくても、世界全体のレベルでは有用なのかもしれません。
振り返ってみれば、直近の「地の時代」の始まりの240年ぐらい前は18世紀の終盤で、ちょうどヨーロッパで産業革命が始まったころです。産業革命によってモノを作る技術と規模が拡大し、人々の物質的豊かさへの追求が増大し、植民地主義から世界大戦へ、そして環境破壊、経済戦争、拝金主義社会と繋がったと言えます。物質的な豊かさやさまざまな技術の開発は急激な人口の増大を来たし、増加した人々は高エネルギー消費型の西洋的ライフスタイルを好み、飽くなき物欲は、結果地球環境を激しく破壊し、森林は農場化のために焼き払われ、山は希少金属をもとめて掘り返され、海洋は放射能やその他の有害物質によって汚染され、化石燃料の燃焼によって大量に放出された炭素は森林による固定化が追いつかず、温暖化にともなう海水上昇は低地帯を海底に沈め、億単位の人々が難民化すると予想される状況になっています。
個人のレベルで言えば、科学の進歩は驚嘆すべきもので、膨大な人々の努力が物質レベルでのこの世界の成り立ちを解明し、それに応じて人々の生活を向上すべく、科学知識は技術に応用されて、われわれの生活は便利になりました。いまだに折々に目にする素晴らしい科学研究の成果には単純に感動しますけど、物事には両面あります。科学はその他もろもろの人間の活動、音楽や芸術などと同様に人間の知的生活を豊かにするものではありますが、それが技術へと応用され、資本主義と結びついて、ある特定の目的のために追求されだすと、さまざまな弊害を産みます。そして事実、地球レベルでみれば、各個人の物質的な豊かさへの欲は上に述べた通りに、地球環境の激しい破壊に至りました。
ある人が、夜のロスアンジェルスの灯りを飛行機の中から眺めた時、その広がりがまるで正常組織へと浸潤していく悪性腫瘍のように見えたと述べました。地球を人間の体だと例えると、その隅々まで入り込んではコロニーをつくり、己の生存と欲のままに増殖し、周辺の環境を破壊していく現代の人間は、確かに悪性腫瘍細胞のふるまいにそっくりです。結局、ホストの体を滅ぼして自らも滅んでいく腫瘍細胞の姿が人類の未来と重なります。
とすると、その悪性細胞を抑え込むための腫瘍免疫に類似のメカニズムも地球にはあるのかも知れません。コロナのパンデミックが風の時代の幕開け前に起こったのは、地球の歴史というマクロな視点からみれば、それは地球の免疫反応、あるいは警告であったと後々、解釈されるようになるかも知れません。コロナに限らず、地球の各地での異常気象の増加は、これまで以上に地球に負荷がかかっているということそ示しているようです。
もちろん、「地の時代」の唯物主義の物質世界で育った人々は、地球の意志とか地球の免疫システムとかいうと鼻で笑い飛ばすでしょうが、現実に人類は、自らの行いの報いとして、すでに目の前に破滅的な未来を突きつけられているわけです。誰かが何とかしてくれるだろうと全員が楽観的に考えて、このまま突き進んだら50年後はどうなるでしょうか。じっくり考えたあとで、幸せな未来があると予想できる人は少数ではないでしょうか。
幸い、このコロナパンデミックで、人間の活動は抑制され、それに伴って、われわれは急激な環境の改善を目の当たりにしました。飛行機が飛ばず、車が減った都会の空は澄み渡り、良質の蜂蜜が沢山とれるようになりました。人間が活動を抑制すれば、地球は回復する力を持っていることが示されました。コロナを地球からの警告であると捉えて、人間が利己的な活動を自主的に抑制していけば、地球は警告を解くことでしょう。ま、このように擬人的に考えなくても、人間が一斉に活動を抑制すればコロナは行き場を失って終息するはずです。
幾何学の問題を解く時に引く補助線のように、地球の意志をいうものを仮定してみると、われわれが、どう問題を解決するべきか、人がどう生きるべきかが見えてくるように思います。時代を「地の時代」とか「風の時代」とかに区分するのも補助線のようなものだと捉えれば、ただの占い以上の意義があるのかも知れません。