■ 大学でワンゲルのサークルに所属していた僕は、3年の夏に北アルプスの最奥地・雲ノ平登山をした。
この頃は、サッカーで両脚同時ケイレンなどというアクシデントに見舞われるような軟(やわ)な体でもなく、後輩女子をおんぶして喜ぶような心の持ち主でもなかった(と言い切れるかどうか・・・)。
残念ながらこの登山の記録は無く、曖昧な記憶だけが残るのみ。
雲ノ平登山。行きは新穂高温泉から入り、わさび平、鏡平を通るルート取りをした(たぶん)。急斜面で人頭大の落石があったことくらいしか覚えていない。
帰りは三俣蓮華岳から伊藤新道を湯俣温泉を目指して下った。高瀬川上流の湯俣川沿いの伊藤新道にはつり橋がいくつかあり(調べると5つ、すべて落ちてしまったようだ)、それを渡る時はとても怖かったことを覚えている(写真)。
当時、登山者は大きな横長のリュックサックを背負っていたので、列車などの狭い通路はカニのように横向きで歩いた。それでカニ族と呼ばれていた。そのリュックサックが細い手すりに引っかかることもあった。
先日この時の写真が見つかった。写真があることは全く覚えていなかったので、これを目にしたときは驚いた。こんな写真があったのか・・・。この写真を撮ったのは同期生のMかW。3人で下ったのだからこのふたりのどちらかだ。ふたりとも今元気かなぁ。
湯俣温泉まで無事下りて来て、温泉に浸かってから飲んだ缶ビールの美味かったこと。この日、予定通り湯俣温泉まで下りてきたのは一番早く出発した僕たち3人だけで、後発の仲間は下りてこなかった。遭難したのではないか・・・。
途中でビバークして翌朝下りてきた仲間が見えた時、涙が出たことは忘れられない。
伊藤新道下りを最後に僕は登山をやめた。