青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

信濃川の光と影

2017年05月18日 00時00分00秒 | 飯山線

(地形の妙味@津南~越後鹿渡間)

信濃川・中津川の河岸段丘に加え、柱状節理の美しい清津峡の渓谷や秋山郷の景観など「苗場山麓ジオパーク」を標榜する長野県栄村と新潟県津南町。信濃川が刻む典型的な河岸段丘の上を、飯山線の線路が走ります。この河岸段丘は、戸隠、妙高、飯縄が降らせた火山灰の積もったローム層を長い長い年月をかけて信濃川が削り出し、浸食した結果形成されたものです。が、現在の信濃川は上流の西大滝ダムを始めとして発電用のため取水されており、この津南界隈の中流域の流量は極めて低くなっているのだとか…この信濃川の取水問題では、JR東日本も下流の宮中ダム(信濃川発電所)での不正取水がバレまして、地元との補償交渉になったりしているのですがね。


反里の集落の対岸あたり、雪崩除けのスノーセットを越え川沿いの隘路を行く飯山線。河岸段丘の平らな部分は水田や耕地に利用されており、僅かながらでもコメ作りが行われています。さすがにGW過ぎないと水は入って来ないのかな。昼夜の寒暖差が大きい津南のお米は、魚沼コシヒカリと比べても遜色ない食味なんだそうですよ。確かにこっちの方来るとどんな安い宿に泊まってもコメだけは美味いという事がありまして、それこそ大学生の時に木島平のスキー民宿に泊まった時は貧乏バスツアーの粗末な食事で何にも食べるものがなかったので、山と積まれた野沢菜をオカズに白飯ばかり食っていた記憶がw


土市と十日町の間、大黒沢の跨線橋から残雪の北信妻有の山々をバックに。十日町に近付くと平野も開けて来て、米どころ新潟らしい田園風景の縁をなぞるように走る飯山線。圧縮し過ぎて家並みがごちゃごちゃ入ってしまいましたが、田んぼに水が入って田植えが終わった時期あたりにまた来てみたいところです。後ろの山々にも中津川の段丘部分が縞模様に表れているのが分かりますかね…


広い信濃川を真一文字に塞ぐ宮中ダム。ここで取水された水が信濃川の3発電所(千手・小千谷・小千谷第二)に送られて首都圏のJRを動かす電力を作っている。ちなみに前述の不正取水問題のツケとして、JR東日本は補償金として流域の自治体に結構なカネを落とすハメになったのだが、十日町、小千谷、川口町にお詫びで60億即金で払ったのだとか。すげえ。

ちなみにこの補償の中には「飯山線の振興策」も入っているので、おそらくこの先利用者が少なくなっても「地元対策としての飯山線」はそこそこ安泰なのではないかと思ってもいる(笑)。信濃川に絡んだ光と影。政策的な思惑の絡む、オトナのお話です。
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朝日の中へ飛び出して

2017年05月17日 00時00分00秒 | 飯山線

(雪覆いのトンネル抜けて@足滝~越後田中間)

森宮野原5:37発1123Dを追って。まず一発目は越後田中の踏切脇から。東頸城丘陵から続くブナの雑木林を抜けて、雪覆いの付いた小さなトンネルから飯山色が顔を出しました。田中の集落は信濃川の河岸段丘上に開けた小さな集落ですが、ここにある田中温泉は日帰りで何回か使った事あるけど茶褐色のすべすべするいい温泉ですね。飯山線で来ても駅から5分くらいですし、18きっぷでぶらりと泊まりに来てみたい宿です。


ピカピカの朝日を浴びて飯山色が躍る。ちなみに私が構えている横の県道で、この列車の通過を何台もの営農サンバーが待っていた。おそらく朝も早よからこんなところでカメラ構えてるオトコを好奇の目で見ていたはずだ。段丘上の耕作地に出掛けて行くのだろうけど、まだ朝の6時前だ。撮り鉄と農家の朝はかように早いものだなあ(笑)。
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森宮の朝

2017年05月16日 00時00分00秒 | 飯山線

(AM5:00の始発駅@森宮野原)

いつまで飯山線の話が続くんだ、と言われそうですが、なんせGWの前半後半共に行ってしまったためにカット数が有り余っております(笑)。このままボツっちゃうのも勿体ないので、GW以降の撮れ高が溜まるまでは今しばらくお付き合いいただきたく…と言うか、飯山色と飯山線沿線の風景にはハマったねえ。飯山色は二年くらい走りそうなので、季節を変えて何回か撮り込んでみたいもの。寝静まる家族を残し、野沢温泉の宿をそっと抜け出したのは朝4時半。やって来たのは森宮野原。普段は怠惰な私ですが、どうしてこうも目が覚める。宿の朝食の時間まで、一本勝負の朝練開始。


朝焼けの空の下、昨晩の最終列車でやって来たキハ110系DC2機が静かに滞泊中。十日町から172Dで来た飯山色、長野から147Dで来た一般色が、それぞれ172D→1123D(長岡行き)、147D→162D(長野行き)となって折り返す運用です。森宮野原は豊野から49.7km、越後川口から47.0kmとほぼ中間に位置するので、始発列車のダイヤ設定を考えるとここを山にして運用を切り分けるのがちょうど良いようです。


