映画「キャラクター」を映画館で観てきました。
これはすごい!日本発A級クライムサスペンスである。
いくつかの場面で思わず大きな声が出てしまい、近くに座っている観客にじろっと見られた。映画オリジナルだというストーリーは実に練られていて、予想外の展開もある。サイコスリラーという宣伝文句はあるが、クライムサスペンスというべきであろう。たまたま殺人現場を目撃してしまったウダツの上がらない漫画家のアシスタントが、それをネタに漫画を描いたら大当り。ところが、その漫画の中身をネタにした殺人事件が次々と起こるという話である。
韓国映画のクライムサスペンスはレベルが高く、日本映画は残念ながら差をつけられている。あっさりしすぎて残虐さとストーリーの意外性に欠ける気もする。でも、この作品なら、まだまだいけるという感じだ。自分には割と相性の良い菅田将暉主演で、直感で選んで予備知識わずかで観に行ったが、これは成功。観に行かれる方は先入観なしで行ってほしい。
漫画家のアシスタントをやっている山城圭吾(菅田将暉)は独り立ちしようと新人賞にいくつか応募しているがいつも佳作止まり。今回も漫画雑誌の敏腕編集者にサスペンス系の自作を持ち込む。絵を描く能力は認められるが、人がいい性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、認められない。
漫画の世界から足を洗おうとしていたときに、師匠から「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチするように言われて、夜に住宅街に出かける山城。大音量のオペラが流れる一軒家を見つけスケッチしていたときに、ふとしたことで家の中に足を踏み入れる。すると、4人の家族がテーブルに座って刃物で血だらけに惨殺されていた。そこで山城は殺人鬼と思しき一人の男を遭遇するのである。
事件の第一発見者となった山城は、警察で真壁班長(中村獅童)と清田刑事(小栗旬)の取り調べを受ける。殺人推定時間にはアリバイがあり、シロとなるが、犯人は見たかという問いに対して「見ていない」と嘘をついてしまう。
恋人の夏美(高畑充希)と暮らす部屋に戻って、事件現場を思い浮かべ、残虐な現場を再現して描き始める。一方、すぐ近所で1人の容疑者が逮捕され、自白した。TVニュースに映ったその顔は山城が現場で見かけた顔とは明らかに違っていた。
山城は自分が出会った犯人の顔をもとにしてサスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始めると、予想以上に大ヒットして山城は売れっ子漫画家となる。その一方で漫画の中で描いた殺人事件が次から次に起こっていくのであるが。。。
⒈リアル感
漫画家のアシスタントから一足飛びに独り立ちしようと、編集者に売り込みに行く。しかし、殺人の経験は当然ないだろうけど、キャラクターにリアル感がないと門前払いを喰らう。映画「37セカンズ」で漫画家のゴーストライターである主人公が、編集者にきわどいエロ漫画を売り込みに行った際に、エッチの経験がないとリアル感がないと言われた場面を思わず連想する。
ところが、4人が血まみれになっているリアルな殺人現場を偶然見てしまうのだ。しかも、犯人の顔も一瞥してしまう。実際にそんな場面に出くわしたら、卒倒してしまいだろう。でも、ここで実際の殺人事件を見たというリアル感が生まれる。殺人犯を主人公にして事件を創作するのだ。
漫画の原案→編集者への売り込み→人気作品になる→印税が入る→結婚→高級マンション購入
映画では以上のプロセスは省略されている。こんなのいちいち説明したら、キリがないから仕方ないけど、漫画原案作成売り込みに2ヶ月→掲載に1ヶ月→人気が出て多額の印税が入るのに(この中に結婚を含んでも)1年→高級マンション購入に向けて1年
最初の事件が起きてから2年半はかかるよね。この映画だけ見ていると、タイムラグはあまりないようには見える。まあ、そんなこと気にしなくても良いけど、刑事たちはついこの間あった事件のように、連続する事件の殺人現場に行くのは不自然かな?
