元朝日新聞記者のジャーナリスト、鮫島浩さんが、ウクライナ情勢についてのノーム チョムスキーの最近のインタビューの要旨を訳されていますので、リンクします。
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ウクライナをさらなる破壊から救うために必要なことは、交渉による解決である。
この戦争が終わるのは二つのケースしかない。ひとつは、どちらか一方が破壊される場合だ。ロシアが破壊されることはない。つまりウクライナが破壊される場合である。もうひとつは、交渉による解決だ。ウクライナの人々をさらなる大惨事から救うため、交渉による和解の可能性を探ることが最大の焦点となるべきである。その際、プーチンや彼の取り巻きの胸の内を覗こうとしてはいけない。それを推測することはできても、それをもとに判断することは賢明ではない。
一方、バイデン政権の姿勢は明らかだ。それは「いかなる交渉も拒否する」というものである。この方針は、2021年9月1日の共同方針声明で決定的となり、その後11月10日の合意で強化された。その内容をみると「基本的にロシアとは交渉しない」と書いてある。そしてウクライナに「NATO加盟のための強化プログラム」へ移行することを要求している。その内容は、ウクライナへの最新兵器供与の増加、軍事訓練の強化、合同軍事演習、国際配備の武器の供与などだ。これはバイデンがロシアの侵攻を予告した前に提示した方針であり、ウクライナ政府がロシアとの交渉を通じて解決する選択肢を奪った。
バイデン政権の強硬姿勢が、プーチンとその周辺を軍事侵攻へ駆り立てた可能性がある。バイデンがその方針を貫く限り「最後の一人になるまで、ウクライナ人は戦え」というのと同じだ。
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ゼレンスキーがウクライナの人々が生き残れるかどうかを気にかけているのは明らかだ。だからこそ、ロシアとの交渉の基礎となりうる妥当な提案を次々と打ち出している。政治的解決の大筋の方向性はロシアとウクライナの双方で以前からかなり明確になっている。もしバイデン政権がロシアの侵攻前から交渉による解決を真剣に検討する気があったのなら、今回の進攻は避けられたであろう。
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ラブロフ発言が意味するのは、ウクライナを「メキシコ化」するということである。メキシコは自分の道を自分で選択することができる、ごくふつうの主権国家として存在している。しかし仮にメキシコが中国が主導する軍事同盟に参加して最先端兵器や中国製武器を米国との国境に配備し、人民解放軍と共同軍事作戦を実施し、中国から軍事訓練や最新兵器を受けるという状況が起きたら、米国は絶対に許さない。、、、しかし、米国は自分自身が絶対に許さないと考えていることを、ロシアに対して実行しようとしたのである。、、、
と、チョムスキーは、今回のロシアの侵攻は、アメリカが招いたものであり、アメリカとNATOが政治的交渉による戦争終結を阻み、徹底抗戦を煽っていると考えていることがわかります。続いて、ロシアに対する敵意を煽ってきたメディアの問題に触れています。メディアの問題は、アメリカ以上に日本で深刻であり、日本の大手メディアはNHKからして、すでにほとんどが政府広報機関と堕しつつあり、本来の機能を失ってしまっています。(鮫島さんが朝日新聞を辞めたのも、森友をスクープしたNHKの相澤さんが左遷され辞職に追いやられたのも、そういう事情でしょう)
(メディアに関して)
、、、国際安全保障を専門とする記者が「戦争犯罪人にどう対処すればいいのか?」という記事を書いた。「どうすればいいのか?私たちはお手上げだ。戦争犯罪人がロシアを動かしているんだ。どうやってこの男と付き合えばいいんだ?」と。この記事の興味深い点は、それが出たことよりも、世論がそのような記事を期待していたため、嘲笑を誘わなかったことだ。
私たちは戦犯の扱い方を知らないのか? もちろん知っている。
米国における最も代表的な戦争犯罪者の一人は、アフガニスタンとイラクへの侵攻を命じた人物である。戦争犯罪者として彼を超える人間はいない。
実はアフガン侵攻20周年にあたる2021年10月に、ワシントンポストがその男にインタビューをした。この記事は一読に値する。そこには、愛すべきおっちょこちょいの爺さんが孫たちと遊んでいる様子、幸せな家族、彼が出会った素晴らしい人たちの肖像画を披露している様子が書かれていた。つまり、米国は「戦犯の扱い方」をよく知っているのだ!
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米国は、なぜ世界の一部しかロシアへの経済制裁に加わらないのかを理解していない。世界地図をみて「制裁国一覧マップ」を自分で作ってみれば一目瞭然だ。英語圏の国々、欧州、アパルトヘイトの南アフリカが「名誉白人」と呼んでいた日本、および旧植民地の数カ国。たったそれだけである。
米国は自国の文明のレベルを上げて、過去の被害者の立場に立って、世界を見なければならない。そうすれば、ウクライナに関してももっと建設的な行動を取ることができるはずだ。(日本はアメリカよりももっと深刻ですが)
(対談は、ウクライナ戦争でバイデン政権が仕掛けるプロパガンダに欧米メディアが加担し、権力者を監視する健全なジャーナリズムが機能せず、好戦的な世論が高まり、戦争の本質が見失われているという問題提起に行き着く。チョムスキーの締めのメッセージは善悪二元論に染まる日本社会にも当てはまると思うので、ここに引用したい。)
米国はいま、最後のウクライナ人まで戦わせようとしている。もしあなたが少しでもウクライナ人のことを気にかけているのなら、この事実を批判するのは正しい行動です。、、、
日本においても改憲して軍装化を進め、どうどうと戦争をできる国にしようとしているのが自民党。自民党は、アメリカに言われるがまま、アメリカからどんどん武器を買って儲けさせた挙句に、日本をウクライナのようにしたいらしい。為政者が日本と国民の安全を守ろうとするのではなく、日本人が最後の一人になるまで焦土になった国土でお国のために戦い続けるような状況に誘い込もうとしているかのようです。そして、恐ろしいことは、多くの日本の国民自身が、戦争をすることは日本を守ることで、最後まで戦い抜くことが尊いことだとでも、メディアに思わされているということでしょう。知恵ある人は、戦争のような状況に巻き込まれるようなヘマはしないし、金持ちは喧嘩しない。戦争になった時点ですでに負けです。
戦争に巻き込まれた時点ですでに恥ずべき失敗を犯したことになるのに、その当たり前のことを与党は言わない。
それは、与党政府は戦争をしたいからだと思います。与党政府が戦争を望む理由は複数考えられます。前にも触れましたけど、9条の改悪と同時に改悪される99条をもとに、9条で可能になった戦争を口実に非常事態宣言を出すことで、内閣が憲法を超えた権力を得て、恒久的な独裁国家を作り出すこと、それから赤字財政の一挙解決。彼らにとっては戦争の大義も勝ち負けも二の次です、ちょうどアメリカの最大の戦犯のように。それに、自民党のこれまでの行いから、彼らが国民と国土の安寧を屁とも思っていないのは明らかですし。