今回は、2つの新聞記事からキーワードを拾ってみる。
奈良新聞の名物コーナー「大和の経済人」欄(5/5付)で、菊一文殊四郎包永(きくいちもんじゅ しろうかねなが)代表・松岡泰夫氏の話が紹介されていた。見出しは「土産へのニーズ変化 専門性が活性化の鍵」で、河千佳子記者がうまく勘所を引き出している。
菊一文殊四郎包永本店のホームページによると、こちらは《東大寺と春日大社の中間、若草山山麓にあり鎌倉時代から伝統を受継いだ打刃物と奈良名産のお店です。奈良の土産ものを豊富に取り揃え、また刀鍛冶菊一文珠の打刃物を製造直売いたします。尚お買い上げの際、お名前の彫り込みもいたします。また2階には国際観光日本レストラン協会加盟の大和風料理”永楽”を併設しています》とある。
http://www.tabit.ne.jp/member/kikuiti/kikuiti.htm
松岡氏は顧客ニーズを把握せよという。《それぞれの場所に合った営業スタイルがあるはず。経営者として、常にニーズを把握し、観光で活性化した地域の現状も見るなど、広い視野を持たなければならない》。
キーワードの1つが「専門性」だ。《土産物にも流行がある。長年商売を続けると商法が完成してしまい、店が良いと決めた商品を客に押しつけてしまう。近年訪れる観光客にとって専門性のない店は、個性もなく、魅力がないことにつながる。逆に専門性が高ければ、リピーターが通う。土産物店として生き残るには他には負けない専門分野を1つでも持つことが重要と考えている》。つまり、お店は個性と独自の魅力で「差別化せよ」ということだ。
別の新聞で「誰でもいらっしゃいはもう通用しない」という連載記事を読んだ(「IKGの旅館経営再生塾 第189回」週刊観光経済新聞 5/3付)。ある大型旅館はこれまで1泊2食1万円以下の団体を中心にお客を取ってきたが「安かろう悪かろう」の烙印が押されてお客が減ったので、個人・グループ向けにシフトした。料金も1万5千円以上に設定した。
しかし肝心の客層からの反応はなく、単に廉価な団体客が他の旅館に流れただけに終わってしまった。安値ねらいの客は、他に安いところがあれば簡単にそちらに流れてしまうのだ。今この大型旅館は、新しい個人対応のオペレーションと、従来型の団体向けオペレーションが錯綜し、混乱状態にあるという。
観光経済新聞の記事は《どのパターンを選ぶかは、旅館に委ねられるが、抜きん出るためには、その客層に明確に支持される価値が必要だ。その価値を作ることができるかどうかが旅館の力量である》と締めくくられている。この「明確に支持される価値」が、松岡氏にとっては「専門性」だということになる。「誰でもいらっしゃい」が必ずしも良いわけではないのだ。
さて、奈良新聞に戻る。松岡氏は、土産物は観光客のものだけではないという。《全国各地にある人気のある土産物屋を見ると、地元の人が買いに訪れる店が多い。観光客だけではだめ。例えば、「奈良で饅頭(まんじゅう)を買うならあの店」と地元の人にも親しまれる店になってはじめて、観光客も安心して訪れてくれるはず》。まずは、地元民に支持されなければならないのだ。確かに飲食店にしても、観光客は地元民で流行っている店に入りたがる。
京都との比較も登場する。《京都の観光活性はイメージづくりが良かったから。奈良もイメージ戦略が必要。奈良も京都も神社仏閣、街並み、伝統など古いものがあることに大差はない。1つ違うとすれば、奈良には前人から1300年受け継がれ、県民が守ってきた自然が残っていること》。
1300年祭を機に県下観光業界は、全体レベルの底上げをしなければならない。《1300年は奈良の観光を見直すまたとないチャンス。一番大切なことは、観光客が訪れやすい観光地にすること。そのために、1つの観光地や商店、企業が一人勝ちするのではなく、県全体の観光産業のベースアップを図らなければならない》。
顧客ニーズの把握、専門性の発揮、明確に支持される価値、地元民の評判、イメージづくり、奈良の自然のPR、全体レベル向上と、さまざまな観光振興のヒントが出てきた。
最近は全国各地で観光振興への取り組みが行われ、観光地同士の競争が激しくなっている。この競争を勝ち残るためにも、これらのヒントを実行に移さなければならない。地域住民を含め、観光に携わる全員がもう一歩踏み出すことで、全体レベルが底上げできるのだから。
※参考:観光地奈良の勝ち残り戦略(10)観光は地域なり(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/c17b5755a45c5223d7227e87796a30ea
※写真は「平城(なら)遷都祭2008」のメインイベント・天平行列。5/3撮影。
