百醜千拙草

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研究Quadrant

2022-11-29 | Weblog
RNA-seqは実験生物学では、ほぼルーチンと言って良いほどの実験手技となりました。その生データのpipeline解析は大抵、コア施設なり委託業者が行い、研究者の方は、Fastq fileかSpread sheet フォーマットまでプロセスしたデータから解析を進めるのが普通だと思います。しかし、Spread sheetのデータでさえ、ontology 解析やクラスタリングなどを行って、それなりの図表を作るのは実験生物学者にとっては厄介です。多くは「R」などでのパッケージを使ってコマンドラインでやることになると思いますけど、これも普段 R やPythonなどを日常的に触っていない人間にとっては簡単ではありません。

私もRNA-seqのデータ解析と図表の作成が一つ残っており、データのontology解析などを含む図表化に関しては業者のGenericな解析ソフトで作った図を使うつもりでした。しかし、これは便利ではあるのですけど、やはり出来合いのソフトにおまかせでは隔靴掻痒というか、思い描いたような図表を作れないし、微妙な調整(フォントのサイズであったりとか図の色や見やすさとか)ができず困っておりました。

そこへ、ツイッターで流れてきたpreprintで素人がGUI環境でできるRNA-seq解析ソフト開発のpreprint 論文が目に留まりました。ウェッブサイトもなかなか力が入っております。科学コミュニティーに貢献し人々の役に立とうとする善意の努力を感じます。発表から数日ですが、この論文はすでに900以上ツイートされています。

こうした努力には正直に頭が下がります。研究コミュニティーの人々の利便に貢献したいという意志を感じます。

研究活動での知見が直接、周囲の人々を幸せにすることは稀です。特に基礎研究はそうです。それでも誠実に実験を行って得た知識の一片を知識の大海に加えることによって人類の知に貢献すること尊いことだと私は思っております。仮にその努力が報われなくても、何らかの発見を行ったことに研究者自身が何らかの満足感を覚えるのであれば意義のあることです。このRNA-seq解析ソフトの開発のように、開発チームも研究コミュニティーも自他ともに利益につながる仕事というのは、最良の研究です。

一方で、研究コミュニティーの不利益には無頓着で自分の利益になりさえすればよいというタイプの研究者もおります。怪しげな低品質の論文を量産し、論文数だけ稼げばそれでいいというタイプの人です。悪貨は良貨を駆逐するの例えもありますから、低品質の論文というのはできるだけ投稿しないでもらいたいと思います。出版システムやピアレビューのリソースを無駄にするばかりでなく、怪しい論文が出版されることそのものが有害ですから。

最悪の研究は、捏造論文でしょう。マイナスしかありません。大体ハイインパクトな研究であれば、捏造はまずいつかバレます。日本でも自殺者まで出したスキャンダルが八年前にありました。結局、幸せになった人は一人もおらず、人類の知に何の貢献をすることもありませんでした。

正直で誠実であることは、幸せになるためにまずは遵守すべきルールであり、コミュニティーや社会の人々に対する善意は最終的な成功(単に金とか地位という意味ではなく)の秘訣であろうと感じます。
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