渡辺淳一さんが先月30日に亡くなったと伝えられている。
よくあるように葬儀終了後の公表である。
中学時代から40年にわたって愛読した作家が亡くなるのはさみしい。
渡辺淳一との最初の出会いはテレビ番組であった。
田宮二郎、山本陽子主演の「白い影」は渡辺淳一の「無影燈」がベースになっている。
有名医大で将来を嘱望された医師が民間の病院にやってくる。男前の医師には次から次へと女が寄っていく。しかし、彼には秘密があった。がんに侵されているのである。民間病院であれば、がん患者に投与すると言って大量に痛みを和らげる注射(モルヒネかな?)を打つことができるのだ。結局は北海道の湖で自殺して自らの命をたつという話だけど、がん患者に対処する医師の使命について、若い医師と語りあう場面もあり実に面白い。田宮演じる医師に無情の響きを感じた。
中山麻里や田中真理、中野良子など当時我々が憧れた女優が演じる女性と次から次へと関係を結ぶ自由奔放な主人公がうらやましかった。
これから彼の本をむさぼり読むようになる。
何より読みやすい。短編から始まって次から次へと読んだ。
高校から大学生になっても同様に読みつづけた。「北都物語」に流れるやわらかいリズムに魅かれた。
ただ、その当時に彼の書いた作品がよく理解できるようになるのは30代後半をすぎたくらいだったかもしれない。むしろ40代になった時に「北都物語」を読みかえして主人公の気持ちに感情流入した。
その後「化身」「別れぬ理由」「阿寒に果つ」など映画化された作品も読んだ。
社会人になって最初に配属された先が東京駅そばで銀座の夜を楽しむようになった。
渡辺淳一作品によく出てくるホステスってこんな感じか?と思いながら遊びに出たが、まだまだ修行が足りないといった感じだった
自分が一番衝撃を受けたのは、野口英世の人生をドキュメンタリータッチで描いた「遠き落日」を読んだ時だ。
子供のころから野口英世は偉人として称賛されていたわけである。小さいときに手に大やけどをして不自由になりながらも努力してアメリカで伝染病の研究者として名をあげるという話は誰でも知っているだろう。でもこの小説を読んで「裏の野口英世」を知った。
金に無頓着で、地元会津の素封家に金の無尽をしまくるという構図はこの本を読むまで知らなかった。もちろん人並み以上に努力をするということが本の中から伝わるのであるが、今まで彼を偉人と聞いていたのは何なの?生活破たんでもいいの?という疑問が浮かび上がった。面白かった。映画化された時、野口のいい加減なところは一場面だけだった。
日経新聞を読むと、必ず「私の履歴書」に目を通す。そして下の連載小説にも目を通すが見ないことも多い。実際今の小説は筋すら知らない。そんな95年のある時、きわどい描写が書いてあるなあと名前をみると渡辺淳一だった。これは毎日読むようになる。
「失楽園」だ。これは連載を重ねるうちにエスカレートしていく。最終場面に近づいていくとき、どういう結末となるのかが楽しみになった。次に起きる場面の予測で読者をわくわくさせるのは連載小説の醍醐味である。映画化やテレビも見て、黒木瞳も川島なおみもいい感じで悪くなかったが、連載時のワクワク度はなかった。
「愛の流刑地」も「失楽園」と同様の刺激を与えてくれたが、さすがに「限界効用逓減の法則」になってしまった気がした。
最後に驚かせてくれたのが日経新聞「私の履歴書」である。2013年1月の連載であった。「私の履歴書」の連載を終えると、時間たたずに死ぬという印象を自分は持っている。家人も同じようなことを言っていた。自分の寿命を意識し始めた時が書き始め時なのか?ここではあからさまに若き日の恋愛を時間をかけて描写した。初恋の女学生との悲哀な恋に驚いた。看護婦に手をだす話なんて「無影燈」のネタ話だったのかな?おいおいこんなこと言っていいのかな?と思わせることも多く刺激が強かった。
ともかくいろんな刺激を与えてくれた人だった。
今朝テレビを見ていたら、黒柳徹子さんのインタビューが映されていた。私の亡き母が若い頃お世話になったTさんという方がいて、そのおばさんは自分が社会人になるまでよくしてくれた。夫を捨て、愛妾になったというその昔映画の元ネタになった自由奔放な女性だったという。
そのTさんが黒柳徹子さんの母上黒柳朝さんと仲が良かった。朝さんのエッセイにもTさんが出てくる。いずれも北海道出身で渡辺淳一さんの親族とつながっていたと聞いた覚えがある。母が何度もそのつながりを語ってくれたのだけど、関係がどうしても思い出せない。いずれにせよお互い同世代だった渡辺淳一さんと黒柳徹子さんは親しかったのであろう。テレビを見ながらそんなことを思っていた。
ご冥福を祈りたい。
参考作品
よくあるように葬儀終了後の公表である。
