「庄野潤三の本 山の上の家」(夏葉社)の中に、
岡崎武志の「庄野潤三とその周辺」という9ページほどの文が載ってる。
そこに三島由紀夫との接点がかかれておりました。
「43年12月、広島県大竹海兵団に入団するが、その直前に書きあげたのが、
初めて活字となった小説『 雪・ほたる 』だった。
島尾(敏雄)の入隊が決まり、それを見送る心情を綴った作品だった。
師の伊東(静雄)は『 読んでいて切ない気持ちになった 』と
これを褒めた。伊東の紹介で、同作は『 まほろば 』という
同人雑誌(44年3月号)に掲載される。この同じ号に小説を発表した作家が
三島由紀夫。東京で『 まほろば 』同人の会合があった時、
庄野は三島に会っている。
三島は庄野に『 雪・ほたる 』を朗読してくれとせがんだが、
これを断ったという。・・・ 」( p111 )
なんだか、朗読といえば、うたう良二が思い浮かびます。
それはそうと、現代詩文庫『 竹中郁詩集 』の竹中氏の文にも
三島由紀夫が登場しておりました。『 あざやかな人 』という文の
はじまりにあります。
「わたしは奇妙な初対面の記憶を二つ持っている。
ひとつは三島由紀夫氏が作家の花道にすくっと立った頃、
銀座四丁目の歩道で画家の猪熊弦一郎氏に紹介された。
三島氏は『 あなたの作詩を愛読しました 』といって、
つづいてその詩をすらすらと聞きちがいもなしに暗誦し・・・
狐につままれたような気分になって照れてしまった。・・・
もう一つは吉田健一氏であった。
これは場所は大阪か神戸かの小ていな料理屋の、
潮どき前のしずかな時間、客といえば吉田氏とわたしのほかに
一人か二人、かねて打合せてあった初対面。・・・
そのときも、吉田さんは一通りの挨拶がすむと、
わたくしの詩の暗誦を抑え目の声ではじめられた。・・・
初対面の固くるしさを軟げる効果を、作者自身のわたくしが
二人の文学者から教えられる始末になった・・ 」( p127~128 )
庄野潤三著「 明夫と良二 」の兄弟家族じゃないけれど、
家の中で、唄っている良二の姿がダブってくるのでした。