独り暮らしをしていると、どんな小さな音がしても、その音源や正体を確かめないではいられない。
気楽に過ごしているように思われているだろうけれど、火事をださぬように何かに襲われぬようにと緊張の日々でもあるのだ。
二六時中緊張して不安を感じているというほどではないにしても、遠くなってきている耳に異音を聴きつけると耳を澄ます。
そうすると、けっこう自分がだしている音の場合がある。
何気なく息を詰めて細く音を出していたりして、なぁんだと思っても、笑うことも腹立てることもないのは、独りだから。
耳垢がこそっと音を立てたり腹がなったりしても『おやっ?』と耳を澄ます。
背後の音に『なんだ、おれの屁か』などと、まだそこまでは無我の境地に至っていない。
昨夜は何かが連続してこすれているような、洗濯機からのような音に気づいて、周りを見回しコタツも消して耳を澄ませた。
後ろと左横はそれぞれ戸を開け電灯を点けてみたが違うようで、元の位置に座ってみると、やはり音はしていて、どうも前方の縁側越しの外からのようだった。
盛りのきた猫のなき声は十日ほど前にあったけれど、それとも違うし、水辺の蛙のなき声とも違い、くぐもった小さい声のような連続音。
サッシのガラス越しに闇夜を見たけれど分からなくて、懐中電灯を持って外にでた。
すると縁の下から微かに音が聞こえて、方向としては、私が室内で座っている下辺りのようであった。
何か小動物のグルーミングのようなことだったのだろうか、原因不明のまま。
画像は、一株だけ私の花壇に咲いている貧弱なヒヤシンス。
買った覚えはないので、庭いじり中にでてきた何か分らぬ球根を移植したのだったと思われる。
ヒヤシンスと聞けば、語呂でついつい連想してしまうのが、ドラマで観る花魁の『ありんす』という言葉尻。
昨夜は少し肝を冷やしんす。