⒉連載漫画をなぞった殺人事件
人里離れたエリアで、2回目の殺人事件を起こす。神奈川県も山間部もそれなりにあるから、こういう辺鄙な場所もあるだろう。この殺人事件が何かあると気づくのは、最初の事件担当の刑事(小栗旬)である。犯行に使ったナイフが隠されている場所も漫画に書いてある通りなのだ。
最初からの展開はテンポがいい。サイコスリラーというが、そのジャンルだったら、もっとえげつない殺人の様子が映像化されるのではないか。いずれも、すでに殺しは終了している。薄気味悪い見辛いシーンが多いわけではない。最終的には捕まるんだろうなあ。でもどう捕まるんだろう?謎の異物をこちらに放つ。でも途中で伏線を与える。
若干のネタバレあり(以下は観るまで読まないでください)
この映画の注目点
⒈戸籍
中国では戸籍のない子供が数多くいると言われている。ひとりっ子政策も拍車をかけたかもしれない。真相はわからない。長い歴史の中で中国には「溺女」という風習らしきものがあり、将来稼ぎをもたらさない女の子が間引きされてきた。実際には酷いことはせずにそのまま育つ戸籍のない女の子がいるのかもしれない。日本ではあまり聞かない。でも、戸籍のない子は一定数いるだろう。
自分の戸籍を捨て、売った人から無戸籍の人が戸籍を買ってぬくぬくと生きている場合はあるだろう。ここでは日本映画では珍しくそこに焦点が当てられる。インチキくさい宗教法人のアジトで、子供の頃から育った名前がない無戸籍の犯罪者に焦点があたる。
⒉重要人物の死亡
設定の強引さはあっても展開は次にどうなるか謎?をつくる。観客に考えさせる要素を残す。そんな最終場面に向かうときに予想外の展開を作る。ある重要人物の死亡だ。これには驚く。本来のストーリーの定跡では、苦しんでも生き延びる存在だ。このシーンに驚き思わず声をあげてしまった。しかも、滅多打ちにやられるのである。意外な人物をそこに添えてくる。ここで大半が見えるが、最後の修羅場にはかるい迷彩をつくる。実にうまい!
韓国映画ではあっても、日本映画ではこういう展開は比較的少ない。実話ならともかくフィクションはここまでやってもらわないと刺激がない。そこにこの映画の深みを感じる。
これはすごい!日本発A級クライムサスペンスである。
いくつかの場面で思わず大きな声が出てしまい、近くに座っている観客にじろっと見られた。映画オリジナルだというストーリーは実に練られていて、予想外の展開もある。サイコスリラーという宣伝文句はあるが、クライムサスペンスというべきであろう。たまたま殺人現場を目撃してしまったウダツの上がらない漫画家のアシスタントが、それをネタに漫画を描いたら大当り。ところが、その漫画の中身をネタにした殺人事件が次々と起こるという話である。
韓国映画のクライムサスペンスはレベルが高く、日本映画は残念ながら差をつけられている。あっさりしすぎて残虐さとストーリーの意外性に欠ける気もする。でも、この作品なら、まだまだいけるという感じだ。自分には割と相性の良い菅田将暉主演で、直感で選んで予備知識わずかで観に行ったが、これは成功。観に行かれる方は先入観なしで行ってほしい。
漫画家のアシスタントをやっている山城圭吾(菅田将暉)は独り立ちしようと新人賞にいくつか応募しているがいつも佳作止まり。今回も漫画雑誌の敏腕編集者にサスペンス系の自作を持ち込む。絵を描く能力は認められるが、人がいい性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、認められない。
漫画の世界から足を洗おうとしていたときに、師匠から「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチするように言われて、夜に住宅街に出かける山城。大音量のオペラが流れる一軒家を見つけスケッチしていたときに、ふとしたことで家の中に足を踏み入れる。すると、4人の家族がテーブルに座って刃物で血だらけに惨殺されていた。そこで山城は殺人鬼と思しき一人の男を遭遇するのである。
事件の第一発見者となった山城は、警察で真壁班長(中村獅童)と清田刑事(小栗旬)の取り調べを受ける。殺人推定時間にはアリバイがあり、シロとなるが、犯人は見たかという問いに対して「見ていない」と嘘をついてしまう。
