映画「めまい」はアルフレッド・ヒッチコック監督による1958年の作品
先日「ヒッチコック/トリュフォー」の映画を見に行った。その中でも「サイコ」と「めまい」の2作品を綿密に解説している。もう一度見てみたい衝動にさらされ、「めまい」を再見した。妻と愛人が共謀して男を殺そうとする怖いあらすじで結末は言うな!とくぎを刺すフランス映画「悪魔のような女」の原作者であるピエール・ポワローとトーマ・ナルスジャックのミステリー作家チームによる作品である。詳細はともかく大枠のストーリーは把握しているので、映画のディテイルに目がいく。傑作は何度見てもいいものだ。
警察に勤めていた中年男性「スコティ」ことジョン・ファーガソン(ジェームズ・スチュアート)が高所恐怖症の影響で退職したことを聞きつけ、造船所の経営者である旧友エルスターから連絡が入る。妻マデリンの様子がおかしいので尾行してくれないかという依頼である。
スコティは夫とレストランで食事している美しい妻マデリン(キム・ノヴァク)の顔を確認した後、妻の居場所で待ち伏せして、彼女が運転する深緑のジャガーを自分の車で追う。彼女はサンフランシスコの街を彷徨い美術館に行ったり、買い物をしたり、お墓に行ったりしている。スコティは美術館でじっと眺めていた女性の絵の髪型が彼女にそっくりだということに気づく。どうやらその絵の女性はマデリンの祖先で26歳で自殺をしたということを依頼者である友人から聞きつける。
その後も尾行が続くが、似たようなルートを彷徨って、ゴールデンゲイトブリッジ横の海岸に向かう。そこでなんと、彼女は飛び込むのだ。あわててスコティも海に飛び込み、マデリンを救出する。そして自宅に連れていく。
自宅で目覚めたマデリンにはほとんど記憶がなかった。スコティから事情を聞き、あわてて自宅に帰宅する。その後も尾行を続けたが、行き先はスコティの自宅だった。やがて二人は惹かれあい、逢引きをするようになる。しかし、マデリンの不安定な状況は続く。そして郊外の教会の鐘楼の上に向かって、とりつかれたように階段を昇っていく。追いかけようとしたスコティはめまいでクラクラして階段が登れない。その時、屋上から女性が落下するのを目にするのであるが。。。
物語はここでは終わらない。尾行を依頼されながら、自殺させてしまった失意にスコティは神経が衰弱してしまう。でもこの後にものすごいドラマが待っている。前半で終わったように見せかけて、後半に別の女性を登場させる。
1.美しいサンフランシスコのロケ地
尾行を依頼され、2人それぞれの大きなアメ車がサンフランシスコの街中を走る。坂の多いサンフランシスコの街で向かう場所それぞれが実にすばらしい。最初に見たとき、まさに総天然色で映すその美しさにため息が出た。衣装を含めて色彩設計は抜群である。
ピックアップしてみる。
The Palace of the Legion of Honor, Lincoln Park
ゴールデンゲイトブリッジ
The Palace of Fine Arts
2.キムノヴァクの美貌
一人二役というべき役柄を見事にこなした。サンフランシスコの海には実際に飛び込んだという。さぞかし冷たかっただろう。この映画でのヒッチコックとの関係は最悪だったと言われる。それだからか、映画「ピクニック」や「愛情物語」で見せる美貌の方が上ではないかと個人的には感じる。
映画「ヒッチコック/トリュフォー」では髪型をマデリンそっくりに変えて登場したキムノヴァクが、ジェームズ・スチュアートの前に現れる場面がすばらしいとマーティンスコセッシが絶賛していた。
3.サプライズ
自分が最初に見た時、三つの場面で驚いた。
まずは、キムノヴァクがサンフランシスコ湾に突然飛び込んでしまう場面、すでに亡くなったマデリンとそっくりな女性を街の中でスコティが見つけて驚く場面、スパニッシュ系の鐘楼の上にマデリン(ジュディ)とスコティがいるときに突然人影が現れて、マデリン(ジュディ)がうろたえる時
それぞれにドッキリしてしまったが、今回は結末がわかっているとさほどでもない。それでもアルフレッドヒッチコックは驚かすのが巧みである。ブライアン・デ・パルマも驚かすのが好きな監督だが、そのエッセンスはヒッチコックから得たと言ってもいいだろう。「めまい」が基本になってデ・パルマの「愛のメモリー」が生まれたと言っても過言ではない。マーティンスコセッシもかなり影響を受けているようだ。
4.女のやきもち
この映画の冒頭にでてくる主人公スコティの元婚約者で友人のロイド眼鏡をかけた女性という存在は映画のバランスをとるために脚本家が考えた人物であろう。もともとは旧友だけにちゃんと相手にしていないが、尾行している女性が美女とわかると、密かなやきもちを妬いているようなそぶりを見せる。そういう第三者の存在はヒッチコックの妻が考えたような気がする。そういえば「見知らぬ乗客」に出演しているヒッチコックの娘もロイド眼鏡をかけていたっけ
この映画の評価は最初あまりよくなかったようだ。それにはヒッチコックもがっかりしたようだが、今では最大級に評価されていると言ってよい。同じようなストーリーも数多く、この展開は日本のサスペンスドラマでもよく見るなあ。
