「東屋 漂うこと浮舟のごとし」
■ 浮舟の父親は八の宮だが、認知してもらえなかった。母親の中将の君は子連れで常陸守と結婚していた。薫は浮舟に逢いたいという気持ちがあるものの、身分にふさわしくない娘、世間体を気にして手紙も出さない。ただ、薫の意向は弁の尼君から浮舟の母親に伝えられていた。母親は薫が本気で思いを掛けてくれているとは思っていなかった。身分相応な結婚を望み、娘に思いを寄せる男たちの中で左近少将がふさわしいと考え、婚儀の準備を始めていた。
ところが、左近少将は浮舟の父親の常陸守の財産が目当てだった。浮舟が実子でないことを知って、実の娘に乗り換えた。浮舟のための準備そのままに、父親の常陸守は実の娘と結婚させた。浮舟は高貴な娘、そう、宮の娘なのに・・・。このことを見せつけたいと思う母親は浮舟を匂宮邸の中の君に預けることにした。ところが・・・。
匂宮が中の君を訪ねた時、あいにく洗髪中で(長い髪を洗って乾かすのは大変で一日がかり。吉日を選んで行われたとのこと)相手をしてもらうことができなかった。
匂宮は見たことのない女の子がいることに気が付く。**宮はいつもの浮気な性分からそのまま放っておけずに、片手で女君の衣の袖をつかみ片手でこちらの襖を閉めて、(後略)**(359頁) 妻の妹とは知らず浮舟に言い寄った宮。だが、浮舟は乳母のガードで難を逃れた。このことを知った浮舟の母親は驚き、浮舟を三条の小さな家に移した。
弁の尼君からこのことを聞いた薫は弁を三条の小家に行かせた。薫は弁を訪ねるという口実で浮舟の許へ。浮舟と一夜を共にした。朝。薫は浮舟を抱き上げて車に乗せ、宇治に向かった・・・。同行の弁は**「亡き大君のお供としてこのように拝見したかったものを・・・。長生きしていると、思いもかけない体験をするものだ」(後略)**(381頁)と悲しく思っていた。
弁の尼宮は薫をよく分かっている女性。**やどり木は色かはりぬる秋なれどむかしおぼえて澄める月かな ― 大君からこちらの方に心変わりをしたあなただけれど、月だけは昔 と同じように澄みきっています**(385頁)と薫に詠む。**
宇治に着いた浮舟の運命やいかに・・・。
紫式部はこの長編小説の最後に先が気になって仕方ないような展開を用意していた。本当にこの女性はすごい才能の持ち主だったんだなぁと改めて思う。
さあ、ラスト4帖!
1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