週末は5年ほど会っていなかった昔のポスドクだった人がサプライズでやってきました。現在は遠方の病院の形成外科のプログラムの4年目だそうで、会議でこちらにくる機会を利用して立ち寄ってくれました。この人とはほぼ音信不通になっていたのに、昨年の年末に突然、クリスマスと新年の挨拶をテキストしてくれて、不思議に思った覚えがありました。私もその時は型通りの返信をして忘れていました。
髪の毛がショートになっていて、髪型が変わったのでわからなかったというと、「ケモしてたから」と言われてビックリ。二年前に卵巣癌が見つかって治療中、とサラリと言われて、何を言えばいいのかと思っていると、私にテキストしてくれたときはちょうどケモのコースの途中だったと言われました。病気が見つかったあと、ひょっとしたら死ぬかもしれないという気持ちと向き合うことを強いられた結果、「自分の命は贈りもの」だという啓示を得て以来、心は穏やかになり、体が元気だった時よりもはるかに幸福を感じれるようになった、と話してくれました。それで、ケモの合間にふと私を思い出してテキストをしたのだと。「禍福はあざなえる縄の如し」というのが適切な表現かどうかわかりませんけど、この困難によって彼女は心の平安を得る切っ掛けになったと言うなら厄災にも良い意味があったということです。いずれにしても、今は幸福で充実した日々を送っているらしいことを知って嬉しかったです。今後、形成外科医としてのキャリアを目指す彼女はニッコリと笑って抜け出した会議に戻って行きました。
その余韻が残っていた中、カレンダーに見慣れぬZoom会議の招待。何かと思えば、これも五年以上も顔を見ていない10年以上前にウチで働いていた技術員の人に関係したことでした。彼女は有名大学卒業後ウチに来て技術員として2年弱働いてくれました。もともと大学院へ行って獣医になりたいと言っていたのですが、勤め始めて一年ぐらいのとき、ちょうど母親に末期肺がんが見つかり増した。思うところあったのでしょう、技術員を辞め、予定を変更して看護学校に行き始めました。その後はとある大学病院の手術室担当のナースとなったという辺りまでは知っていました。そして昔の知り合いと結婚し、数年前一度、顔を見せてくれた時には医学部に行こうかと考えているという話を聞きました。今回は、どうもとある大学の大学院 (PhD)に応募したらしく、その入試の面接官が私を面接に招待したようです。過去に何度か就職の時に推薦状を書いたことがあるので、きっと私を推薦者として応募書類に書いたのでしょう。一緒に働いたのはもう10年以上の前の話だし、この大学院入試に際して推薦状を書いたわけでもないし、ましてその面接に私が顔を出すのも場違いと思うので、この招待は見なかったことにしようと思います。
ところで、このカレンダーにスケジュールを送るやり方というのはどうも馴染めません。カレンダーを常に使っている人は便利だと思うのでしょうけど、私のような人間はスケジュールが送られていることに気が付かず、当日に警告メッセージがいきなり出てびっくりします。
彼女の人生も波乱万丈です。当初は獣医学の研究をする予定でした。しかし、母親の深刻な病気と死がその予定を変え、そして紆余曲折の10年以上が経ってから大学院に戻ってきました。その間、ナースになり、結婚し、病院で昇進し、いろいろなことが有ったのだと思います。
同じように時間が過ぎていく中「人生いろいろ」だな、と自分の平坦な人生を思いました。私の人生が平坦だから、きっと、彼女らもふと思い出して何かのついでに会いにきてくれたりするのでしょう。