先日「ヒッチコック/トリュフォー」の映画を見に行った。その中でも「サイコ」と「めまい」の2作品を綿密に解説している。もう一度見てみたい衝動にさらされ、「めまい」を再見した。妻と愛人が共謀して男を殺そうとする怖いあらすじで結末は言うな!とくぎを刺すフランス映画「悪魔のような女」の原作者であるピエール・ポワローとトーマ・ナルスジャックのミステリー作家チームによる作品である。詳細はともかく大枠のストーリーは把握しているので、映画のディテイルに目がいく。傑作は何度見てもいいものだ。
警察に勤めていた中年男性「スコティ」ことジョン・ファーガソン(ジェームズ・スチュアート)が高所恐怖症の影響で退職したことを聞きつけ、造船所の経営者である旧友エルスターから連絡が入る。妻マデリンの様子がおかしいので尾行してくれないかという依頼である。
スコティは夫とレストランで食事している美しい妻マデリン(キム・ノヴァク)の顔を確認した後、妻の居場所で待ち伏せして、彼女が運転する深緑のジャガーを自分の車で追う。彼女はサンフランシスコの街を彷徨い美術館に行ったり、買い物をしたり、お墓に行ったりしている。スコティは美術館でじっと眺めていた女性の絵の髪型が彼女にそっくりだということに気づく。どうやらその絵の女性はマデリンの祖先で26歳で自殺をしたということを依頼者である友人から聞きつける。
その後も尾行が続くが、似たようなルートを彷徨って、ゴールデンゲイトブリッジ横の海岸に向かう。そこでなんと、彼女は飛び込むのだ。あわててスコティも海に飛び込み、マデリンを救出する。そして自宅に連れていく。
自宅で目覚めたマデリンにはほとんど記憶がなかった。スコティから事情を聞き、あわてて自宅に帰宅する。その後も尾行を続けたが、行き先はスコティの自宅だった。やがて二人は惹かれあい、逢引きをするようになる。しかし、マデリンの不安定な状況は続く。そして郊外の教会の鐘楼の上に向かって、とりつかれたように階段を昇っていく。追いかけようとしたスコティはめまいでクラクラして階段が登れない。その時、屋上から女性が落下するのを目にするのであるが。。。
物語はここでは終わらない。尾行を依頼されながら、自殺させてしまった失意にスコティは神経が衰弱してしまう。でもこの後にものすごいドラマが待っている。前半で終わったように見せかけて、後半に別の女性を登場させる。
1.美しいサンフランシスコのロケ地
尾行を依頼され、2人それぞれの大きなアメ車がサンフランシスコの街中を走る。坂の多いサンフランシスコの街で向かう場所それぞれが実にすばらしい。最初に見たとき、まさに総天然色で映すその美しさにため息が出た。衣装を含めて色彩設計は抜群である。
ピックアップしてみる。
The Palace of the Legion of Honor, Lincoln Park
ゴールデンゲイトブリッジ
The Palace of Fine Arts
2.キムノヴァクの美貌
一人二役というべき役柄を見事にこなした。サンフランシスコの海には実際に飛び込んだという。さぞかし冷たかっただろう。この映画でのヒッチコックとの関係は最悪だったと言われる。それだからか、映画「ピクニック」や「愛情物語」で見せる美貌の方が上ではないかと個人的には感じる。
映画「ヒッチコック/トリュフォー」では髪型をマデリンそっくりに変えて登場したキムノヴァクが、ジェームズ・スチュアートの前に現れる場面がすばらしいとマーティンスコセッシが絶賛していた。
3.サプライズ
自分が最初に見た時、三つの場面で驚いた。
まずは、キムノヴァクがサンフランシスコ湾に突然飛び込んでしまう場面、すでに亡くなったマデリンとそっくりな女性を街の中でスコティが見つけて驚く場面、スパニッシュ系の鐘楼の上にマデリン(ジュディ)とスコティがいるときに突然人影が現れて、マデリン(ジュディ)がうろたえる時
それぞれにドッキリしてしまったが、今回は結末がわかっているとさほどでもない。それでもアルフレッドヒッチコックは驚かすのが巧みである。ブライアン・デ・パルマも驚かすのが好きな監督だが、そのエッセンスはヒッチコックから得たと言ってもいいだろう。「めまい」が基本になってデ・パルマの「愛のメモリー」が生まれたと言っても過言ではない。マーティンスコセッシもかなり影響を受けているようだ。
4.女のやきもち
この映画の冒頭にでてくる主人公スコティの元婚約者で友人のロイド眼鏡をかけた女性という存在は映画のバランスをとるために脚本家が考えた人物であろう。もともとは旧友だけにちゃんと相手にしていないが、尾行している女性が美女とわかると、密かなやきもちを妬いているようなそぶりを見せる。そういう第三者の存在はヒッチコックの妻が考えたような気がする。そういえば「見知らぬ乗客」に出演しているヒッチコックの娘もロイド眼鏡をかけていたっけ
この映画の評価は最初あまりよくなかったようだ。それにはヒッチコックもがっかりしたようだが、今では最大級に評価されていると言ってよい。同じようなストーリーも数多く、この展開は日本のサスペンスドラマでもよく見るなあ。
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