奈良新聞の名物コーナー「大和の経済人」欄(5/5付)で、菊一文殊四郎包永(きくいちもんじゅ しろうかねなが)代表・松岡泰夫氏の話が紹介されていた。見出しは「土産へのニーズ変化 専門性が活性化の鍵」で、河千佳子記者がうまく勘所を引き出している。
菊一文殊四郎包永本店のホームページによると、こちらは《東大寺と春日大社の中間、若草山山麓にあり鎌倉時代から伝統を受継いだ打刃物と奈良名産のお店です。奈良の土産ものを豊富に取り揃え、また刀鍛冶菊一文珠の打刃物を製造直売いたします。尚お買い上げの際、お名前の彫り込みもいたします。また2階には国際観光日本レストラン協会加盟の大和風料理”永楽”を併設しています》とある。
http://www.tabit.ne.jp/member/kikuiti/kikuiti.htm
松岡氏は顧客ニーズを把握せよという。《それぞれの場所に合った営業スタイルがあるはず。経営者として、常にニーズを把握し、観光で活性化した地域の現状も見るなど、広い視野を持たなければならない》。
キーワードの1つが「専門性」だ。《土産物にも流行がある。長年商売を続けると商法が完成してしまい、店が良いと決めた商品を客に押しつけてしまう。近年訪れる観光客にとって専門性のない店は、個性もなく、魅力がないことにつながる。逆に専門性が高ければ、リピーターが通う。土産物店として生き残るには他には負けない専門分野を1つでも持つことが重要と考えている》。つまり、お店は個性と独自の魅力で「差別化せよ」ということだ。
別の新聞で「誰でもいらっしゃいはもう通用しない」という連載記事を読んだ(「IKGの旅館経営再生塾 第189回」週刊観光経済新聞 5/3付)。ある大型旅館はこれまで1泊2食1万円以下の団体を中心にお客を取ってきたが「安かろう悪かろう」の烙印が押されてお客が減ったので、個人・グループ向けにシフトした。料金も1万5千円以上に設定した。
しかし肝心の客層からの反応はなく、単に廉価な団体客が他の旅館に流れただけに終わってしまった。安値ねらいの客は、他に安いところがあれば簡単にそちらに流れてしまうのだ。今この大型旅館は、新しい個人対応のオペレーションと、従来型の団体向けオペレーションが錯綜し、混乱状態にあるという。
観光経済新聞の記事は《どのパターンを選ぶかは、旅館に委ねられるが、抜きん出るためには、その客層に明確に支持される価値が必要だ。その価値を作ることができるかどうかが旅館の力量である》と締めくくられている。この「明確に支持される価値」が、松岡氏にとっては「専門性」だということになる。「誰でもいらっしゃい」が必ずしも良いわけではないのだ。
さて、奈良新聞に戻る。松岡氏は、土産物は観光客のものだけではないという。《全国各地にある人気のある土産物屋を見ると、地元の人が買いに訪れる店が多い。観光客だけではだめ。例えば、「奈良で饅頭(まんじゅう)を買うならあの店」と地元の人にも親しまれる店になってはじめて、観光客も安心して訪れてくれるはず》。まずは、地元民に支持されなければならないのだ。確かに飲食店にしても、観光客は地元民で流行っている店に入りたがる。
京都との比較も登場する。《京都の観光活性はイメージづくりが良かったから。奈良もイメージ戦略が必要。奈良も京都も神社仏閣、街並み、伝統など古いものがあることに大差はない。1つ違うとすれば、奈良には前人から1300年受け継がれ、県民が守ってきた自然が残っていること》。
1300年祭を機に県下観光業界は、全体レベルの底上げをしなければならない。《1300年は奈良の観光を見直すまたとないチャンス。一番大切なことは、観光客が訪れやすい観光地にすること。そのために、1つの観光地や商店、企業が一人勝ちするのではなく、県全体の観光産業のベースアップを図らなければならない》。
顧客ニーズの把握、専門性の発揮、明確に支持される価値、地元民の評判、イメージづくり、奈良の自然のPR、全体レベル向上と、さまざまな観光振興のヒントが出てきた。
最近は全国各地で観光振興への取り組みが行われ、観光地同士の競争が激しくなっている。この競争を勝ち残るためにも、これらのヒントを実行に移さなければならない。地域住民を含め、観光に携わる全員がもう一歩踏み出すことで、全体レベルが底上げできるのだから。
※参考:観光地奈良の勝ち残り戦略(10)観光は地域なり(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/c17b5755a45c5223d7227e87796a30ea
※写真は「平城(なら)遷都祭2008」のメインイベント・天平行列。5/3撮影。