英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い というフランス人記者の書いた記事を読みました。
日本は112カ国中78位――。近年、さまざまな指標における世界での日本のランキングの低さが話題になるが、ついに「英語力」も下から数えたほうが早くなってしまった。11月16日に発表された、EF英語能力指数(EF EPI)において日本の順位は2020年の55位から大幅にランクダウン。2011年の14位からは急落している。ちなみに、隣国の韓国は34位と日本から背中すら見えない状態だ。、、、
官僚主義の狂気を描いた、フランツ・カフカの小説の主人公が今や成田空港における手続きを担当しているようにすら見えた。審査官らは英語が苦手で、ほとんどの手続きを外国人スタッフに頼っていた。、、、「今の日本に本社の役員を招くことはとてもできない。こんなプロセスを経させたら会社はすぐさま日本への投資をやめるだろう」と、このフライトに乗っていたあるフランス人は嘆く。
今や外国企業は工場やオフィスの設立場所を決める際に、日本を迂回するようになっている。中には北東アジアの本部を日本から韓国に移した企業もある。、、、かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う。日本におけるほとんどの市場が縮小しているため、日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている。、、、フランスにとって日本は今や、二流の国になっている。真の意味での国賓訪問は、8年前の2013年に当時のフランソワ・オランド仏大統領が訪日したのが最後だ。、、、日本は、東京オリンピックを開催したことで、世界の中心にい続けられると思っているかもしれない。しかし、1964年に東京で開催された壮大で革新的な大会のような重要性は、オリンピックにはない。、、、日本政府はまた、2025年に大阪で開催される万博も桁外れに重要視している。、、、しかし、世界的な博覧会は、今や開催国以外では誰も気にとめないローカルなイベントとなっている。日本人で誰が、現在ドバイが万博を開催していることを知っているというだろうか。、、、(引用 終)
と日本の国際社会からの後退、先進国グループからの脱落を指摘する記事。いまや、日本の若者に大志と夢を持て、というのが無茶な世の中になっている中で、誰が苦労して外国と交際しようとするでしょうか。海外進出してビジネスを拡大していこうとする成長期は遠く終わり、海外企業は日本を見捨て、日本企業は競争力を失っている状況で、人々が攻めではなく守りに入り、外国に興味が向かなくなるのは当然だろうと思います。
日本人の英語能力は確かに高いとはいえませんけど、それは日本語という言語の特殊性が大きいでしょう。語学の習得は語彙と文法の知識に加えて実践練習のための努力と時間が必要ですが、近縁の言語を学ぶ場合と言語の語彙も体系もかけ離れた言葉を学ぶ場合では習得難易度は数倍になります。例えば、英語話者がスペイン語やフランス語を習得するのに必要な時間が600-800時間と言われているのに比べ、日本語だと2200時間と3倍かかります。この逆も成り立つとすると、日本人が英語をそこそこ使えるようになるのには、週に5時間、年に9ヶ月やったとして、年間180時間、中高の6年では半分にも足りません。政府が本気で日本人の英語力を上げたいと思っているなら、週に10時間ぐらいのプログラムを組む必要があると思います。日本人全員が英語が使える必要はないし、必要なら一日2時間毎日やれば2-3年で問題ないレベルに達するので、英語は高校からは選択制にして選択者は授業時間をふやせばいいのではないでしょうか。
しかし、問題なのは、語学教育システムではなく、言語習得へのモチベーションが低く、外国と関わりたくないと思わせるようになった日本の社会そのものです。今の日本は、政治の無能と腐敗によって、経済成長が止まったあとの30年間、その維持と安定に失敗したばかりか、政治の著しい劣化と腐敗が進み、経済成長の間に貯えた国富を売っては一部の人間の利益に付け替え、国民の生活より一部の特権者の利益を優先してきたために、驚くべきスピードで二流の貧困国へと転落していこうとしています。加えて、超高齢化社会という喫緊の問題を抱えています。こんな状況で、どうやったら若い人が将来に希望をもって外向きに発展的な態度でいられるというのでしょう。彼らにとっては語学習得に投資して外国と積極的にかかわるのはメリットよりもリスクの方が大きいとしか思えないのではないでしょうか。もっとも、これからますます日本が貧しくなって、外国に活路を見出すしかないと国を脱出する人々が増えれば語学能力はあがるかも知れませんが。
私、個人的には、国内で自給自足ができるようになり、人々がそれなりに幸せに暮らしていけるようならば、日本が多少内向きになるのは悪いことではないと思っております。超高齢化が終われば、人口激減がはじまりますけど、それは高度成長のツケでもあります。みなが一斉に成長すればみんな一斉に老化するのです。老化が進んでいるのにいつまでも「成長戦略」しか考えられない与党政府はすでに脳が老化している証拠でしょう。老人が語学を学ぶモチベーションや外国との付き合いへの積極性を失うのは当然のことで、日本がこうして「ランキング」を落としているのは日本がそういう時期だからだと思います。この衰退期が終われば安定期に入り、またそのうち昇り調子の時期がやってくるだろうとは思いますが、その時には是非、過去に学んで、今日の痛い経験を生かしてもらいたいと思います。