和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

読書の蓄積の細道

2023-10-31 | 道しるべ
津野海太郎の本のはじまりを引用。

「3年まえに70歳をこえた人間としていわせてもらうが、
 60代は、いま思うとホンの短い過渡期だったな。

 50代(中年後期)と70代(まぎれもない老年)のあいだに
 頼りなくかかった橋。つまり過渡期。
 どうもそれ以上のものではなかったような気がする。

 読書にそくしていうなら、50代の終わりから60代にかけて、
 読書好きの人間のおおくは、齢をとったらじぶんの性(しょう)に
 あった本だけ読んでのんびり暮らそうと、
 心のどこかで漠然とそう考えている。現にかつての私がそうだった。

 しかし65歳をすぎる頃になるとそんな幻想はうすれ、たちまち70歳。
 そのあたりから体力・気力・記憶力がすさまじい速度でおとろえはじめ、
 本物の、それこそハンパじゃない老年が向こうから
 バンバン押しよせてくる。あきれるほどの迫力である。

 のんびりだって?じぶんがこんな状態になるなんて、あんた、
 いまはただ考えてもいないだろうと、60歳の私をせせら笑いたくなるくらい。 」

      ( p7  津野海太郎著「百歳までの読書術」本の雑誌社 )


はい。最後まで読んでから、この本のはじまりの、
この言葉をあらためて噛みしめることになります。

うん。今まで津野海太郎さんの本は読めなかったのですが、
この本を、あらためてもう一度パラパラとめくってみます。

たとえば、『渡り歩き』にふれてから、津野さんはこう語ります。

「・・・・・『老人読書』とは・・・
 高齢者特有の発作的な読書パターンをさす。

 なぜ高齢者特有というのか。
 少年や青年、若い壮年の背後には、ざんねんながら、
 それから『何十年かの時間が経過した』といえるだけの
 時間の蓄積がないからだ。・・・   」(p172)

さて。この本で『老人読書』は、どのような道筋だったのかと、
再度ひっくり返し読みたくなります。これも年齢の通り道かも。
老人読書の細道。どっこい。よろけながら踏み固め照らします。

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4 コメント

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70の峠 (きさら)
2023-10-31 14:30:29
私もすでに 70歳の峠を越えてしまいましたが
たしかに 読書傾向は 若い頃とずいぶん変わってきました。中高生時代は目の前にある本なら
何でも読めたように思います。
今は 本の好き嫌いが激しくなってしまいました。
それでも いつも何か読んでいたい。。。
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未読本の領域。 (和田浦海岸)
2023-10-31 17:02:53
こんばんは。きさらさん。
コメントありがとうございます。

いままで、津野海太郎の本なんて
読めないだろうなあと思ってました。

この本を読んでいたら、津野さんは
吉田健一の本がこの歳になってから、
机の上で読めたのだというのでした。

歩く読書、ベッドの読書、机の読書と、
読む年齢や、読む環境が違ってくると、
本のバリエーションもさまざまみたい。
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Unknown (1948219suisen)
2023-11-01 05:36:03
全くその通りです。特に後期高齢者になった今年からは顕著です。
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1938年 (和田浦海岸)
2023-11-02 10:04:25
おはようございます。水仙さん。
コメントありがとうございます。

津野海太郎さんは
1938年福岡生まれ、とあります。
どうも気になったので、
2022年3月25日発行の
津野海太郎著「かれが最後に書いた本」(新潮社)
これも注文したのでした。

とどいた本の表紙装幀は南伸坊さんが描いた、
何ともいえない、かわいい津野さんの上半身。

はい。私など、このカバーだけで満足しちゃいます。
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