映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「あなたと過ごした日に」

2022-07-25 20:28:10 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「あなたと過ごした日に」を映画館で観てきました。


いい映画やっていないなあ。週末はスルーかと思いながら、日経新聞の映画評で「あなたと過ごした日に」が気になったので、公開劇場は少ないけど観に行く。これが大当たりだった。ツイている

映画「あなたと過ごした日に」は、アカデミー賞外国映画賞を受賞したことあるスペインのフェルナンド・トリエバ監督コロンビアを舞台にある医師の家族について描いた作品である。昨年末MONOSというコロンビアのゲリラ部隊を扱った映画を観た。評価は高かったが、自分にはイマイチだった。

コロンビアにはコーヒーの原産地であるイメージやバリーシール」、「ブロウなどの麻薬映画の舞台というイメージしかなかった。「MONOS 」で、コロンビアで反体制のクーデターが長年続いていることを知った。

コロンビアのメデシンで公衆衛生が専門の医師であるエクトル・アバドゴメス博士(ハビエル・カマラ)は、妻と女5人男1人の6人の子供たちと大きな邸宅で幸せに暮らしている。大学で教鞭をとるゴメス衛生状態に問題のある町の改善に取り組んでいる。同時に、既成の組織に反発した反体制の発言で保守派にマークされているという話を息子エクトルの視線を中心に1971年、1983年、1987年の3つの時代から眺める。

フルボディのワインを思わせる重厚な味わいをもつ傑作である。
個人的には本年公開のシリアスドラマ系でいちばんよくみえる映画を観たという実感がもてる。小説化されたとはいえ、実話に基づくノンフィクションである。でも、ドキュメンタリー的なつくり方はされていない。人権擁護の話となると、反体制知識人が出てきて思想的要素が深まり暗いムードになるが、そうはならない。ラテン系の陽気な一面が暗部を打ち消す

コロンビア史の暗部に注目しているとはいえ、改めて歴史背景を予習する必要はない。あくまで人間ドラマとしての見どころをもっているから知らなくても大丈夫だ。物語の肝になる博士役のバビエル・カマラが緩急自在の演技をする。これにはうまいので唸った。


⒈エクトルアバドゴメス博士
公衆衛生が専門の医師である。階級による格差に疑問を提起しているので、周囲にアカだと思われ、自宅に「共産主義者」といたずら書きされる。しかも、カールマルクスが「宗教は民衆のアヘン」と宗教信仰を否定するのと同じように博士もキリスト教嫌いなので、なおのことそう思わせる。神学校に入った息子にも天地創造の絵はウソだと教えている。

でも、共産主義者ではない。博士はマルクスも読んでいないし、関心もない。ただ、自由平等を主張するだけなのだ。早口で自由を訴える博士が誤解されても仕方ない。博士は実際に心の暖かい人だったと想像する。愛情あふれるシーンが数多く用意されている。ハビエル・カマラのハートフルな人柄がにじみ出る。いい感じだ。

⒉モノクロとカラーの組み合わせ
映画は1983年にイタリアのトリノにいる息子のエクトルが帰宅した時に、父親の記念講演があるという留守電を聞くところからスタートする。そしてエクトルが帰国して父親と対面するまでがモノクロだが、時代が1971年に遡るとカラーになる。

歴史を感じる崇高な建物が数多く立ち並ぶメデシンの街で、子どものエクトルを中心にカメラは大家族の生活に密着する。家族が住む邸宅も美しい姉たちが着飾る姿も色鮮やかに映し出す。海辺のシーンなどでは衣装、小物を含めていかにもラテン系の国だとわかる色使いだ。そこでもいくつか事件が起こるが、さほどでもない。カラーの映像の時代は平和に展開する。


1983年エクトルが大きくなった時、モノクロに戻る。反体制運動を含めていろんな事件が起きていく。エクトルと妹以外は同じ配役で年齢の移り変わりを色を落として表現する。父親の行動は政治にも足を突っ込んでエスカレートする。エクトルが父親に反発する場面も出てくる。エレジーの香りも徐々に強くなる。この切り替えはうまい!

⒊時代を感じさせる音楽と劇中映画
基調になる音楽のセンスはいい、緊迫感ある最終局面まで安定している。美しい姉たちはラテンステップのダンスをしたりお嬢様モードたっぷり。1971年の時代背景を示すようにキャロルキングの「きみの友だち」が流れる。アルバム「つづれおり」は全米ヒットチャート1位に長らくあった。シングル「イッツトゥレイト」が5週連続1位で、その後でジェームステイラーがカバーした「きみの友だち」が全米ヒットチャート1位となる。コロンビアでも流行ったのであろう。名曲だ。

エクトルが父親と映画を観にいく。子どもにはまだ意味がわからず、ウトウトしてしまう。グスタフ・マーラーの交響曲5番が流れるので、ヴィスコンティの「ベニスに死す」を観ていることがすぐわかる。エクトルが大人になった時、自宅のTVでもう一度同じ映画が映し出される。マーラーをモデルにしたと言われる主人公が映る。あの時は子どもで意味がわからなかったとエクトルが懐古する。


でも、映画情報を読むと、フランソワ・トリュフォー監督の作品と書いてある。ちょっと待ってよ映画関係者、マーラーの5番が鳴り響いて、海辺に座る主人公を演じるダークボガードが映ったら「ベニスに死す」しかないでしょう。しかも1971年を代表する映画だよ。すごくいい映画なのに事務方はどうしたの?


⒋手洗いのススメ
映画に入場しようとしたら、ノベルティをもらった。それも「キレイキレイ」の試供品だ。何かの間違いかと思いながら、こんなのもらうの初めてとびっくりした。父親は衛生が専門だからというわけではないが、子どもに「手には汚いものがついているから、この歌を歌い終わるまで洗いなさい」と指導する。印象的なシーンだ。感染症を予防するために、予防接種を推奨する。息子にはいの一番で試しうち、街で一般の人に予防接種させる時には娘たちに最初にうたせる。


この映画コロナが蔓延する前にできた映画だけど、なぜか時流にあってしまう。だからか?ライオンが協賛したので試供品をもらえたのだ。でも、コロナ以前自分は今のように手洗いしていたっけかと思う。お陰でこれまで年に一度程度は風邪をひいたが、まったくひかなくなった。手洗いは大事なんだね。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「戦争と女の顔」 | トップ | 映画「PASSION」濱口竜介 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(洋画:2022年以降主演男性)」カテゴリの最新記事