前々回、アメリカのAffirmative actionについての最高裁の判断を聞いて、思ったことを書こうをしましたが、本題に入る前に長くなって途中で終わっていました。今回はその続きを少し。本題は、日本の消費税とインボイス制度の不公平性です。
消費税は消費される物品にかけられて消費者が「平等に」負担するから「公平」だ、と主張する人々がおります。本当にそうでしょうか?
まず、消費税は消費者が一部を負担することにはなりますが、消費者が支払う税ではありません。消費税は事業者の売上げにかけられる直接税であって、故に、第二法人税とも呼ばれております。消費税は売上税分を価格の一部として消費者に負担してもらうという性質のものに過ぎません。つまり、消費税込みの値段がその商品の「価格」であって、消費者は消費税を物品などの価格とは別に支払っているわけではありませんし、支払いのうちの消費税分が別会計になっているわけでもありません。ですので、「消費税は『預かり税』だから、消費税を預かった免税事業者が消費税を納めないのはおかしい」などと平然とTVなどで言う元弁護士くずれのペテン師もおりますが、それはウソです。
消費税のプロトタイプは中曽根政権時の「売上税」です。売上に対してかける税金で、この法案は事業者が反対して廃案になりました。それと中身は同じなのに、名前だけ変えてだしてきたのが「消費税」です。あたかも消費者が税を負担するかのような印象操作をし、加えて売上3000万円以下の小規模事業者は免税事業者となるので消費税分が利益になると言って事業者を納得させて導入しました。そして、いつもの自民党。知らぬ間に消費税税率は3%であったものが10%となり、免税業者は売上3000万円であったものが1000万円以下と再定義され、挙句に今回は、インボイス制度の導入です。この制度によって、売上に関わらず小規模事業者も免罪業者を辞めて消費税を払うか、それが嫌なら名税業者との取引から排除されるか、どちらかを選べと言ってきたわけです。入口では甘い言葉で誘うが、中に一旦入ればやりたい放題、ぼったくりバーなみの詐欺です。しかも、あたかも、消費税は消費者が支払う税であるかのような印象操作を行い、消費税の仕組みをよくわかっていない一般国民を騙し、ペテン師にTVでウソを言わせて、免税業者を叩かせる悪質ぶり。
税金の役割は複数ありますが、そのうちの一つは「富の再配分」と呼ばれていますが、その目的は「格差の是正」です。すなわち、あるところから取って、足りないところからは取らない、そして税収を財源の一部として予算を組み、足りないところに金を回すことです。しかるに、消費税は足りないところからも取る上に、弱者ほどその相対的負担を大きくして、格差を広げます。すなわち、本来の税の目的に反する税です。これが消費税が悪税と呼ばれる理由の一つであります。生活の苦しい人々からも否応なく徴税する消費税は「公平」ではないと言えるでしょう。
この消費税の逆進性、つまり可処分資産や所得の少ない人ほど相対的に負担が大きくなるという性質は、これまでも強く批判されてきたし、それゆえに消費税を導入している海外の国でも、すべての人々が消費する食品や日常必需品は無税もしくは低率の税しかかけられていないのが普通です。日本でも昔は「贅沢税」と呼ばれて高額な贅沢品だけにかけられる税でした。にもかかわらず、そうした先進国の税制に倣うことをせず、頑なに弱者への負担を増やす政策を継続し、国内消費を冷え込ませ、地盤沈下を促進し格差を拡大した挙句、「経済政策の失敗で先進国で唯一貧しくなった没落国」と呼ばれるような悲惨な状態に日本を陥れたのが自民党であります。
海外の先進国ではやらないような、明らかに「誤った経済政策」を続け意図的に弱者いじめを続けて国を破壊してきたのは、利権でしか動かない自民党の病理体質のせいでしょう。なぜ自民党は弱者いじめをし、強者に阿るのか。それは「票」以外にありません。強者は組織されておりまとまったの票をもつ一方、弱者である一般国民は分断されており、票の半分を捨てています。組織票を握った方が勝ちとなる小選挙区制度では、一般国民である弱者をいじめて強者にいい顔をする方が自民党の得になります。そして、弱者をいじめて得をするのは弱者を利用して金儲けをしている連中(つまり、資本家やカルト宗教団体などの強者)ということになります。
反省とか、恥という言葉を知らず、目先の金と力の匂いのする所に群がる大腸菌のような自民党が、さらなる弱者いじめとして導入するのがインボイス制度です。インボイス制度とは弱者に対する増税であり、事業妨害であり、「弱いものいじめ」そのものが目的とも言える悪質なものです。インボイス制度によって得られる消費税増収分は1%程度のわずかなものに過ぎないのに、これによって数百万という小規模事業者が廃業に追い込まれると考えられています。ゼロゼロ融資の返済がスタートしたためか、すでに小規模事業者の倒産件数はうなぎ上り、これにインボイス制が始まると、日本の中小零細企業は悲惨なことになるでしょう。そうして、街や田舎の小規模産業を根こそぎぶっ倒していって誰が得をするのでしょうか。それは地域の豊かな多様性を踏み潰して、小規模事業が潰れて浮き出した労働力を安く買い叩き、合理化され画一された商業モデルに置き換えて地域産業を独占する大企業でしょう。つまり、一部の金と権力をもつ支配者と大多数の持たざる被支配者からなる格差の社会、それを自民党と経団連企業は目指しているのだろうと思います。
さて、逆進性が強い税金で収入や資産の少ない人ほど負担が大きくなる「不公平」きわまりない税が消費税ですが、消費税は、雇用を不安定にし賃金を下げるというメカニズムを通じても、社会の貧困化や少子化を促進します。消費税は消費者ではなく事業者に納税義務がある事業者税であり売上から仕入れ値を引いた額にかけられる情け容赦のない税です。その差額のほとんどが人件費となって消えていきますから、事業者は、利益確保のために人件費を節約しようとします。そのために、正規雇用者を減らし、不足分をパートやアルバイトで賄うことになります。正規職は減り、非正規のパートタイムに置き換わる中で国民はますます貧乏となり、結婚したり子供を持ったりすることをあきらめていきます。
そもそも、弱い事業者と強い事業者に同率の消費税を背負わせるのは「不公平」であるという当然の認識が消費税導入時にはあって免税業者というものが設定されました。インボイス制によって、これらの弱い中小の事業者は潰されていき、日本の中小の町工場が持っている世界トップクラスのさまざまの技術や、現代日本の象徴でもある日本のアニメーション産業や伝統文化を支えているアニメーターやフリーランスは廃業を選び、そして技術も文化も日本から失われて、日本は、大企業とそこで働くロボットのような低賃金労働者からなる消費物を生み出すだけのただの無味乾燥な巨大工場になっていくのでしょう。