前回、チョムスキーの今回の戦争(ロシアは数日以内にウクライナに対し正式に宣戦布告をするようです)に関する解釈を紹介しました。かつて、著名人とはいえ、一介の言語学者にすぎないチョムスキーが、どのように情報を集めていると聞かれて、情報源は新聞やメディアであって特別なものはないと答えたのを覚えております。複数の情報から仮説を立て、それをpost-hocに検証していくことで事象の本質を解釈するということでしょう。論理と科学的アプローチで言語や社会を解釈するのがこの人のスタイルのようです。
昨日のウクライナ、ロシア関連のGoogle Newsのヘッドラインを並べてみますと、東西の対立とその狭間で苦難にあうウクライナという構造が見えます。
しかし、なぜそもそもアメリカがここまで反ロシア姿勢を強めたのかについては、私はよくわかりません。最初のクリミア半島へのロシアの侵攻時、アメリカの副大統領はバイデンでした。そして、ロシア疑惑のトランプ政権がおわり、バイデン政権になってから反ロシアはエスカレートしています。
ロシアが岸田首相、林外相ら63人の入国禁止
露外務省は入国禁止リストの発表について「岸田政権は過去に例のない反ロシア施策を推進した」と位置づけ、ロシアに対し「侮辱や直接的な脅威を含む、許しがたいレトリックを許容した」と主張した。(ついでに言うと、日本共産党の志位委員長もこのリストに入っています)
ドイツ大統領のウクライナ訪問を拒否
ドイツの国家元首のシュタインマイヤー大統領がウクライナから訪問を拒否された。ロシアに融和的とされる姿勢をウクライナ側が懸念したとみられる。
バイデン氏 ジャベリン工場視察
アメリカのバイデン大統領は3日、ウクライナに大量供与している携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」の製造工場を視察した。バイデン大統領は、ロシア軍の戦車への攻撃に最も効果的な兵器の1つだと称賛し、支援の継続を強調した。
EUが対ロシア追加制裁案 年内に石油禁輸へ
プーチン氏とマクロン氏、ウクライナ情勢巡り会談
プーチン氏は、ウクライナ側の停戦交渉での立場に一貫性がないと批判する一方、ロシアは交渉による問題解決に前向きだと主張し、欧米側がゼレンスキー政権に対し停戦実現へ働きかけを強めるよう求めた。
「編集長襲撃はロシア情報機関の犯行」 米国務長官が言及
ブリンケン米国務長官は3日、首都ワシントンで記者会見し、2021年のノーベル平和賞を受賞したロシア紙「ノーバヤ・ガゼータ」のムラトフ編集長が襲撃された事件について、「米情報機関はロシアの情報機関による犯行と判断した」と明らかにした。
これらのヘッドラインを眺めると、ウクライナは停戦に向けて、妥協案を表明してきているが、ロシアとは条件の合意に未だ至らず、一方で、ウクライナを西側に取り込みたいアメリカとEUはウクライナの徹底抗戦を望み、ロシアとプーチンに対する敵意と非難を煽っているのが分かります。一方で日本はアメリカと西側諸国の後を金魚の糞のようについて回るだけ。ロシアはアメリカのいいなりの世界9位の軍事費を費やす日本が加勢すると面倒だからと牽制。そして、当のウクライナはアメリカと西側諸国の態度に不満を募らせつつある状況が浮かび上がってきます。いまや、アメリカと西側諸国およびそれに追従するだけの日本、これらの国が停戦を望むウクライナとロシアの障害となっているのではないでしょうか。
ロシアの西側に対する反感を大きくし、今回の侵攻にいたったのは、ベルリンの壁が崩壊し冷戦の終結時にゴルバチョフが西側と結んだ約束(NATOの東方拡大はしない)をアメリカとNATOが無視にしたことでしょう。(少なくとも、ロシアはそれを直接の理由に主張しています)
しかし、もう双方、感情的になっていて、30年前の約束は水掛け論となり、子供の喧嘩しているわけですから、簡単には収まりません。ここはアメリカとNATOが大人になって、とりあえずその根本の問題を先送りにし、ウクライナの武力支援の停止を条件にロシア軍の撤退を提案し、他の国連メンバー、フランス、中国、イギリスに仲裁役を依頼するぐらいでないと前に進まなだろうと思います。
そして、この米露の対立の結果として直接の苦しみを受けているのはその狭間に位置するウクライナ。また、欧米と中露印の対立がエスカレートすれば、太平洋を挟んで、日本も米中の狭間、ウクライナの苦しみを味わうことになるかも知れません。