映画「夕霧花園」を映画館で観てきました。
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映画「夕霧花園」は予告編でアジアンテイストの映像に阿部寛が登場しているのが気になっていた作品だ。早速足が向かう。マレーシアが舞台で、戦前戦後、そして80年代と3つの世代にわたって今は裁判官になった1人の女性を中心に描いていく。日本占領時代や戦後英国統治時代の共産系ゲリラの独立運動も絡めた歴史的な要素を含むストーリーの流れは、日本庭園や刺青の本質に踏み込み、奥が深い。
若き日の主人公ユンリンをマレーシアの女優リーシンジエ(アンジェリカ・リー)が演じ、60代になった主人公を台湾のベテラン女優シルビア・チャンが受け持つ。そして、阿部寛は日本人庭師で主人公と恋に落ちる役柄だ。
監督のトム・リンの作品は初めてであるが、緑多いマレーシアの中でのしっとりとした映像は自分にとっては居心地が良いムードである。音楽も映像に合っているし、丹念に映像コンテを考えているのも感じられる。エンディングロールに流れる曲が素晴らしく終了まで席を立てなかった。
1980年代、女性として初めて裁判官に抜擢され、マレーシア連邦判事を目指すユンリン(シルビア・チャン)は、キャメロン高原に久々来訪し旧知のフレドリックと再会した時に、その昔日本庭園のことを学ぶために日本人庭師中村有朋と出会ったときの日々を回想する。
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1951年、皇室御用達の庭師だったという中村有朋(阿部寛)は、キャメロン高原で「夕霧花園」という日本庭園をつくっている。そこへユンリン(リーシンジエ)が天龍寺の庭を意識した日本庭園を作って欲しいという依頼で訪れた。亡くなった妹が京都に行ったことがあり、気に入っていたのだ。有朋はすぐさま断ったが、粘るユンリンに今造っている庭園を造ったあとなら、引き受けてもいいと応諾する。すると、有朋はしばらくここで手伝わないかとユンリンに言うと、「夕霧花園」の下職とともに造園作業に携わるようになる。
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ユンリンは日本軍のマレー占領末期に日本軍の強制労働の収容所に妹とともに駆り出されていた。その際、姉妹ともども兵士たちにむごい仕打ちを受けたこともあった。しかも、終戦となる際に妹は不幸な事故で亡くなってしまうのだ。それもあってか妹の思いを実現したいと思ってきたのだ。
やがて、ユンリンは造園工事を手伝いはじめると、有朋とユンリンとの関係は芸術性を求める有朋の凝り性で、重い石を何度も動かす繰り返しでギクシャクしていた。しかし、いくつかのきっかけで徐々に縮まっていくのであるが。。。
1.マレーの虎 山下奉文
1941年12月世界大戦で宣戦布告した直後に、あっという間に英国領マラヤ(当時)を占領した山下奉文大将の活躍はあまりにも有名である。ここでは、山下率いる日本軍が獲得した財宝をマレーシアに隠しているという伝説にあやかって、ストーリーを組み立てる。戦後英国からの独立を図るマレーシアの共産ゲリラが、山下大将が隠した財宝のありかを有朋が知っていると追求するシーンがある。
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実はシンガポール陥落させてマレー半島を占領した山下大将は翌1942年初頭に満州方面に異動になっている。そして、終戦時はフィリピン戦線を指揮していた。終戦に至る事情は山下大将の部下だった元陸軍参謀堀栄三氏による名著「大本営参謀の情報戦記」にも書いてあるし、財宝伝説はむしろフィリピンでマレーの地にそのまま埋めたという話はちょっと違うんじゃないかなと思うけど、まあ突っ込みすぎる必要はないでしょう。
2.マレーシア
2015年の秋に出張で首都クアラルンプールに行ったことがある。高層ビルが建ち並び、近代都市という感じがしてその発展ぶりに正直驚いた。日本からもディベロッパーが進出してマンションを造っている。マレー料理は普通、シンガポールは明らかに日本より物価が高いと感じたが、クアラルンプールは日本と同じ程度だった。
2015年の時撮ったもの↓
