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映画「オールド・フォックス 11歳の選択」

2024-06-15 06:06:27 | 映画(アジア)
映画「オールド・フォックス 11歳の選択」を映画館で観てきました。


映画「オールド・フォックス 11歳の選択」は台湾の巨匠ホウ・シャオシエン監督のもとで助監督をつとめたシャオ・ヤーチュエン監督の作品である。1989年の台北で父と2人で暮らす11歳の少年が出くわす大人の世界との関わりを描く。台湾映画に共通するおっとりしている感じがして観てみたいと思う。大好きな門脇麦が台湾人役として出ている。

第60回台北金馬映画祭(金馬獎)で監督賞をはじめ4冠に輝いている。この映画祭は歴史があり、過去の受賞作は「ラブソング」「インファナルアフェア」「グリーンデスティニー」など香港台湾の名作が多い。近年では日本でもリメイクした台湾映画「1秒先の彼女」も受賞している。主人公の父親役リウ・グァンティンに見覚えがあったが「1秒先の彼女」に出ていた。


1989年秋、台北郊外の町中華の2階に住む11歳のリャオジエ(バイ・ルンイン)は、高級中華レストランの接客担当の父タイライ(リウ・グァンティン)と2人暮らしだ。3年後を見据えて家を買って亡くなった母親が望んでいた理髪店を開業しようとコツコツとお金を貯めている。台湾の戒厳令が解けて、株も不動産も高騰しているので、購入は容易ではない。

ある雨の日、雨宿りしているリャオジエに黒塗り高級車に乗る男が乗りなさいと声をかける。男はアパートの家主で付近の不動産を所有するシャ(アキオ・チェン)だった。地元の顔役で周囲から腹⿊いキツネと呼ばれている。シャは昔の自分に似てるリャオジエを気に入る。時おり会うごとにシャは勝ち組になるための哲学を吹き込んでいく。人を思いやるな。負け組になるよと説く。


快適に観れる台湾映画らしいムードをもった映画だ。
下町の人情的モノ的な要素もあり、全般的なムードは明るめだ。それなのにそれを抑えるように雨が降り続ける雨が多い映画だ。いくつかの対人関係が描かれている。ここでは親子関係よりも11歳の少年と家主との関係がいちばんのキーポイントだ。

題名がオールドフォックスで、主人公が住むアパートの家主シャのことを指す。あくまで11歳の主人公目線であってもシャを演じるアキオ・チェンとの関わりが重要だ。リャオ・ジエは学校の帰りに同じ年頃の悪ガキにいじめられる。それにもシャは気づいていて適切なアドバイスをする。効果バッチリだ。

車に乗せてシャが語ると勝ち組と負け組にこだわる。
「強者と組んではいあげれ、弱者と組むと下に落ちていく。」
同情心を断つには、「①氷水を飲む②目を閉じる③知ったこっちゃねえと思う。」負け組にしかなれない人とは、実はリャオジエの父親だ。ネタバレなので言えないが、これを象徴するシーンが出てくる。まさに老獪なオヤジだ。

そんなオヤジも日本統治下の子ども時代に苦労したらしい。日本語のセリフもある。オヤジの息子は彼のもとを離れて行った上に悲劇が生まれる。何もかもうまくいかないということなのだろう。金馬獎ではシャ役のアキオチェン助演男優賞を受賞する。これは当然の受賞だろう。


⒈女性の使い方の巧みさ
父タイライの高校時代の彼女として門脇麦が出演する。久々に会ったタイライはレストランのフロア係にすぎない。逆に彼女は金がありそうだ。食いきれないほどの料理を頼んで残して、タイライにチップをあげる。元の恋人との再会は心のときめきを呼び起こす。でも、どうやら金満家の人妻のようだ。「あの子は貴族」の存在が目に留まったのか?台湾人としての登場だから中国語を話す。


アパートの家賃を一軒一軒集金にくるキレイなお姉さんリン(ユージェニー・リウ)がいる。オールドフォックスのシャの従業員兼情婦だろう。ただ、彼女はこっそりよからぬことを考える。それを聞きつけたのは、父のいる中華レストランで賄いを食べるリャオジエだ。それをシャに話す。子どもだから見たこと聞いたことなんでもしゃべる。おあとは顔面にケガをしたリンが映る。。
この2人の人生模様もある意味見どころかもしれない。


⒉台湾の戒厳令明けバブル
共産党との内戦に敗れて蒋介石率いる国民党は大陸から台湾へと移った。日本占領下の台湾でも地元民はいい思いができなかったが、大陸から移ってきた連中はろくでもない奴らが多く苦労したらしい。

日本から戦後帰国しようとした台湾人が戻るとまずいとなって、新宿に踏みとどまって歌舞伎町で勢力を伸ばしたのを読んだことがある。戒厳令が1987年まで長期にわたって発令されて自由に生活できなかった。そんな後に、自由を取り戻した台湾では経済が復興する。株価は数倍にもなり、不動産価格も高騰する。


主人公が住む一階の町中華の親父が株が上がったと奥さんと大騒ぎするシーンがある。微笑ましいと思ったら、逆方向にバブル崩壊で首を吊ってしまうのは当時の世相を反映しているのであろう。

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