映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

僕と彼女とオーソン・ウェルズ  ザック・エフロン

2012-03-21 21:22:01 | 映画(洋画 2010年以降主演男性)
「僕と彼女とオーソンウェルズ」はアメリカの演劇かぶれの高校生が、オーソンウェルズの劇団の準団員になって悪戦苦闘する姿を描く。DVDスルー作品である。

1940年代前後の映画が好きな人たちにとってはたまらない面々が登場人物になって出てくる。オーソンウェルズはもとよりジョセフコットンの軟派ぶりの描き方もいい。バックの音楽も昔のビッグバンドジャズで実に軽快だ。予想よりも面白かった。


1937年のニューヨークが舞台だ。
郊外に住む高校生のリチャード(ザック・エフロン)は、ニューヨークに遊びに行く。レコード屋で一人の文学少女と知り合う。彼女が「ニューヨーカー」に掲載されるような小説が書きたいといっている時、主人公は演劇のことを語った。当時演劇界に一大旋風を巻き起こしていた、オーソン・ウェルズ(クリスチャンマッケイ)の主宰する劇団が演じる劇場に向かい、彼と運命的に出会う。折しもウェルズが準備中だった新作劇「シーザー」に俳優として出てみないかと誘われた。主人公は喜んで参加した。そこにはさまざま俳優たちやそれを取り巻く連中がいた。そこでのオーソンウェルズの自由奔放な振る舞いに圧倒される主人公であった。劇団に所属する年上の女性ソニア(クレア・デインズ)の魅力に徐々に取りつかれていくのであるが。。。。


オーソンウェルズの才能にはいつも畏怖の念を持って見ている。このブログでは「上海から来た女」しか彼の作品はアップしていない。この映画の設定は1937年であり、代表作「市民ケーン」の4年前だ。
シェイクスピアの演劇をブロードウェイで仕切っている時のオーソンウェルズはなんと22歳である。この映画で表現されている彼のパフォーマンスが真実なら、そのこと自体が驚きだ。弁がたち、ワンマンで周りを強烈なリーダーシップで引っ張る姿は凄いとしか言いようにない。どうみても22歳のふるまいではない。余技でラジオドラマに主演するシーンも出てくる。放送用マイクのまわりに集まった配役の中でアドリブをきかせながら自分の世界を見せるシーンは凄い。貫禄だ。

こんなオーソンウェルズを演じる無名俳優クリスチャンマッケイの演技力もタダモノではない。
オーソンウェルズが出演する映画を相当研究したと思われるそのふるまいと声の出し方が実にうまい。家にあるDVDでウェルズの声を聞いてうまいと改めて感じた。



ジョセフコットンも「市民ケーン」に出てくる。オーソンウェルズとのシェイクスピア劇での縁があったからであろう。その後ヒッチコックの「疑惑の影」バーグマンが美しい「ガス灯」オーソンウェルズも出演する「第三の男」と映画史に輝く名優である。彼の独特のチリチリ頭を意識して、プレイボーイぶりもこの映画のセリフでよくわかるようになっている。御愛嬌だ。

世相を感じさせる美術がいい。ブロードウェイのセットに感心する。ジャズバンドをいたるとこに登場させ、音楽的にも楽しめる。「スクールオブロック」をつくったリチャードリンクレイター監督がメガホンをとるのでそのあたりは抜かりがない。

映画史に輝く男たちの実像に迫る作品はそうは多くない。
楽しく見れた。
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あぜ道のダンディ  石井裕也

2012-03-21 06:00:52 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「あぜ道のダンディ」は50歳のシングルファーザーの生き様を描いたヒューマン・コメディーだ。
愛情に満ち溢れた映像が妙にしっくりくる。

去年大震災の後、最初に見た映画が「川の底からこんにちは」だった。地震後の喪失感で乱れていた心を和ませてくれた。それを撮った石井裕也監督の最新作は、男手ひとつで育ててきた息子や娘との関係に悪戦苦闘する男を描く。名脇役・光石研が不器用な中年を好演している。


周りには畑も目立つ地方都市が舞台だ。50歳配送業の宮田淳一(光石研)には、大学浪人中の息子と高校3年生の娘の子どもがいる。39歳で妻はガンで先立っていた。子どもたちは父親とは会話はかみ合わない。職場では同僚(藤原竜也)に話しかけられても、めったに返事をしないほど無愛想だ。中学時代からの友人の真田(田口トモロヲ)と居酒屋で酒を酌み交わすことが楽しみだ。
ある日、主人公は胃に不調を覚え、亡き妻と同じく、自分も胃ガンなのだと思い悩む。主人公は親友にしか相談できなかった。そんな中、俊也と桃子が東京の私立大学に合格する。病院に行くと、胃カメラでポリープらしきものが見つかる。あわてる主人公だ。
東京で子供たちは新生活を始めることになった。せめて思い出を残したいと思うのであるが。。。

主人公は怒りっぽい。ちょっとしたことですぐキレる。同僚に対しても、親友に対しても、家族に対しても同様である。中卒で仕事をはじめ、何かに劣等感を持っている。常に自分がバカにされているじゃないかと思っている。でも子どもの前ではつい見栄を張る。
不器用な中年男の泣き笑いや屈折した心情を軽妙に描く。こんな奴割といるんじゃないか。同時に自分もこの男のように怒りっぽくなっているんじゃないかと共感を持った。


この映画は一人称を主人公としているが、時折目線を下げて息子や娘を一人称にする場面が出てくる。安月給の父親にアパート代を出させて大学に行くということに子供たちも悪いなあという気持ちを起こす場面が出てくる。監督はまだ若いだけに息子や娘の視線をもつこともできる。年をとった監督にはこの目線は描けないのではないか。やさしさにあふれているそのシーンをみながら、子供と離れる時が来たときにどう思ってしまうのかを想像してしまった。

前作同様出演者が歌を歌う場面がある。これは前作の方が良かったかな。
でも意外にしっくりくる映画だった。子を持つ親にお勧めかもしれない。

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