豪雪地帯らしいしっかりとした2階建ての駅舎と、向こう側に見える乗務員詰所。夜間2本滞泊と言う事は少なくとも毎日2名の運転士がここで一泊する乗務員行路を組んでいると思われます。ローカル線にしては立派な詰所ですが、この辺り本州有数の豪雪地帯なんで、おそらく冬期間は除雪対応の保線係員も配置されるのでしょう。終車の森宮着がどっちも22時過ぎで、周囲には食事するところも全くなさそうだけど、夜とか小腹すいたらどうしてんのかな。1kmくらい離れた国道沿いにはファミマがあるけど、十日町か長野でなんか買って来るしかないような感じでしょうか。意外と遅番上がった後ってなんか食いたくなるんだよねw


折り返しはそれぞれ逆線出発になるため、どちらの番線にも出発信号機が付けられている森宮野原の駅。身支度を済ませた運転士氏が詰所から出て来て、飯山色のエンジンを掛けました。逆転機のスイッチが切り替わり、赤い尾灯が輝く発車10分前。ドゥルルルルルルル…と言う軽やかなエンジンの音が山峡の駅に響くと、目指す進路の向こうから千曲川の流れに沿って皐月の朝日が構内に差し込んで来ました。

今日もいい天気になりそうな、森宮の朝です。
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心は篤く、湯は熱く

2017年05月15日 00時00分00秒 | 飯山線

(最高の光を浴びて@上条ストレート)

今回のGW、結局前半も後半も飯山色を追い掛けて信州に行くという愚挙を果たしてしまいました(笑)。まあ後半はさすがに家族サービスを兼ねてでしたけどね。最近飯山色ばっかですっかりご無沙汰になっていたHiSEゆけむり。GW前に開通したばかりの志賀草津道路を抜けて、上条のストレートで久々のご対面です。僅かに線路際に残っていた桃の花を横目に、花道を最高の光を浴びて通過する姿、やっぱりHiSEはカッコイイ。LSEとかもこっちで余生送らせてくれないかしら。さすがに40年選手は無理ですか?(笑)。


家族で泊まったのは野沢温泉。直前の宿探しでも案外空いていたのは、スキーシーズンも過ぎちゃってエアポケットだからなのかな。北信ではホテルが立ち並ぶ観光色の強い湯田中・渋あたりと比べると、「外湯」と呼ばれる13の共同浴場を生活の湯として守る野沢には、「ムラのおらが湯」的な雰囲気があってより土着的な気がしますね。民宿のご飯にこの時期山で採れる山菜がいっぱい出て来て良かったわ。コゴミ、タラノメ、ミズ、ウルイ…

 

僅かに石鹸水のように白濁し、香ばしい硫黄の香りを放つ野沢の湯は熱い事でも有名。子供と一緒に外湯巡りに出たはいいが、熱い湯に入れないで逡巡していると後から入って来た地元のおっちゃんが「いいよいいよ遠慮しないで水出しなよ」「折角野沢に来てくれた子に『熱くて入れなかった』って言われんのが一番イヤなんだよ」と言って水をじゃんじゃん浴槽に入れてくれた。


「坊主、まだ熱いか?」と尋ねられて、はにかみながら「大丈夫です。ありがとうございます。」と答えた我が息子。親の道楽に付き合ううちに、すっかり湯慣れて来ました。まあ、家の風呂より広くて気持ちいいし、こうやってヨソの知らないおっちゃんと話す事も非日常だよな。昔は銭湯が公共マナーや道徳を学ぶための場として機能していた事を考えれば、子供との温泉巡りも良いものだ。
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朧月夜

2017年05月14日 06時17分01秒 | 飯山線

(三日月夜と菜の花と@信濃平駅)

136Dで長野に戻った飯山色が、夕方になって143D→144Dのスジで出て来ました。かなり日も暮れて来ましたので、バルブっぽくやれる駅を上今井あたりまで見に行ったのですが、やっぱりここかなと言う事で信濃平へ。暗がりの菜の花畑にバルブ装備をセットして列車を待ちます。飯山線は戸狩から先のロケーションが良いのですが列車の本数が少なく、さりとて長野~戸狩の間は本数はあれど街の中なのでゴチャゴチャしているかな。そんな中で広々とした平野の広がる信濃平周辺は障害物も少なく、アングルの組みやすさもあって撮りやすいですね。

菜の花畠に 入り日薄れ
見渡す山の端 霞深し
春風そよ吹く 空を見れば
夕月掛かりて 匂い淡し

唱歌「朧月夜」
作詞高野辰之・作曲岡野貞一

辺りはカエルの鳴き声が響くだけの静けさで、通り抜ける風が少し冷たい信濃平。盆地を囲む山に音が反響しているのか、線路を叩く車輪のジョイント音がかなり遠くからでも聞こえて来て列車の接近が分かります。やがて駅横の踏切が鳴動して、飯山色を先頭にした144Dが時間通りにホームに滑り込んで来ました。

菜の花畑の中から春風そよ吹く空を見れば、夕の三日月。
ファインダーの中に広がる夕暮れの信濃平は、まさに「朧月夜」の世界でした。
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