中学時代から40年にわたって愛読した作家が亡くなるのはさみしい。
渡辺淳一との最初の出会いはテレビ番組であった。
田宮二郎、山本陽子主演の「白い影」は渡辺淳一の「無影燈」がベースになっている。
有名医大で将来を嘱望された医師が民間の病院にやってくる。男前の医師には次から次へと女が寄っていく。しかし、彼には秘密があった。がんに侵されているのである。民間病院であれば、がん患者に投与すると言って大量に痛みを和らげる注射(モルヒネかな?)を打つことができるのだ。結局は北海道の湖で自殺して自らの命をたつという話だけど、がん患者に対処する医師の使命について、若い医師と語りあう場面もあり実に面白い。田宮演じる医師に無情の響きを感じた。
中山麻里や田中真理、中野良子など当時我々が憧れた女優が演じる女性と次から次へと関係を結ぶ自由奔放な主人公がうらやましかった。
これから彼の本をむさぼり読むようになる。
何より読みやすい。短編から始まって次から次へと読んだ。
高校から大学生になっても同様に読みつづけた。「北都物語」に流れるやわらかいリズムに魅かれた。
ただ、その当時に彼の書いた作品がよく理解できるようになるのは30代後半をすぎたくらいだったかもしれない。むしろ40代になった時に「北都物語」を読みかえして主人公の気持ちに感情流入した。
その後「化身」「別れぬ理由」「阿寒に果つ」など映画化された作品も読んだ。
社会人になって最初に配属された先が東京駅そばで銀座の夜を楽しむようになった。
渡辺淳一作品によく出てくるホステスってこんな感じか?と思いながら遊びに出たが、まだまだ修行が足りないといった感じだった
自分が一番衝撃を受けたのは、野口英世の人生をドキュメンタリータッチで描いた「遠き落日」を読んだ時だ。
子供のころから野口英世は偉人として称賛されていたわけである。小さいときに手に大やけどをして不自由になりながらも努力してアメリカで伝染病の研究者として名をあげるという話は誰でも知っているだろう。でもこの小説を読んで「裏の野口英世」を知った。
金に無頓着で、地元会津の素封家に金の無尽をしまくるという構図はこの本を読むまで知らなかった。もちろん人並み以上に努力をするということが本の中から伝わるのであるが、今まで彼を偉人と聞いていたのは何なの?生活破たんでもいいの?という疑問が浮かび上がった。面白かった。映画化された時、野口のいい加減なところは一場面だけだった。
日経新聞を読むと、必ず「私の履歴書」に目を通す。そして下の連載小説にも目を通すが見ないことも多い。実際今の小説は筋すら知らない。そんな95年のある時、きわどい描写が書いてあるなあと名前をみると渡辺淳一だった。これは毎日読むようになる。
「失楽園」だ。これは連載を重ねるうちにエスカレートしていく。最終場面に近づいていくとき、どういう結末となるのかが楽しみになった。次に起きる場面の予測で読者をわくわくさせるのは連載小説の醍醐味である。映画化やテレビも見て、黒木瞳も川島なおみもいい感じで悪くなかったが、連載時のワクワク度はなかった。
「愛の流刑地」も「失楽園」と同様の刺激を与えてくれたが、さすがに「限界効用逓減の法則」になってしまった気がした。
最後に驚かせてくれたのが日経新聞「私の履歴書」である。2013年1月の連載であった。「私の履歴書」の連載を終えると、時間たたずに死ぬという印象を自分は持っている。家人も同じようなことを言っていた。自分の寿命を意識し始めた時が書き始め時なのか?ここではあからさまに若き日の恋愛を時間をかけて描写した。初恋の女学生との悲哀な恋に驚いた。看護婦に手をだす話なんて「無影燈」のネタ話だったのかな?おいおいこんなこと言っていいのかな?と思わせることも多く刺激が強かった。
ともかくいろんな刺激を与えてくれた人だった。
今朝テレビを見ていたら、黒柳徹子さんのインタビューが映されていた。私の亡き母が若い頃お世話になったTさんという方がいて、そのおばさんは自分が社会人になるまでよくしてくれた。夫を捨て、愛妾になったというその昔映画の元ネタになった自由奔放な女性だったという。
そのTさんが黒柳徹子さんの母上黒柳朝さんと仲が良かった。朝さんのエッセイにもTさんが出てくる。いずれも北海道出身で渡辺淳一さんの親族とつながっていたと聞いた覚えがある。母が何度もそのつながりを語ってくれたのだけど、関係がどうしても思い出せない。いずれにせよお互い同世代だった渡辺淳一さんと黒柳徹子さんは親しかったのであろう。テレビを見ながらそんなことを思っていた。
ご冥福を祈りたい。
参考作品
失楽園 | |
究極の愛 | |
化身 | |
年下女性を育てる愉しみ | |
「遠き落日」 | |
偉人野口英世と母との交情 | |