論文リバイス、ぼちぼちやってますが、モチベーションがわかず牛の歩み。データをとってくれた人は急病で入院中、頼る人もいないので自分でデータを掘り起こし、解析をやり直したりしています。
今回のリバイス上での問題は、論文の統計の部分をレビューした統計専門家に実験生物学研究の理解が乏しいそうなことです。多分、臨床研究とかpopulation geneticsとかでの「考え方」を実験生物学にそのまま当てはめてしまっているのでしょう。しかし、言っていることは間違っている訳ではないので厄介なのです。
統計を行う目的というのは研究や実験の内容によって異なりますから、目的や背景を無視して手法の厳密や原則の正しさにこだわるのは、例えてみれば「手術は完璧だったが患者は死んだ」みたいな状況に多少近い、と言えばいいでしょうか。とはいえ、結果オーライなら手段は問わない、意味が乏しいなら適当でいい、というのでは科学ではありませんから、厳密さを求める態度を批判することはできません。単に、異なる研究分野では、それぞれの「常識」の程度と範囲は違うので、今回のこの統計学者からの批判や提案は、我々の分野では非常識と思われる部分が多いということです。
とはいうものの相手はレビューアという権力的立場にあるわけですから、機嫌を損ねないように対応せざるを得ません。それで、こちらも実験生物学研究の実際をよく理解している経験ある統計の専門家と相談してきました。
感じたのは、厳密な数字の世界だと思った統計学の分野でも、数字をどのように処理するかは研究の内容や手法や目標をどう解釈するかによってかなりの柔軟性があるらしいということでした。また適用するのが理論的におかしい統計手法でも有用である場合は使用が黙認されているということでした。統計というのも何事かを評価するために人間が作り出した一つのツールに過ぎず、法律にグレーゾーンがあるように、現実社会では、理論と実際との妥協点を見つけて折り合いをつける必要から、恣意的な解釈がある程度許される部分が残されているのだろう、と思いました。
とういうわけで、今回は、下手に出つつも、「経験のある統計学者の人に相談した上でリバイスを行った」という事実をまず強調してから、反駁文を書くつもりです。ふつう、思考に柔軟性がない人ほど、権威に弱いですから、もしこのレビューアが経験不足からくる石頭なら、これでなんとかなるでしょう。それでもダメなら、エディターに直訴すればいいかなと思っています。エディターに常識があれば、度をすぎたコメントは抑えてくれるでしょうし。
おかげで統計の専門家と色々話ができて多少は統計の現場の実際面を学んだのは良かったです。実験生物学をやっている人も実験を計画する時に統計の専門家と話をしてみるのは大変有意義だと思います。数字の扱い方に自信が持てると思います。