tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

呉善花さんが語る「日本人の縄文的世界観」

2008年05月20日 | 日々是雑感
昨日(5/19)、時事通信社の「内外情勢調査会 奈良支部5月例会」で、拓殖大学国際学部教授・呉善花(オ・ソンファ)さんの講演を聞いた。演題は「日韓はなぜ和解しえないのか」だった。

呉善花さんは、1956年韓国済州島生まれ。83年、大東文化大学(英語学)留学生として来日し、その後東京外国語大学・大学院修士課程(米国地域研究)修了。著書は『スカートの風』『攘夷の韓国、開国の日本』(山本七平賞受賞)『日本人ほど個性と創造力の豊かな国民はいない』など約30冊。

昨年10月、ご母堂の葬儀で済州島に帰郷したところ、島の空港で一時入国拒否された、というニュースが報じられていた。《理由は日本での「反韓国的な活動」で韓国当局から入国禁止措置が出ているためという。しかし呉さんは日本に帰化し日本国籍になっていたため、日本の済州総領事館に依頼し韓国当局と交渉した結果、「人道的配慮」としてやっと“帰国”を認められた》そうだ(産経新聞Web版 07.10.9)。
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/071009/kor0710091654001-n1.htm

呉さんの奈良訪問は、久しぶりなのだそうだ。十数年前に県内各地を回られ、そのことは『攘夷の韓国、開国の日本』に書かれた。確かに、古代日本と朝鮮半島の交流の史跡をたどる同書の第1章は「飛鳥」である。

「奈良を再訪できて、感無量です。低い山々に囲まれた奈良は、慶州の景色に似ています」とおっしゃる。また「奈良は均(なら)すに由来する言葉ですが、朝鮮語のナラは国という意味です(ウリナラは私の国)。だから余計、奈良に親近感を感じます」。奈良のお寺は百済の寺に似ている。法隆寺の百済観音には、韓国のウォンがたくさんお供えされていた。しかし京都の寺は日本風なので、イライラするそうだ。

韓国人は日本人に優越感を持っている。それは小「中華思想」ともいうべきもので、中国から遠いほど野蛮だということ。いわば、中国は父、韓国は兄、日本は弟。兄は弟よりえらい。韓国人は今も、お酒を飲むとよく「日本と戦争して勝ってみたい」という。だからスポーツでも、相手が日本人となると死に物狂いになる。

日本人は、なぜ韓国人がいつまでも恨みを忘れないのか、と不思議そうに言うが、それは殴られた人が殴った人のことを忘れないのと同じ。韓国人はいつまでも恨みを忘れないことが、生き甲斐なのだ。韓国には今も「日本の統治時代を評価する者は処罰する」という法律があるそうだ。

日本に来る韓国人は、最初の1年目には良い印象を持ち、たいてい日本好きになる。しかし2~3年たつと文化や風俗習慣の些細な違いが気になり、日本嫌いになる。その時期を乗り切ると、また日本びいきになるという。

日本人のメンタリティの特徴は3つある。
1.西洋の影響(欧米化)
2.農耕文化(農耕アジア的な集団主義)
3.縄文的世界観(プリミティブな、前アジア的世界観)

1.では今、いろんな事件が起こり、日本は副作用に苦しんでいる。2.は韓国・中国と同じルーツである。



3.が際立った日本の特徴である。自然志向で、自然を擬人化している(自然と人間が一体化している。対立より調和を重んじる)。これは日本人の美意識に通じるもので、「もののあはれ」「わび」「さび」もここから来ている。だから鈍色(にびいろ)に沈んだ美、歪形の美、地肌そのままの美を尊ぶ。日本は「生(き)の文化」ともいえる。木は白木のままを好むし、刺身も寿司も、とれたて作りたてが肝心だ。
※上の写真は、縄文時代の土偶(東京国立博物館で07.7.28撮影)。

ものづくりに優れているのも、ここから来ている。日本人は、モノすべてに神が宿ると考え、モノを神様と見ている。だから、決していい加減な気持ちでものを作らない。このような縄文的・前アジア的な世界観は高い次元のもので、今も全く行き詰まっていない。ここに日本の未来への可能性がある。

90分の中身を要約すると、以上の通りだ。講演では、興味深いエピソードが挟まれ興味津々だったが、ここではスペースの都合上、割愛せざるを得なかったのが残念だ。

私にとっては、最後の「縄文的世界観」(前アジア的世界観)の指摘が面白かった。「日本人は超近代的なビルの谷間にも小さな神社を残し、通りかかると手を合わせる」との話もあった。考えてみれば、超近代的ビルの建設の際には神主を呼んで地鎮祭をするし、屋上には祠(ほこら)をお祀りする。大木や巨石にはしめ縄を張って拝む。お正月には電車や自動車にもしめ飾りを張る…。

儒教やキリスト教の国では、動植物など万物の頂点に人間がいる。だから自然の命と人間の命が同じ、という発想が通じない。神道や天皇が理解できない。それが「何を考えているのか分からない未開人」という非難を産む…。

日韓の比較にとどまらず、日本人の心の深層構造に迫る、とてもタメになる講演であった。

なお『日本人ほど個性と創造力の豊かな国民はいない』(PHP新書)は、Amazonの「なか見!検索」で、目次や抜粋の立ち読みができるので、いちどお試しいただきたい。
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%BB%E3%81%A9%E5%80%8B%E6%80%A7%E3%81%A8%E5%89%B5%E9%80%A0%E5%8A%9B%E3%81%AE%E8%B1%8A%E3%81%8B%E3%81%AA%E5%9B%BD%E6%B0%91%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84-%E5%91%89-%E5%96%84%E8%8A%B1/dp/4569694500
コメント (13)
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