透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「東京番外地」

2007-01-22 | A 読書日記



  東京番地 
森達也/新潮社

ほとんど訪ねる機会のない東京の番外地、15ヶ所のルポ。

「番外地」は高倉健が主演したヤクザ映画「網走番外地」からきている、と本文中に説明がある。この映画、全18作のうち何作かは観た記憶があるが、それがいつ頃のことかは分からない。

罪、性、宗教、死、異国、孤独・・・ このルポでとり上げられている場所をそれぞれ簡潔に示すとすれば、私にはこんなキーワードが浮かんでくる。逆にこのキーワードから特定の場所を思い浮かべることができるかどうか・・・。

「罪」の場所は葛飾区小菅にある「東京拘置所」、「性」とくれば、新宿歌舞伎町。では「死」はどこか、靖国神社ではなくて多磨霊園。靖国神社ならば、「政治」かな。逆に政治から靖国神社を想起するかは疑問だけれど・・・。

**エレベーターを降りれば、目の前には長椅子が置かれていて、壁には大きな窓がある。首都高が以外に近い。その向こうには数々のビルが立ち並び、人びとがそれぞれの生活にいそしんでいる。** 著者は映画監督でもあるという。そういえばこのように描写が映像的だ。

装丁から受けるイメージより、中身は密度が濃くて読み応えのあるルポだった。