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ヴェールをかぶっているマレー人女性が多く目立つが、華人でもかぶっている人もいる。イスラム国家だ。ショッピングモールにはイスラムの礼拝スペースがある。郊外にあるシリコンバレーのようなIT都市にも行ったけど、至るところでイオンの進出がやけに目立った。熱帯ムードが強い沢木耕太郎の小説「深夜特急」に出てくるエリアまでは行っていないので、ちゃんと評価することはできないが、清潔で近代的な国である。
3.阿部寛とアジアンビューティー
阿部寛の英語はあまりうまくはない。そもそも、この時代に英語がうまい日本人なんている訳がないと思うので、別に不自然ではない。しかし、当時の日本人としては、あり得ないほどの長身である。どういう経緯で彼を起用したのか。とはいうものの、好演だと思う。落ち着きがあり、日本伝統の仕事をしている風格もある。
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あまたある古書に囲まれ、障子のある窓から外を眺めながら指示して、この場から最もよく見える庭園の美を追求するという。ただ、映画では最後まで日本庭園の庭は完成しない。こればかりは、マレーシアの田舎に日本の庭師が行って仕事するってわけにはいかないから仕方ないでしょう。
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主人公の若いころを演じるリー・シンジエはしっとりしたアジアンビューティーである。自分が観たことある作品にも出ていたようだが、記憶にない。シルビアチャンは香港映画ではずいぶん活躍していた。でも、さすがに年をとった。ジャ・ジャンクー監督「山河ノスタルジア」で、少年に恋されるおばさん役を演じていた。これはいくら何でも不自然な設定だと思った。さすがベテランだけあって、この映画では安定感がある演技を見せる。2人とも背中に刺青を入れるシーンがある。これは大変だったんじゃないかな。
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映画を通じて、日本の右翼が見たら怒りかねない日本軍兵士によるむごいシーンもあるが、末梢神経を刺激するほどではない。ブログ開設4800日目に深い緑の映像を目で追い、安らかな音楽を聴きながら映画を観る楽しみを堪能できる優雅な時間が過ごせた。
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映画「夕霧花園」は予告編でアジアンテイストの映像に阿部寛が登場しているのが気になっていた作品だ。早速足が向かう。マレーシアが舞台で、戦前戦後、そして80年代と3つの世代にわたって今は裁判官になった1人の女性を中心に描いていく。日本占領時代や戦後英国統治時代の共産系ゲリラの独立運動も絡めた歴史的な要素を含むストーリーの流れは、日本庭園や刺青の本質に踏み込み、奥が深い。
若き日の主人公ユンリンをマレーシアの女優リーシンジエ(アンジェリカ・リー)が演じ、60代になった主人公を台湾のベテラン女優シルビア・チャンが受け持つ。そして、阿部寛は日本人庭師で主人公と恋に落ちる役柄だ。
監督のトム・リンの作品は初めてであるが、緑多いマレーシアの中でのしっとりとした映像は自分にとっては居心地が良いムードである。音楽も映像に合っているし、丹念に映像コンテを考えているのも感じられる。エンディングロールに流れる曲が素晴らしく終了まで席を立てなかった。
1980年代、女性として初めて裁判官に抜擢され、マレーシア連邦判事を目指すユンリン(シルビア・チャン)は、キャメロン高原に久々来訪し旧知のフレドリックと再会した時に、その昔日本庭園のことを学ぶために日本人庭師中村有朋と出会ったときの日々を回想する。
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1951年、皇室御用達の庭師だったという中村有朋(阿部寛)は、キャメロン高原で「夕霧花園」という日本庭園をつくっている。そこへユンリン(リーシンジエ)が天龍寺の庭を意識した日本庭園を作って欲しいという依頼で訪れた。亡くなった妹が京都に行ったことがあり、気に入っていたのだ。有朋はすぐさま断ったが、粘るユンリンに今造っている庭園を造ったあとなら、引き受けてもいいと応諾する。すると、有朋はしばらくここで手伝わないかとユンリンに言うと、「夕霧花園」の下職とともに造園作業に携わるようになる。
