透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

小野宿の本棟造りの民家 旧小澤家住宅

2021-10-11 | A あれこれ

 小野宿、旧小野家住宅の向かいにある旧小澤家住宅(油屋)も見学した。


旧小澤家住宅(油屋)外観

旧小澤家住宅は梁間9間、桁行8間の本棟造りの旅籠。安政六年(1859年)の大火で焼失、翌年に再建を始めて万延二年(1861年)に完成している。正面の意匠は旧小野家より派手。右側の凹部に式台玄関の設え。


「おえ」幅2間の神棚が目を引く。


「おえ」の上部は吹き抜け。梁の交叉部から立ち上げた小屋束が棟木を支えている。


「げんかん」上客は式台からこの部屋に入る。


「げんかん」「なかのま」「かみざしき」と並ぶ。


「かみざしき」の床の間 


「かみざしき」の床の間、床柱下端の筍面 筍(たけのこ)に似ていることから付けられた名前。床框の下側のこのような面取りは初めて見た。名前があるはずだから調べないと・・・。


2階の客間 

今では和室はもちろん、床の間の無い住宅が圧倒的に多い。茶道、それに関連する器や生け花、墨書、きもの、作庭などの伝統的な和の文化は和の空間と共にある。すまいに和の空間を設え、これらを身近な文化にし続けたいものだ。





小野宿の本棟造りの民家 旧小野家住宅

2021-10-10 | A あれこれ

■ 旧小野家住宅(小野宿問屋 長野県宝 写真③):普段は公開されていないが、5月から10月(8月を除く)の第2日曜日に公開されることを知り、今日(10日)午前中に見学した(*1)。

 小野宿:慶長六年(1601年)に徳川家康の命により、大久保長安によって整備された初期中山道(初期は中仙道、その後中山道と表記するようになったと馬籠宿の説明板だったかな、記憶が曖昧だが、読んだような気がするが、中山道と表記する)に開かれた宿場。中山道は元和二年(1616年)にルートが変わり、小野宿は伊那街道の宿場となった。

小野宿には本棟造りの民家が今も偉容を見せている。安政六年(1859年)の大火で焼失、その後再建されたが、3軒(①②③)を請け負った大工の出身地がそれぞれ違うため、正面の意匠も違う。






旧小野家住宅は西向きのため、午前中は逆光で外観写真が上手く撮れない。

 外観③:本棟造りの民家で妻面を街道(国道153号)に向けている。梁間(妻面の幅)10間半で、向かって左側が5間、右側が5間半の切妻の為、妻梁と母屋を受ける登り梁(建て登せ*2)の取り合いが左右で違う(③では分かりにくいが)。二重破風の頂部、棟端の飾りは大きな鳥が翼を広げて威嚇しているような姿で、「雀おどり」というかわいらしい名前は全くそぐわない。この飾りのことを「烏おどし」としている資料もあるが、私もそう呼びたい(過去ログ)。破風下には懸魚(げぎょ)が付けられている。①と②の民家の外観と比べると、束と貫(貫としてよいかどうか)、縦横の部材と白壁の構成が際立っている。出格子が端正で美しい。

 内部:1階平面は梁間方向を4分割、桁行方向を3分割して12の部屋で構成している。土間部分は少し異なっているが、ざっくり捉える。④


リーフレットに載っている平面図で間数を確認した。


「土間」と「うまや」(板張りしたうまや跡)


土間から「かって」を見る。かってはもともと土間だったが、その後床が張られ、かまども床上に移設されている。


「おえ」 吊り下げてあるちょうちん(照明器具)の存在感が強く、空間の雰囲気に影響しているのは残念。スポット照明が好ましいと私は思う。


「おえ」の吹き抜けを見上げる。棟梁を支える小屋束と何段もの貫。こけらの野地板。煙抜きの越屋根から自然光が入る。本棟造りで越屋根は珍しいのではないかと思って調べると塩尻の堀内家住宅にもあった。


「おへや」の箱階段と階段上の開口を塞ぐ水平の引き戸(漫然と観ていたのでは気がつかないと思う)


「ひろま」から「上段の間」を見る。一段高くなっているのは**本陣の無かった小野宿で本陣的な役割を務めたことによるもの**という説明文が配布資料にある。 


「上段の間」本格的な床の間 漆塗りの長押 床柱の下部の筍面


2階の大部屋 旅人が泊まる部屋、寺子屋としても使われたとのこと。


 
「火要慎」そう、火の用心 側面に「といや」 問屋(といや)の看板


小野宿には出桁造りの民家も。なぜ異なる型式の民家が同じ宿場にあるのだろうか?


