和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

言葉の常備薬。

2008-10-17 | 詩歌
松井高志著「江戸に学ぶビジネスの極意」(アスペクト)
を読んでおります。
「心」への処方箋に、和漢の薬(言葉)をブレンドした江戸期の妙薬。
それをきちんと配合しながら列挙しております。
漢方薬は、即効性はなくとも、じわじわと効能がひろがります。
まあ、そんな味わいのある言葉の処方箋。
まず、この本の最初に登場する言葉はといいますと。
これが
「急がずば濡れざらましを旅人の
 後より晴るる野路の村雨(むらさめ)」
解説と効能も書かれております。
「災難に遭ったりして、苦しい時に、ちょっと辛抱すれば状況が好転する(待っていればはげしいにわか雨もすぐにやんで晴れる)のに、旅人は先を急ぐあまり駆けだしていき、ずぶ濡れになってしまう。短気を戒め、辛抱の大事さをたとえる教訓和歌。困った時もまず慌てるな、という教え。」

さて、松井高志氏は、このあとにどう書いているか。
これ、見逃せないので、引用しておきます。

「簡単に言い換えれば『泡を食うな』ということで、それだけではあんまり味わいがないので、こういう教訓和歌にしてあるわけだ。昔の人にとっては、こちらの方が覚えやすく、またありがたみがあった。ただリズミカルだから覚えやすいだけではない。歌には日常語にない一種の霊的パワーが宿る、と、かつては考えられていたようである。・・」

この本にその「日常語にない一種の霊的パワー」を感じてもれえるかどうか。すくなくとも、発信者にはそれへの用意があり、あとは読者(受信者)の感性へと、効能がじわじわと試されているような一冊。

ということで、そんじょそこらのハウツウ本とは、すこし毛色の違う「心の処方箋」となっております。とかく落ち込みやすい諸兄に、気持ちの切り換えのテンポを、言葉の味わいとともに鮮やかに蘇えらせてくれる常備薬として最適。
そうそう、困ったときに慌てずに、ひらく常備薬として。
あるいは、日頃に服用する、言葉の健康ドリンクとして。

私など、恥ずかしながらはじめて聞く言葉が、けっこうありました。
たとえば、「今でも挨拶などでこの歌を口にする人がかなりいる」
という言葉「人多き人の中にも人ぞなき 人になれ人人になせ人」
これなど、解釈を聞かなければ、私にはチンプンカンプン。
コメント
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