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ユンリンは日本軍のマレー占領末期に日本軍の強制労働の収容所に妹とともに駆り出されていた。その際、姉妹ともども兵士たちにむごい仕打ちを受けたこともあった。しかも、終戦となる際に妹は不幸な事故で亡くなってしまうのだ。それもあってか妹の思いを実現したいと思ってきたのだ。
やがて、ユンリンは造園工事を手伝いはじめると、有朋とユンリンとの関係は芸術性を求める有朋の凝り性で、重い石を何度も動かす繰り返しでギクシャクしていた。しかし、いくつかのきっかけで徐々に縮まっていくのであるが。。。
1.マレーの虎 山下奉文
1941年12月世界大戦で宣戦布告した直後に、あっという間に英国領マラヤ(当時)を占領した山下奉文大将の活躍はあまりにも有名である。ここでは、山下率いる日本軍が獲得した財宝をマレーシアに隠しているという伝説にあやかって、ストーリーを組み立てる。戦後英国からの独立を図るマレーシアの共産ゲリラが、山下大将が隠した財宝のありかを有朋が知っていると追求するシーンがある。
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実はシンガポール陥落させてマレー半島を占領した山下大将は翌1942年初頭に満州方面に異動になっている。そして、終戦時はフィリピン戦線を指揮していた。終戦に至る事情は山下大将の部下だった元陸軍参謀堀栄三氏による名著「大本営参謀の情報戦記」にも書いてあるし、財宝伝説はむしろフィリピンでマレーの地にそのまま埋めたという話はちょっと違うんじゃないかなと思うけど、まあ突っ込みすぎる必要はないでしょう。
2.マレーシア
2015年の秋に出張で首都クアラルンプールに行ったことがある。高層ビルが建ち並び、近代都市という感じがしてその発展ぶりに正直驚いた。日本からもディベロッパーが進出してマンションを造っている。マレー料理は普通、シンガポールは明らかに日本より物価が高いと感じたが、クアラルンプールは日本と同じ程度だった。
2015年の時撮ったもの↓
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ヴェールをかぶっているマレー人女性が多く目立つが、華人でもかぶっている人もいる。イスラム国家だ。ショッピングモールにはイスラムの礼拝スペースがある。郊外にあるシリコンバレーのようなIT都市にも行ったけど、至るところでイオンの進出がやけに目立った。熱帯ムードが強い沢木耕太郎の小説「深夜特急」に出てくるエリアまでは行っていないので、ちゃんと評価することはできないが、清潔で近代的な国である。
3.阿部寛とアジアンビューティー
阿部寛の英語はあまりうまくはない。そもそも、この時代に英語がうまい日本人なんている訳がないと思うので、別に不自然ではない。しかし、当時の日本人としては、あり得ないほどの長身である。どういう経緯で彼を起用したのか。とはいうものの、好演だと思う。落ち着きがあり、日本伝統の仕事をしている風格もある。
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あまたある古書に囲まれ、障子のある窓から外を眺めながら指示して、この場から最もよく見える庭園の美を追求するという。ただ、映画では最後まで日本庭園の庭は完成しない。こればかりは、マレーシアの田舎に日本の庭師が行って仕事するってわけにはいかないから仕方ないでしょう。
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主人公の若いころを演じるリー・シンジエはしっとりしたアジアンビューティーである。自分が観たことある作品にも出ていたようだが、記憶にない。シルビアチャンは香港映画ではずいぶん活躍していた。でも、さすがに年をとった。ジャ・ジャンクー監督「山河ノスタルジア」で、少年に恋されるおばさん役を演じていた。これはいくら何でも不自然な設定だと思った。さすがベテランだけあって、この映画では安定感がある演技を見せる。2人とも背中に刺青を入れるシーンがある。これは大変だったんじゃないかな。
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映画を通じて、日本の右翼が見たら怒りかねない日本軍兵士によるむごいシーンもあるが、末梢神経を刺激するほどではない。ブログ開設4800日目に深い緑の映像を目で追い、安らかな音楽を聴きながら映画を観る楽しみを堪能できる優雅な時間が過ごせた。