旧小野家住宅を見学した時、保存会員の方々が庭の草むしりや「かって」の雑巾がけなどの作業をしておられた。辰野町は文化財の保存に熱心に取り組んでおられると思う。すばらしい。


*1 問合せ先:辰野町教育委員会 0266-41-1681
*2 『滅びゆく民家』川島宙次(主婦と生活社1976年)292頁に出ている名称。

本稿の参考資料:小野宿の本棟造りの民家(旧小澤家住宅、旧小野家住宅)を見学した際に受け取った複数のリーフレット


1309 岡谷市川岸東の火の見柱

2021-10-10 | A 火の見櫓っておもしろい


1309 岡谷市川岸東 1脚無無(火の見柱) 撮影日2021.10.10



 櫓は立体構造だから柱が3本以上ないと成立しないが、この写真のような1本柱構造でも火の見「櫓」と呼ぶのが一般的だ。私はこれを火の見柱と呼んでいる。

県道14号を辰野町から岡谷市に向かって走行中にこの火の見柱を見かけた。鋼管柱のてっぺんに街灯を付け、切妻の小屋根付きブラケットに半鐘を下げている。電柱に付けられているようなステップボルトではなく、鋼材製の梯子を登って半鐘を叩くようにしているのは幸い。利用頻度によって形を変えるのは当然のこと(そうなっていないことも少なくないが)。


 


159枚目

2021-10-09 | C 名刺 今日の1枚


(再 092)上伊那郡辰野町小野下町 4脚44型 撮影日2021.10.05

159

 過日、辰野町の職員の方から電話をいただいた。詳細は記さないがこの雨沢の火の見櫓について相談に乗って欲しいとのことだった。5日、辰野町まで出かけ、お目にかかった。その際お渡ししたのが159枚目の名刺。微力ながらお役に立てれば幸い。

過去ログ


 


麻績村のカラー蓋

2021-10-08 | B 地面の蓋っておもしろい

 

 東筑摩郡麻績村のカラー蓋、展示してあるのは麻績アクアセンター。

マンホール蓋のデザインのモチーフとして市町村の花などが採用されることが多いため、麻績村のマンホール蓋の花は村の花・コブシと紹介しているウェブサイトがある。このカラー蓋を見ればコブシではないことは明らか。また鳥は村の鳥のカッコウだと紹介しているサイトもある。この蓋に描かれているのはリンゴの花とツバメ。中心のオはオミのオで村章。


 


007「NO TIME TO DIE」

2021-10-08 | E 週末には映画を観よう



■ 
ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演ずる最後の作品「 NO TIME TO DIE」を観た。「男はつらいよ お帰り寅さん」を昨年(2020年)の1月13日に見て以来のシネコン。

既に現役を退き、心理学者のマドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)とイタリアで静かに暮らしていたボンドが現役復帰、細菌?兵器の拡散を目論む男との壮絶な戦いを繰り広げる・・・。ちょっと後半が冗長な印象。それにしてもラストにはびっくり、潔い幕切れといえばそれまでだけど・・・。

ボンド引退後に007が割り当てられた女性エージェントのノーミ登場、クレイグの後は女性ボンドだと聞いていたけれど、次回作からは彼女が主役を演ずるのかな。

この作品の冒頭、「カジノ・ロワイヤル」のヴェスパー・リンドの墓をボンドが訪ねるシーンがある。エヴァ・グリーンが演じたヴェスパーはボンドガールNO.1。「カジノ・ロワイヤル」(過去ログ)をまた観たくなった。






漱石を読む

2021-10-05 | A 読書日記

「吾輩は猫である」
「倫敦塔・幻影の盾」
「坊ちゃん」
「三四郎」
「それから」
「門」
「草枕」
「虞美人草」
「彼岸過迄」
「行人」
「こころ」
「道草」
「硝子戸の中」
「二百十日・野分」
「坑夫」
「文鳥・夢十夜」
「明暗」

新潮社のHPに載っている夏目漱石の文庫リストは以上の通り。これらの文庫は全て揃っている(ただし一部他社の文庫)。

480

 昨日(4日)朝カフェで長編小説『虞美人草』(新潮文庫1951年発行 1994年91刷)を読み始めた。東京帝大講師をやめて朝日新聞に入社した漱石の最初の作品。韻律的な文章に慣れれば、読みやすいと思うがどうだろう。

