この間の科学論文出版業界を皮肉った動画の続編がアップされていたので、紹介。
It’s not about the money pic.twitter.com/sPW2qHvtXy
— Dr. Glaucomflecken (@DGlaucomflecken) February 16, 2022
これは、主に税金を使って行われた研究成果の発表の場を提供している商業雑誌が、購読料、掲載料を研究者から集め、研究者の編集労力を無償で利用してビジネスをするアカデミア出版の不条理についての風刺ですが、こうした商業雑誌が年間、20 billion $レベルのビジネスであり、その利益率は40%にも上がり、グーグルを越えている、という話が出て驚きます。これが本当だとすると、あくどい商売にしか聞こえません。この場合はお客が納得して非常識な額の掲載量を払ってNatureブランドを買うわけですから、ぼったくりバーとはわけが違いますけど、Natureに掲載料を払うのは、銀座の一流店のホステスに貢ぐのと同じようなものでしょうか。普通の感覚では理解できない論文出版のビジネスに研究者がなぜ金を払うのか、と理詰めで問いかけられて、最後は涙目で、「金の問題じゃない」とつぶやかざるを得ないところが同情を誘いますね。
私、NatureもScienceもフロントページの記事が楽しみで購読していますけど、この二つの雑誌には基本的姿勢に違いがあると思います。Natureは商業雑誌、金儲けを目的の一つにしています。一方、もともとエジソンとベルの資金で始まったScienceはその後、非営利団体であるAAASが引き継いだ団体機関紙であり、基本的にはメンバーのための雑誌であって、メンバーシップ費を引くと購読料そのものもNatureより安いです。この違いを考えると、Natureは銀行、Scienceは信用金庫に喩えられるかも知れません。つまり、銀行は銀行の金儲けのために顧客と取引をするが、信用金庫は組合員の利益のために金融支援をするという目的の相違が、商業雑誌と非営利団体機関紙との関係に似ているように感じます。
主に税金をつかった研究が論文になるいう点からもアカデミアの論文は、大学紀要やPNASなどの非営利団体の機関紙、PLoSやeLifeなどの非営利雑誌、で発表されるのが望ましいと私は思います。日本からNatureに論文を載せれば、日本の税金が間接的にイギリスの一商業出版社に流れるのです。
Natureのフロントページの記事には購読料を払う価値があると私は思いますけど、Natureが学術論文発表の場である必要はなく、むしろ、サイエンティフィック アメリカンやニュートンやかつての朝日科学のような二次情報の発信にフォーカスした雑誌になった方が私にとっては嬉しいです。