恋人の夏美(高畑充希)と暮らす部屋に戻って、事件現場を思い浮かべ、残虐な現場を再現して描き始める。一方、すぐ近所で1人の容疑者が逮捕され、自白した。TVニュースに映ったその顔は山城が現場で見かけた顔とは明らかに違っていた。
山城は自分が出会った犯人の顔をもとにしてサスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始めると、予想以上に大ヒットして山城は売れっ子漫画家となる。その一方で漫画の中で描いた殺人事件が次から次に起こっていくのであるが。。。
⒈リアル感
漫画家のアシスタントから一足飛びに独り立ちしようと、編集者に売り込みに行く。しかし、殺人の経験は当然ないだろうけど、キャラクターにリアル感がないと門前払いを喰らう。映画「37セカンズ」で漫画家のゴーストライターである主人公が、編集者にきわどいエロ漫画を売り込みに行った際に、エッチの経験がないとリアル感がないと言われた場面を思わず連想する。
ところが、4人が血まみれになっているリアルな殺人現場を偶然見てしまうのだ。しかも、犯人の顔も一瞥してしまう。実際にそんな場面に出くわしたら、卒倒してしまいだろう。でも、ここで実際の殺人事件を見たというリアル感が生まれる。殺人犯を主人公にして事件を創作するのだ。
漫画の原案→編集者への売り込み→人気作品になる→印税が入る→結婚→高級マンション購入
映画では以上のプロセスは省略されている。こんなのいちいち説明したら、キリがないから仕方ないけど、漫画原案作成売り込みに2ヶ月→掲載に1ヶ月→人気が出て多額の印税が入るのに(この中に結婚を含んでも)1年→高級マンション購入に向けて1年
最初の事件が起きてから2年半はかかるよね。この映画だけ見ていると、タイムラグはあまりないようには見える。まあ、そんなこと気にしなくても良いけど、刑事たちはついこの間あった事件のように、連続する事件の殺人現場に行くのは不自然かな?
⒉連載漫画をなぞった殺人事件
人里離れたエリアで、2回目の殺人事件を起こす。神奈川県も山間部もそれなりにあるから、こういう辺鄙な場所もあるだろう。この殺人事件が何かあると気づくのは、最初の事件担当の刑事(小栗旬)である。犯行に使ったナイフが隠されている場所も漫画に書いてある通りなのだ。
最初からの展開はテンポがいい。サイコスリラーというが、そのジャンルだったら、もっとえげつない殺人の様子が映像化されるのではないか。いずれも、すでに殺しは終了している。薄気味悪い見辛いシーンが多いわけではない。最終的には捕まるんだろうなあ。でもどう捕まるんだろう?謎の異物をこちらに放つ。でも途中で伏線を与える。
若干のネタバレあり(以下は観るまで読まないでください)
この映画の注目点
⒈戸籍
中国では戸籍のない子供が数多くいると言われている。ひとりっ子政策も拍車をかけたかもしれない。真相はわからない。長い歴史の中で中国には「溺女」という風習らしきものがあり、将来稼ぎをもたらさない女の子が間引きされてきた。実際には酷いことはせずにそのまま育つ戸籍のない女の子がいるのかもしれない。日本ではあまり聞かない。でも、戸籍のない子は一定数いるだろう。
自分の戸籍を捨て、売った人から無戸籍の人が戸籍を買ってぬくぬくと生きている場合はあるだろう。ここでは日本映画では珍しくそこに焦点が当てられる。インチキくさい宗教法人のアジトで、子供の頃から育った名前がない無戸籍の犯罪者に焦点があたる。
⒉重要人物の死亡
設定の強引さはあっても展開は次にどうなるか謎?をつくる。観客に考えさせる要素を残す。そんな最終場面に向かうときに予想外の展開を作る。ある重要人物の死亡だ。これには驚く。本来のストーリーの定跡では、苦しんでも生き延びる存在だ。このシーンに驚き思わず声をあげてしまった。しかも、滅多打ちにやられるのである。意外な人物をそこに添えてくる。ここで大半が見えるが、最後の修羅場にはかるい迷彩をつくる。実にうまい!
韓国映画ではあっても、日本映画ではこういう展開は比較的少ない。実話ならともかくフィクションはここまでやってもらわないと刺激がない。そこにこの映画の深みを感じる。