読書の秋、漱石を読む。


 


「本所おけら長屋十七」

2021-10-04 | A 読書日記

「本所おけら長屋」は人気シリーズで最新第17巻の帯に累計140万部突破とある。昨日読み終えた第17巻に収録されている4篇のタイトルは今まで通りひらがな4文字。このような遊び心、好きだな。

「はんぶん」
廻船問屋を切り盛りする若くて美しい女将に気に入られて島田鉄斎が婿入りする・・・。おけら長屋の良識、鉄斎がいなくなると、おけら長屋はどうなってしまうだろう。婿入りは噂に過ぎず、今まで通り、おけら長屋で暮らすことが分かってみんな大喜び。

「みなのこ」
おけら長屋で暮らす久蔵とお梅の子どもの亀吉が寺の境内で寒天長屋の子どもの顔に石をぶつけて怪我をさせてしまう。だが目撃者がいない。おけら長屋の住人たちは亀吉のしたことではないと主張、寒天長屋の住人と騒動になる。両方の長屋の住人が奉行所に呼び出され、意見を求められる。おけら長屋の大家徳兵衛は**「(前略) もし、亀吉が怪我をさせたことが証明されたのなら、私はおけら長屋の大家として、すべての身代を売り払い、忠吉の両親(ふたおや)に差し出し、あとは・・・、老いぼれではございますが、私の命をもって償いをさせていただく覚悟でございます」**(271頁)と述べる。また、湯屋では両長屋(おけら長屋:お里、お咲、お奈津)の女性陣が素っ裸で取っ組み合いの大喧嘩。地蔵長屋の住人が、怪我をさせたのは自分の倅だと名乗り出て・・・、騒動は落着。

家族のように暮らしているおけら長屋の住人たち、人生お金じゃない、人とのつながりが大事なんだなあ、と改めて思った。


 


「ハンターキラー」を観た

2021-10-03 | E 週末には映画を観よう



 金曜日は無料でDVDを1枚借りることができる。寅さんシリーズが一段落したので、一昨日(1日金曜日)「ハンターキラー」を借りてきて観た。

ロシアで起きたクーデターで身柄を拘束されたロシア大統領をアメリカ海軍の原子力潜水艦・ハンターキラーと特殊部隊(ネイビーシールズ)が連携して救出、第三次世界大戦勃発を阻止するというストーリー。潜水艦映画を観るのは初めてかもしれない。海の中より宇宙が舞台の映画の方が好き。SF映画を探そう。


 


C6(*1)、C7「本所おけら長屋十七」

2021-10-03 | A 読書日記

 

本所おけら長屋シリーズの最新第17巻(PHP文芸文庫2021年)が出ていたので早速買い求めた。何巻まで刊行されるのか分からないがとにかく読む。帯に**鉄斎が大店に婿入り!?**などという気になる文字が・・・。

 

漱石の『門』(新潮文庫、左)と比べて文字が大きい。


*1 C6:Business Planner2022(博文館)


ブックレビュー 2021.09

2021-10-03 | A ブックレビュー

360

 早くも10月、9月の読了本は4冊。備忘録としてのレビュー。

『狛犬さんぽ』ミノシマタカコ(グラフィック社2020年)
狛犬の歴史、分類、みどころがイラスト付きでゆるっと紹介されている。全国各地の神社の個性的な狛犬たち、長野県では塩尻の阿禮神社の実にユニークな表情の狛犬が紹介されている。

『鉄道会社の経営』佐藤信之(中公新書2013年)
鉄道に関するディープな話題満載の新書。

『蝶のゆくへ』葉室 麟(集英社文庫2021年)
友だちのI君に薦められて読んだ。星りょう(後の相馬黒光)が関わった作家たちの恋愛模様。臼井吉見の代表作『安曇野』をいつか再読しなくては・・・。

『新型コロナ7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体』宮坂昌之(講談社ブルーバックス2020年)
新型コロナウイルスの正体を正しく知ること、それが感染症に対処するための第一歩。






 

 


松本市四賀の青面金剛像

2021-10-03 | B 石神・石仏




青面金剛像 松本市四賀保福寺仁王門脇 撮影日2021.10.02

 前々稿に載せた道祖神と同じ、松本市四賀の保福寺仁王門の横に祀られている一面六臂の青面金剛像。顔は損耗しており、表情は全く分からない。合掌型六臂、日天・月天、三猿、二鶏。手に持っているものが何か、知識がないので見えない、分からない。建立年は不明(碑の裏面をよく見なかった)。